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LPT annex

whatever LPT consists of

episode 0604 : The correct strategy of sales

「正しい商魂」

当社は3月が年度末となるため、現在は決算業務の真っ最中である。棚卸に始まり、商品の〆切、経理の〆切と進む中、システム担当は主役級に忙しい一人だ。楽しい花見もなしで、帰り道ひとりで移動夜桜見物となる。先週の土曜日は棚卸で出勤だったが、日の沈む頃には作業が終わったので、黄昏時の移動花見でもしようと、会社から大手町まで一本道の永代通りを歩いて帰ることにした。

これまでも、時間と体力の許す限り、このルートは歩くことにしている。途中、中央通りとの交差点沿いで、永代通りに面したショーウィンドーがいつも素敵な婦人服店がある。ちょうど気の利いたスプリングコートが欲しいと思っていたし、暫くゆっくり買い物する時間もないだろうし、気に入ったものがあればそこで買ってもいいと思った。ちょっと昔の女優テイストな、ハートわしづかみなクリーム色のサテンコート、ちょっと高いけど買えない値段じゃない。他の洋服も素敵…ちょっと立ち止まって眺めてから、建物の中へ入った。

土曜の夕方は日本橋にとってハイタイムではない。何軒か店が入っているが、客はフロアに私一人。二歩、三歩…瞬間、「いかがですかぁ~?」店員の声がしじまを破った。ちょっとひるんだが、急ぐ用事もないから、中を覗いてみることにした。
コートといわず、スーツ、ドレス、どれもみな素敵だが、衝動買いするにはお値段も素敵過ぎる。その上、店員がうるさい。1点触る毎に何か言う。そして、決定的だったのが、「お客様がお外でご覧になっていたのはこちらです」と、こちらが聞く前から商品を出してきたのだ。中からずっと見られていたのかと思うと、なんだか獲物扱いされてるのが明らかで嫌だった。そして、試着すれば似合う、似合うの雨あられ。おまけに、じゃ他のデザインのも…と、トレンチコートを指差すと「あら、これ12(=日本の13号に相当)売れちゃったんですよねー。10でいかがですか?」と、あれよあれよと1サイズ小さいコートを着せられた。コートなのにバンザイも出来ないくらいきつい。「いやー、お似合いですねぇ。トレンチは、ゆるみがあると格好悪いんですよ。このサイズがぴったりですよ」!!!仮にもテーラーメイドで歴史ある英国のメーカーが、腕も上がらないトレンチを客に買わせるか!!商魂も、ここまでくると客の購買意欲を減退させるだけだ。勿論、私も退散した。コートは、素敵だったけど…

翌週、会社を夜9時ごろ退社した日があった。丸の内線で池袋に向かう途中、むらむらとコートが欲しくなり後楽園で下車、遅くまで営業している遊戯施設に併設のショッピング街へいった。案の定、ショップ街の閉店時間は施設より早く、どこの店も当然終わっており、店員が足早に片付けていたり、早い所はシャッターも閉まっていた。まあ、ウインドーショッピングだけでもいいか…と、吹き抜けの通路をあてもなくぶらついていたら、奥から「どうぞ、まだご覧になれますよ!」と、閉店しているにもかかわらずドアを開けてくれた店があった。忙しい中さっと姿見を用意してくれたり、心配りが利いていた。試着したコートがあつらえた様にジャストフィットで、おまけにセール価格。その場で購入した。帰り際、「来週、夏物が沢山入りますから、またどうぞお越し下さい!」こういうのが、正しい商魂だと思う。

Apr. 2006

追記 Jul 2015

その後、きついトレンチコートを勧めたショップも、身の丈なトレンチを購入できたお店もつぶれました。諸行無常。