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episode 0606 : Trickster

「トリックスター」

 先日、大手新聞社が米誌より提携している生活誌の座談会に出席した。平均購読年齢が37歳の女性というだけに、集まった読者は全員女性。座談会では、生活全般に関する質問の後、雑誌について忌憚ない意見を求められた。

 飼い犬の服作りにご執心の専業主婦、家庭・仕事・子供の教育すべてを完璧にしたいと豪語するパート主婦、最近パラサイトから脱した独身女性…皆、平生の生活について「本気か?」と思われる口を軽々利くので面白かった。一応私も、身の丈の生活を語ったつもりだった。だが、私が何か言うと、ほぼ間違いなく笑いが起こる。それも、失笑が…何故笑う!

-普段の生活は?
「商社の本店システム担当で、70台のPCと基幹システムの面倒を見ています」
-自分の時間をどうやって捻出していますか?
「夜中まで喋り続ける主人を巻くのが日課です」
-毎日の料理に行き詰りませんか?
「煮物の汁で卵を煮、次に大根を煮、車麩を卵とじにした残りを春雨でしめます」

 参加者中、自宅で過ごす時間が最も少ない自分が、一番家事労働が多そうだった。あくせく生きてて、何か悪い?介護の話も素通りだった。ついでに、買い物はどこでしますか?という質問に、それぞれ老舗のデパートを口にしていたが、この質問はしてもらえなかった。聞いてくださいよ、私にも。だがここでうっかり「中野ブロードウェイと秋葉原です」なんて答えてたら、どうなっていただろう。

 最後、「おたくの雑誌、最近タイアップ記事が多いですよね。広告主の信頼も上々ですか?」と発言し、編集長が真っ青になって座談会は終わった。かき乱すなら、徹底的にね。

June 2006

追記 Jul. 2015

この座談会の後に発刊された号から、それまで編集者の経済観念で言えばそれがリアルな価格帯だったであろう、コーディネイトで10万、20万は当たり前だったファッションページに、何故かトップス8万、ボトムはユ○クロみたいな傍目にもアンバランスなセットアップが増え、幅広い購買層にアピールする努力は見受けられましたが時既に遅く、上記生活誌は2009年1月号をもって廃刊しました。諸行無常。