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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 13 : The Hutton Garden Job (2017 UK)

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年末恒例、妹とざわめく台湾に行った。いつも親戚や友達に御馳走してもらうばかりなので、今回は極力自由に過ごすことにした。朝ごはんはホテルの横の小さな店でお粥が食べたいね。でも確実に言葉が通じない愛想のない奥さんがひとりでやってる店なので、念の為、「粥」とメモを用意していった。見せるなり日本語で「ナイッ!」と拒絶。困っていると奥のほうから80過ぎくらいの客のお爺さんが「What do you want?」と英語で助け舟を出してくれた。とりあえず壁に貼ってあった写真を指差して全く想定外のもので腹を満たした。おじいちゃん、ありがとう。何の助けにもならなかったけど。

昨今、映画界でも老人ネタが流行っているらしい。名優マイケル・ケイン様でさえ「ジーサンズ:初めての強盗」とか、ロバート・デ・ニーロ様まで「マイ・インターン」で高齢を売りにした物語で新境地を開いている。

The Hutton Garden Jobは2015年4月に実際にロンドンで起きた強盗事件を映画化しているという。主演が超イケメン、マシュー・グード(Single Manでコリン・ファースのゲイの恋人役、Innocent Gardenで主人公のサイコな叔父役など)だと最初気づかなかったが(髭のせい!)、彼が強盗で服役中、塀の中でハンガリー・マフィアからロンドン中の宝石が集まるハットン・ガーデンの地下貸金庫破りの仕事を持ちかけられる。そんなうまい話があるかと思いつつも、3年の服役後、ハンガリー・マフィアのボス、エリザベートに会う。彼女が凄くいい!ゆっくりなハンガリー訛りの英語という事で、一言も漏らさず聞き取れる。なんと名女優バネッサ・レッドグレイブの娘さん!(それでも53)水晶のように青い瞳にプラチナブロンド、濃いいメイク、大きなわっかのイヤリング、寄せて上げるボインにハイヒール。バリバリのイギリス人女性が「戦犯タイプ・ハンガリー人」になりきってます!ドスきいてます!

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厳重なセキュリティが施されてるからと渋るものの、合鍵も解除のパスワードも用意ずみ。失敗したら命で代償を払う。成功すれば億万長者!とにかくハイテクより昔気質の職人系泥棒を集めて、ガッツリ強盗!と年上の仲間に話を持ち掛ける。その一人が70年代を一世風靡したモッズ映画の権化、「さらば青春の光」の主人公ジミーを演じていたフィル・ダニエルズ。もう60なのか...スティングだって、ねえ。

肺気腫なのにヘビースモーカーの老人。糖尿病なのにインシュリン打ちながらお菓子が止められない老人。

腕に覚えのある元大泥棒が4人集まる。最初は「夜中に5回もトイレに起きるから、そんな大仕事はできない」と断る老人も、誰にもリスペクトされない、世間に忘れられたくないというモチベーションで一致団結。「俺流」を貫き下調べに、念入りな計画、道具の調達。噂は闇社会にも流れ、その匂いを嗅いで寄ってくるフラチなザコども...

決行は宝飾店街すべてが休みのイースターホリデー。作業員の姿で忍び込み、核爆弾も敵わない分厚い壁に茶筒のオバケのようなドリルで穴を空ける。すべてがアナログ。決行前に倒れる老人。それでもバスに乗ってでも現場に行く。千里の道も一歩から。忍び込んだ地下室でひたすら交代で壁に穴を空けていく。一刻を争う時に「おしっこ」という老人。蠢く疑心暗鬼。やっぱり決行中に倒れる老人。一旦は諦めるものの、まだイケル!と現場に戻り、再決行の末280億もの貴金属をまんまと盗む...

オチが強烈にブラックな冗談、要所要所で必ず飲んでる紅茶。些細な仕草、選ぶ単語、Gentle men, shall we?と強盗を始めるじーさん。これが最近の事件だというのが驚きだったが、イギリスのどうでもいい文化が好きな人なら物凄く楽しめる映画だと思いました。5回見ました(完)

PS:BBCニュースでも速報で放送され、結局みんな捕まったみたい。ジャンジャン! 

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