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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 18 : プルートで朝食を(Breakfast on Pluto, 2006 Ireland)

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気になる俳優さんがいると、中古輸入盤で探してでもDVDをゲットしてしまう。最近はAmazon UKが本体は50ペンス(100円以下!)でも、送料を£11も取るようになって憤懣やるかたない。

プルートで朝食を [DVD]前にも紹介した「真珠の耳飾りの少女」でスカヨハの彼氏役を演じていたキリアン・マーフィー。吸い込まれそうに青い瞳が印象的で好きだった。たまたま見ていた「ダンケルク」でUボートに襲われてパニックになってる英国兵士が彼だと気づき、凄いお得感に酔いつつネットで調べたら12年前のアイルランド映画でトランスベスタイト役を演じているという!送料£11払って買ってしまいました!今41だから、まだ20代の頃の作品。男性も体系や首の太さが変わっていったり、ユニバーサルハゲになったりで、見分けがつかない俳優さんもいるが、やっぱり男なんだけど、若い体型にお顔が本当に綺麗!メイクのノリもよく地声は低いのに、70年代ファッションに身を包み、終始囁くような、裏声のような、役になりきった演技が憎めなくて2回じっくり見ました。(2回みないと解らない!)

アイルランドの国境のそばの教会の玄関に捨てられていた赤ちゃん。神父さんにより里子に出されるも、気がついた時には小学生の時からオネエ座り、化粧もドレスも大好きな厄介者。どこかで産みの母親は女優のように綺麗だったが、魔の都市ロンドンに飲み込まれてしまった!と聞かされ、母のようになりたい、母に会いたいと、ひとり母親探しの旅に出る。

行く先々で違うタイプの出会いがあり、ミュージシャンあり、着ぐるみショーあり、変態ジェントルマンあり、マジシャンあり、情にあつい刑事さんあり、組合のある合法売春宿あり(刑事さんの紹介)、2時間以上あり長いのだが、ちゃんと筋は通っていて、あちこちで見どころがある。

 

テーマパークで子供相手のリスみたいな着ぐるみの団体のリーダーが、いきなり頭取って、「なんだと、コノヤロー!」とマジギレしたり(ディズニーランドを想像してみて下さい)、「変態」ジェントルマンがロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーだったり、それだけでもお得感があったのに、主人公の初恋の相手になるミュージシャンが、ビジュアル的に80年代にタヌにも多大な影響を与えた元ヴァージン・プルーンズのギャビン・フライデー*!しっかり演技していて最初気づかなかったがステージで二人がデュエットするところなど、見ている側としては大儲け!キリアン・マーフィーは超美人のインディアン娘、ギャビンに至っては「バケモノ」ですが武士の本懐を遂げてます。

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しかし終始気になったというか、気にしなくてはいけないのが「アイルランド」という国の背景だった。時代的にも1972年、ロンドンデリーの「血の日曜日事件」など、IRAによる無差別爆弾テロが多発していた時代だ。作品の中でも車爆弾が爆破し幼馴染が死亡。クラブも爆破。ミュージシャンも友達でさえ、思想を刷り込まれ活動に手を出していく。そこに厳格なカトリック。たとえ神父さんでも住民の反感をかえば教会ごと焼かれる...

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結局、産みの母にも会え、実の父親まで分かるのだが、ヘビーな道のり。「映画」だと知りつつも、日本人には速攻で理解しがたいエレメントが根底にあります。辛くてもいつも明るくふるまう主人公。「よく笑う子だった」それは涙の裏返し。Dealing with his circumstancesという台詞がずっしり重かったです。そのくせ見終わった後、ほのぼの感がある不思議な映画でした。あ、ボノは出てきませ~ん。(完)

 

補足 2018.4

ギャビン・フライデー、およびヴァージン・プルーンズについてLPT annexの過去記事および音楽・映画・文化評論サイト「花の絵」の記事より補足します。

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* 店主タヌが多感な少女時代に相当感化されたギャビン・フライデー。これはヴァージン・プルーンズ全盛期、1980年代前半の写真ですが、当時ギャビンとお揃いでこめかみ剃ってました。あれから30年、2016年5月に開催した初のリアルイベント、Cabaret LPT vol.1ではオープニングビデオの挿入曲にギャビンのソロ3作目アルバム,Shag Tobaccoから”You, me, and World War Three”を使用。見世物小屋感溢れるオープニングになりました。