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episode 1008 : The other side of the Boom

「ブームの裏側」

 ここ数年、右肩上がりで山ブームとマラソンブームが来ているが、皇居周辺ではランナーが飽和状態で接触事故も多発、また各地で行なわれるマラソン大会は、参加受付があっという間に定員オーバーとなり、いつも参加しそびれて悔しい思いをしている人も少ないないという。クライマーとランナーは大筋で人口がかぶっているようで、マラソンとマラソンの間はどこどこで山登り、という人も、勤務先ですらいるのだから、世間的にみて確実に社会現象化している。私自身は全く興味はないが、私の身近な世界が、今確実にブームのあおりを受けている。

 昨春より入会したフィットネスクラブには、しごかれながらも何とか抜け道を見出し、体に負担がかからない程度に通っていたが、1年前からはピラティス系のスタジオレッスンやアロマストレッチなど、小さいながらも工夫を凝らしたスタジオレッスンが加わり、これが大変体にあったので、毎週楽しみに通っていた。途中百日咳にかかり3ヶ月ほど休会、2月に復会すると、気づいたら入会時には5名、休会前は3名だったコーチが、店長を含めたった2名になっていた。明るくお喋りだった店長からは笑顔が消え、コーチもせず考え事をしている事が多くなった。逆に、月に十数クラスもレッスンをするうち、筋肉が休まる暇もなく増量してしまったのか、暫く見ないうちに全身が刺した針も折れそうな筋肉人形のように肥大していた。そして店長の体にも異変が現れた。レッスン日に行くと、「店長急病のためレッスンお休み」という張り紙が、半年に3回も出た。5月には盲腸、7月頭にはウィルス性腸炎、快復するごとに店長は小さくなっていった。

 月初、都合で1週レッスンがあいたので、次回の出席予約を取りに行った所、

「8月一杯で閉店する事になりました」

と、突然店長に告げられた。何と、昨春コラムで予言した憂いが現実となってしまったのだ。店長によると、昨春より徐々に会員がやめ、レッスンやイベントなど雇われ店長の工夫で沢山立上げたが、集客は一過性のもので自分の体も限界、増えては減り、また減り、と果は上がらず遂にオーナーから解雇、閉店を言い渡されたのだという。自分に合う運動が見つかり、体も変わって来ただけに残念だ。

今、フィットネスクラブに通う人は、山やマラソンなどのアウトドアスポーツブームで徐々に減っていると思う。ある物が輝けば輝くほど、落とす影は濃い。それは人にも、現象にも当てはまる。すっぽり影に覆われた、今年の夏だった。

Aug. 2010