LPT annex

whatever LPT consists of

episode 0909 : Falling apart

「瓦解」

 8年前より、ある生協から食品・日用品を宅配で購入している。商品自体は少々高いが味も品質も良く、長らく愛用している物が多数ある。毎週一通りの物が届くのは何より助かる。だがターゲットが子有り専業主婦家庭らしく、平日夜間や土日は電話対応がないため、破損など何かあった時は結構不便だ。また注文しても配達は何週間も先で、外での買い物や頂き物と重複する事も多い。加入時にのみ幾許かを収める一般的な生協と違い「出資・利用・運営が、生協の基本!ひとり10万まで出資しよう」と毎月の出資金引落しも負担だ。その辺はシステムの違い、と納得済だが、売れ残りが出ると、職員がわざわざ自宅からこちらの帰宅時間に合わせて売込みの電話をかけてくるのは閉口している。その際、毎月予算を決めて購入しているから買わない、と断ると「共稼ぎは何でも好きな物を買えて、何でも外食できるのに、どうしてそんなに節約するの?えらいわね」と斬り帰された事もある。感覚の違い、と一笑に付すにも多少のしこりは残る電話だった。より良い子育て社会・環境保全の実現を目指した女性中心の政治部門を持ち、みなで応援しましょうという雰囲気にもついていけない。

 月初、暫く入院していた義父の手術が急に決まり、週明けに盛岡へ向かう事になった。慌てて会社内での引継ぎを行い、仕事上の調整はついたが、生協の宅配日から数日不在となるため、配達の4日前、別の日に転送して貰うよう電話すると、

「大泉センターに平日取りに来てください」

一瞬、何の事だか判らなかった。ここは桜台。「いえ、別の日に配達してくれませ…」「曜日ごとに配達ルートが違うので出来ません。では、お近くの組合員様に預かって貰って下さい。それも出来なければ、非食品・冷凍品は翌週に合流、日持ちしないものは廃棄となります。共同購入ですのでキャンセルは出来ません」

…平日に取りに来い?ここまで不便を強いられて、何で利用しなくちゃいけないの?今まで、商品に愛着があったからこそ不便を承知で利用してきたが、愛着で相殺してもなお噴出す不満が爆発、脱会する決意を固め、盛岡からの帰京後、主人にその旨を話した。すると意外にも難渋を示したので、一時は考え直したが、ふと頭によぎったのは「出資金の返還」だった。ざっと計算しても9万は戻ってくる。折しも世間はエコ家電買換えに沸いている一方、うちのテレビは未だブラウン管だ。2011年、いよいよの時まで買換る予定はなかったが、地デジ対応テレビも値頃なものが出始めた昨今、試しに「出資金の返還でテレビ、買換えませんか」と主人に揺さぶりをかけた所、一発で交渉成功。心残りだったウインナーや魚はどこへやら、まだ解約もしていないのに翌日いそいそと量販店に市場調査に出かける始末。義父の術後の容態も安定し、心穏やかな良い週末を過ごした。

そして月曜日の朝一番、生協に電話をかけ、晴れて脱会申込をした。別段ごねられる事はなかったが、「お差し支えなければ、脱会の理由をお聞かせ下さい」と言うので、これまで溜まりに溜まった不満を火砕流の様に吐いた。「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。確かに、注文後キャンセルが出来ないという面は不満の声も出ています。しかし、組合員様みなで決めた方針で運営していますので」と、この期に及んで言い切った職員は、かつて私に売込みの末斬り帰した彼女だった。
私は、彼女の言う所の「みな」の一員ではなかったのだろう。だが、私の様な組合員が一人、また一人と離れていった時、おのずと「生活」に合わない生協は瓦解するだろう。それでは安全な子育ても、環境保全も、ただの理想に終わる。終わればいい。

Sep. 2009