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episode 1201 : Current funeral style in UK

「イギリス葬祭事情」
 
 海外オークションがご縁で知り合ったイギリスの老紳士と仲良くなって3年になる。流石は天下の英国紳士、メールや電話では強烈なブラックジョークとウィットにいつも一本取られっぱなしだが、そんなデイヴおじいちゃんの愛妻、ジルおばあちゃんの弟さんが闘病の末亡くなったとの連絡があった。イギリスではどんな葬儀が行われるのか、日英友好の為に聞いてみた。すると、

「まず教会で葬儀が行われるんじゃ。そして、火葬場のある式場へ行ってのう、荼毘に付されるんじゃ」えっ、土葬じゃないの?「昔は土葬が主流だったが、今は火葬と半々じゃ。棺に、故人の愛用品を何でもかんでも投げ込んでやって、三日三晩、灰になるまで焼き続けるんじゃ」!!三日三晩も?!「そうじゃ、何もかも粉になるまで焼きつくし、集めた灰を小さな陶器のつぼに入れてのう…」
骨壺だね、それは日本と同じだ。それで?「人によっては家のマントルピースの上に飾っておくんじゃ」えーやだよそんなの。墓に入りたいよ。「もしくは、故人の遺志で散骨するんじゃ。わしの山登りの友人が亡くなって、そのうち二人は好きだった山に仲間と登って散骨してやったんじゃ。だが、散骨で気をつけねばならん事は…」何だろう。日本なら特段、許可は要らないそうだけど…

「風じゃ!!骨灰を撒く場所と風向きを吟味せんと、途端風向きが変わって、参加者全員灰まみれじゃ」うわ~、友達の骨で全員真っ白?!服についたらお土産つきになっちゃうよ。そういえば、おじいちゃんのお父様は戦前早逝され、ロンドン市内の公園墓地に眠っていたが、空襲で墓地が丸焼けになり、お墓も粉々になって所在が分からなくなってしまったので、後年お母様が天寿を全うした際にはやはり火葬後、天国のお父様に早く会えるようにと墓地に直接散骨したそうだ。イギリス人は今や墓にはこだわらず、地に帰り残された人の心に生きる事を願うのだろうか。「それって、無縁仏にならないの?!」と、聞き返す程の語学力も勇気もなかったが、宗教感の違いによる不理解を越え、今は私も弟さんのご冥福と家族の安堵を祈る事にしたら、おじいちゃんはこう続けた。
「戦前、わしのおばさんがロンドン郊外のお屋敷付の女中でのう、カトラリー番じゃった。昔、ナイフやフォークは真白な軽石粉で磨いたものじゃったが、おばさんの軽石粉は灰色で、火葬後の骨粉で磨いてるって、親戚中のネタにしとったんじゃ!!」やっぱりやだよ、おじいちゃん、ジョークきつすぎ!!

Jan. 2012