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episode 0809 : The Collector

「コレクター」

 だいぶ前だが、アメリカ在住の友人、メリー(仮)から、ご主人のお祖母様が亡くなり、ご主人が親兄弟たちと遺品整理に立ち会った時の話を聞いた。余りに衝撃的で、いまだに忘れることが出来ない。

 義祖母の逝去後親族が集まり、孫にあたるご主人も一緒に、遺品整理の為インディアナの田舎町にある義祖母の家を訪れた。久々に訪れた実家、そこがアメリカの古い一軒屋でなければ、到底許されないであろう数の収集品に、一同絶句したという。それは、背の丈まで積み上がった、一体何十年食べ続けたのか判らない数の、同じ銘柄のマーガリンカップ。義祖母が若かった頃から亡くなる迄の間身に着けた服。そして極めつけは「193×年○月×日トーマスが死んだ時の服」と書かれた、血しぶきと弾丸の痕が穴開いたスーツが、衣装箱から出て来た事だ。

 トーマスとは義祖母の兄で、狭い街で所謂鼻つまみ者だったらしく、毎度の如く酒に酔って喧嘩をした勢いで誰かに撃たれたのだが、警察も手を焼いていたらしく、町ぐるみで犯人をかばい、事件はもみ消されてしまったという。まだ少女だった義祖母は、その頃から収集癖が始まったそうだ。きっと、鼻つまみ者とはいえ、彼女にとっては大事な兄を失って、心の弾痕を埋める為に、何もかも捨てられなくなってしまったのだろう。今となっては不用品の海に溺れながら、親族は決死の廃棄作業に着手、服は時代物を演じる街の劇団に寄贈する等、なるだけ無駄にはしないようにしたが、さすがに背の丈ほどあるマーガリンカップなどは、即刻処分したそうだ。

 世の中には、いろいろなものを集めている人がいる。「捨てられない」と「集めている」の境界線は、他人にはわからない。持主が逝去したら、それこそ残された家族にとっては迷惑以上の何者でもない収集品が、世の中には溢れている。稀に「お宝発見」などという場合もあるが、まず確実に「稀」であることを肝に銘じて、後世の為に物を増やさない努力をしたいものだ、と言いながら、お互いに厳しい視線を向け合う我が家であった。

Sep. 2008