Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

LPT annex

whatever LPT consists of

episode 0902 : "Haken-giri"

「派遣切り」

 昨春より、何年も会っていなかった大学時代の先輩と交友が再開した。先輩は3歳年上で、小中高と親の出身校である有名ミッション系女子校に通い、大学で上京、卒業後Uターンし、家事手伝いや簡単なバイトをしながら三十路前に見合い結婚するもその前後に両親を亡くし、一人娘だった彼女はご主人の転勤で首都圏に戻ってきたが近隣に身寄りもなく、孤軍奮闘状態で二人の娘を育てた。
幸い両親の家督で金銭的には余裕があり、長らく専業主婦だったが、久し振りに会ったら、なんと派遣社員となってフルタイムで働いているというのだ。その上何回か派遣先は変わったが、一度も企業からの契約終了はなく、すべて彼女が気に入らなかったから継続せず、その都度すぐに次の派遣先が決まっているという。

 筋金入りのお嬢様で、社会経験も殆どない先輩が派遣で、フルタイム?しかも40過ぎてから、なぜそんな強気に働けるのだろう、派遣切りが深刻な社会問題となっているこのご時勢に…と不思議に思ったが、話しているうちに、先輩はある能力が著しく強化されていた事がわかった。「前の派遣先は金融会社で、どうも壊れちゃった偉い人がしまわれる部署みたいだったの。部長さん、育ちの良さそうな男の人でね。その下の人がたたき上げの裏表のある太鼓もちで。部長さん、変なところに判子を押したり、それを私のせいにしようとするから、プライドを傷つけない様に受取って、ちゃんと太鼓もちに報告したわ。でも、いつまでもそこにいるのは御免だと思って契約更新しなかったの。辞める日は、社員の人に最敬礼されて送り出されたわ」その間、たった数ヶ月。それは、①自分の置かれた部署が社内でどういう位置にあるか瞬時に見極め、社員の微妙な関係を見抜く「状況判断能力」②問題のある社員の行動を先読みし、さらにその人が喜ぶ事を言ったり行ったりする「行動予測能力」③社員の問題行動を発見しても、相手を立てながらもしかるべき部署に報告し、潮時の波に乗る「危機管理能力」だった。

 家庭でご主人を立てながらも対等、いやそれ以上の発言権を持ち、娘二人を緻密に観測しながら行動を先読みし、正しい道へと育てる。その女性として王道の生き方をする中に、社会人としてのポテンシャルも上げてきた先輩から、どんな状況も次なるステージの砥石にできる可能性がある事を教わった気がした。

Feb. 2009*

追記 Jul. 2015

その翌年、父の葬儀後「元気にしてる?会いたいわね」とわざわざ電話をくれて、とても嬉しかったので会いに行ったら保険の勧誘をされました。契約時には二人の娘を連れてきて、まったく断れる雰囲気ではありませんでした。後輩の義理でその後も別途加入しましたが、後日連絡を取ったらつながらないので保険会社に電話をしたら退職していました。元本割れしない年金型以外はすべて解約しました。その後先輩とは一度も会っていません。諸行無常。