LPT annex

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episode 1112 : Thriving leads to a breakdown

「商売繁盛、それ以上」
 
 わが街、桜台は数年前から個性派ラーメン激戦区として各店舗が日夜しのぎを削っているが、三田に本店を持ち、そこから暖簾分けした数ある支店でもトップクラスの味と評されるラーメン店は、暴力的な麺と具の量に始まり、トッピングを個別注文する際の呪文とも思しき専門用語、入店から出店までの厳しいルールなど話題性に事欠かず、毎夜熱狂的なファンが軒並み長蛇の列を作り、店頭で二重、三重にも連なっている…いや、「いた」と言った方がいいだろう。

 その店は、通常平日夜と土曜の午前中~3時迄営業、日曜は定休日だ。お店からのお知らせを携帯メールにて配信しており、試しに登録してみたら、最初は限定販売や年末年始のお知らせ等が配信されてきたが、ある時臨時休業のメールが来た。最初は「仕入の肉が来ない」「スープが壊れた」等、ちょっと不可解だがこの店ならではのこだわりによる、一応ラーメンに関するものだった。臨時休業は増える一方で「親戚のお通夜で」「家事都合により連休します」と、身内ネタの妙な事情説明までついてくるようになった。仕事をずる休みする為一族郎党一家全滅、お母さんのお通夜これで二度目、みたいなダメ社員も仰天の休みっぷり。更に、最近では営業時間内にも関わらず「本日はこれにて終了します」と、いきなり理由もなく早じまいメールが来るようになり、早じまいの翌日は大概臨時休業、しかも連休が増えてきた。

「明日は営業します」の翌日「やはり休業します」と、さすがにマニアの中でも桜台駅前店の休みの多さは問題視されているらしく、もはや臨時休業ではなく臨時営業だと言われており、このお知らせメールを携帯に登録しておかなければ、危なくておちおち食べになど行けない状態だ。おかげで最近は会社帰りに見かけると、めっきり行列も短くなってしまったようだ。

 だが、私はひとつ嫌な予感がする。最近「人気の店は、繁盛しすぎて潰れる」話を耳にする。まさに今、この店の大将は制御不能に陥っている気配がする。行列のできるこだわりのラーメン店は、ひっきりなしに客が来る。伝説の店の支店なら猶更だ。長い行列で何十分と待たされたマニア客は、黙って店が出す通りで食べればいいものを、細かくトッピングを注文するのが通だと思っているのか「○○マシマシ」「XXカラメ」とオーダーし、大将は漏らさず間違わぬよう、客が希望する異形のラーメンをひとつひとつお出しする。それでは激しいオーバーフローを起こし、繁盛するがゆえ心身共に潰れてしまうのも無理はないだろう。店主が納得した美味しさで配分した味と具を「黙って食え!!」という態度で出せたら、どれほど楽だろうか。いつからラーメンはこんな我儘な食べ物になったのか。要求過多・過剰対応な部分が、社会の歪みを髣髴する。

ちなみに今週は週明け早々早じまい、翌日も、その翌日も臨時休業だ。地元民として健やかな業務復旧を願ってやまない。

Dec. 2011