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episode 0802 : a memory of that scent

「香りの記憶」

 若い頃から香水が好きだが、この頃香水好きに拍車がかかってきた。それも、最近流行のものではなく、昔一世風靡した様な、所謂「名香」ものをしらみ潰しに試している。

 試す、といってもライセンス等の関係でメーカーが日本撤退したり、現在は日本未発売の物も多く、手に入ったとしても、一瓶使い切る程気に入るかどうかは判らないので、大概はデパートの化粧品売場でテスターを試してみたり、コレクターの方に廉価で小分けして貰ったり
と、少量多品目を楽しんでいる。

 色々試すうちに、気に入るのは不思議と1920年代に発売された物に集中している事に気がついた。そして、気に入った香りに一貫するのは、私の様な中年女が彷彿する「お母さんの鏡台」の香り、粉っぽくて甘いが、最近の香りによくある一方的な拡散力はなく、あくまで懐から立ち昇る、暖かく控えめな香調だ。つけていて落ち着く、気分が揚がる香りのルーツは、案外幼児体験みたいな「刷込みの記憶」だったりするのだろう。確かに、母が使っていた粉白粉は、ボディパウダーばりに香料がきつかった。子供の頃は臭くて仕方なかったのに、今では掻き分けてでも探している、というのは不思議なものだ。

 一方、ここ十数年来の定番は、やはり1921年に発売され、M・モンローが寝る時に纏うといって不動の地位を築いた「あれ」である。イメージの割りに肌馴染みがよく、一番軽いオードトワレを愛用しているが、この間化粧品売場のカウンターで、初めて香水を試してみて驚愕した。普段使っているトワレとは全く違ったうえ、何と父の香りがしたからである。父の背広や箪笥の中を思い出し、図らずもカウンター前で涙ぐんでしまい、何も知らないBAさんを困らせてしまった。

白粉臭い母の鏡台と、女物の香水の匂いが立ち昇る父の背広。この辺が自分のルーツとは。幾つになっても親の影響下からは抜けられないという事だろう。今日も幾つか小分けが届く。大層楽しみだ。

Feb. 2008

追記 Jul. 2015
香水について公式に書いた初めての文章がこれ。ここがLPTの原点になります。
・「あれ」…Period X : Chanel No.5 - La Parfumerie Tanu

・「LPT」…Welcome - La Parfumerie Tanu