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episode 1207 : Axis of dining evil

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「食堂の三悪」
 
 家の近所にこの辺では珍しい個人系和食居酒屋が昨年オープンし、結婚記念日のお祝いに、平日だったが先に私が店に入り、追って主人が職場から駆付ける事にした。店の外は地引網やガラス球の浮子が玉砂利の上に飾られ「○○港網元△△」等関東近郊の漁場から新鮮な魚を仕入れている事をここぞとばかりアピールする看板多数、期待を胸に入店した。結構な繁盛店と聞いている。

7時過ぎの店内は客足が鈍く、奥座敷は半分程埋まり、5,6人座れるカウンターに殆ど客はいなかった。後でもう一人来ますので、奥の座敷をお願いします、と暇そうな店員に言ったら「混んで来たら、カウンターに移ってもらいます」とばっさり言われた。「あの、今日初めてだし、結婚記念日なのでゆっくり…」言い終わる前に「混んで来たら移って下さい」と念押しされ、奥に通された。程なく主人が到着したが特段混んでくる様子もなく、座敷のまま店自慢の刺身盛、2人前で一番安い5点2,500円にイカの沖漬を注文したが、飲み物が来た後20分以上料理が来ない。「お料理まだですか」と聞いたら「時間がかかりますので」とそつない返事。じゃ、すぐできるものは何ですか、と尋ねると「枝豆か冷やしトマト位ですね」隣のスーパーで3個98円で売ってるトマトを何故ここで頼むか、と即断で枝豆にしたが、冷え切った枝豆が出てくるのに15分かかった。そのうち刺身盛とイカが出てきたが、余りに量が少なく、味はさておき気持ちが満たされない。これは、一度に注文しておかなければいつ料理にありつけるか判らないと思い、枝豆が来たついでに口コミで一番人気の若鳥の丸揚げとレタス鍋、もろきゅうを注文した。酒も高いので大事に飲んだ。横では食べ盛り風カップルが背中を丸め、冷やしトマトを無言でがつがつ食べていた。

刺身も枝豆も喰い尽くし、レタス鍋も終盤の頃「若鳥ともろきゅうまだですか」と店員に尋ねると「間もなくお持ちします」の返事だったが、一滴残さず鍋を啜った後も、若鳥はこなかった。再度主人が店員を呼ぶと「オーダー、入ってませんでした」と真顔で言われたため、我々の怒りは頂点に達し「あ、もういいですから。お勘定お願いします」この時点でお勘定は1万円に届いていた。会計を済ませ店内を見渡すと客はまばら、結局一度も満席になる事はなかった。

異論があろうかと思うが、私は常々、外食で肝心なのは「注文したら程々早く料理が出て、充分な量があり、値頃な事」だと思っている。味は主観の問題だから問わない。この店は「遅い、少ない、高い」という食堂の三悪に抵触している。この食堂悪の枢軸(axis of dining evil)は、全霊を以て駆逐すべきだ。「二度と来るか」我々は意気投合し、駅前のやきとん屋で雪辱を晴らした。

Jul 2012