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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 16 : Hired Gun (2016 USA)

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音楽は大好きだが、私は楽器が弾けない。妹も楽器はできないが、ジェントルマンに付き合って数年前から参加し始めた年一回のライヴ合宿で、キンパツのヅラを被ってエアギターを弾いている(?)雄姿を録画で見た時は感動した。たとえ弾けなくても長年体に染みついてきた「ノリ」で、あれだけデマカセやってても「ここで決めて、ここでこう行く!」みたいなヴァイヴが伝わってきて、音楽が好きでよかった~としみじみ思ったものだ。

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エアギター

 

Hired Gunとは、いわゆるバック・ミュージシャンの事だ。伝説的なバンドの正式メンバーではなくても彼らを影で支えてきた名もない、しかし卓越した技術を持ったプレイヤーたち。このドキュメンタリーには「生きるって...」と色々考えさせてくれる重さがあった。

 

誰もが有名になりたい、スターになりたい、楽器を始めるがチャンスはこない。バンドを組んでも芽がでない。でもあのオーディションで採用されれば!そう、採用されれば!

 

「最前列でグラマラスな世界が展開されていても、自分には何の関係もないんだ」この映画の制作に深く関わり、Hiredの身から今ではFive Finger Death Punchとかゆうアリーナ級のヘビメタバンドの正式メンバーとして成功しているジェイソン・フックが淡々と語る。多くの証言や裏話、ライヴ映像を交え、その中でも回顧録風に彼の活動を要所要所で追っていく部分がある。本当はやりたくもないメジャー女性シンガーのバック演奏。「それでも、どん底を這いずり回っているより、現在進行形の一部になれるなら」次のチャンス、次のチャンス、やっと手にした業界では稀な長期契約。やった!家が買える!それもつかの間、メール一本で予告なしの「使い捨て」。彼曰く、それこそが'Sheer Terror'(真の恐怖)だと言う。

しかし、彼は苦労の末というか、ある地点で「華」を開かせている。いるだけで気になる存在。端っこでギター弾いてたの誰だ?あそこだけヘビメタしてたじゃないか!それが口コミで広がり、ついにはオーデションなしでも、アリス・クーパーに引き抜かれていたりする。アリスに選ばれたという事は「証」になるというのに、最高のプレイを披露しつつも「俺の本当にやりたい事は...」と悩むジェイソン。しかし「音楽の神様」はいるのかもしれない。一大決心の末「今まさに来た波」に乗り、あえてアリスよりずっとギャラの安いFFDPへ移っていく。しかし「波に乗った」男の顔は違う。オリジナルメンバーを超えるほどの凄みを出し、見事に開花しているのだ。「一生懸命練習を重ねて、長年磨いてきた技術やアイデアを活かせる場所に巡り合えて本当に幸せだ」素の彼には「俺様」のノリなど微塵もなく、ただカッコよく、ハンブルだった。

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Hiredには何の保証もないが、選ばれるには3つの秘訣があるという。①猛烈に巧いヤツ。②華のあるヤツ。③24時間一緒に過ごせるヤツ。

三番目が一番ハードルが高いという。マネージャーが売上金横領、裁判、絶交、仲間の自殺、絶頂期の事故死...音楽に限らず「人間性」の色んな側面が随所に見て取れる。売れたとしてもゲスの極みのヤツもいる。好きなミュージシャンは誰ひとり出てこないドキュメンタリーだったが、ジェントルマンと一緒に見たら、怒涛のウンチクが聞けるに違いない作品だと思いました。色んな意味で合掌!声が小さい!?ガッショーーーーーッ!!

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