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Humble Mumble その26:「声優狩り」あるいはInglorious Bustards(2009 U.S.A)

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大変申し訳ないが、私は日本の声優さんが苦手だ。最近ではアイドル化され歌ったり踊ったりもするという。原語で聴くより日本語吹き替えは数段テンションが高く、場面の雰囲気ともズレがあり見ていて疲れる。もちろん上手な人もいるんだけど、声優を目指している方、ごめんなさい!ワタス、ダメナノ!

15年以上前から、日本のアニメをわざわざ英語吹替えにした輸入盤DVDにはまった。BIG Oに始まり、CowBoy Be-Bop,、サムライチャンプルー、攻殻機動隊、Ghost In The Shell, Witch Hunter Robin, Death Note、精霊の守り人などは英語の勉強にもなり大変楽しませてもらった。今はもう下火らしいが、当時の海外の声優さんもひとりで何役もこなしたりして、CowBoy~では主人公スパイクの昔年の怨敵ビシャスを同じ声優さんが声色を変えて演じていてトリハダがたった。海外では声優さんの名前は大事にしないが、あれこれ見てると「あ!これあの人の声!」と発見した時のワクワク感。誰にもわかってもらえないマイ・ブームだった。この行為を自分で「声優狩り」と呼んで悦に入っていた。 

イングロリアス・バスターズ [DVD]

様々な言語が飛び交う映画での吹替えはどうなってしまうのだろう。悪名高き?タランティーノ監督作品、Inglorious Bustardsは第二次世界大戦下、ヒトラーが暴挙を働いていた時代。バスターズはゴースト・バスターズではなく、アメリカでユダヤ人を中心に結成されたナチスを皆殺しにしていく兵士軍団だ。嬲り殺しては頭の皮を剥ぎ、必ずひとり生き残らせてどれだけ彼らが恐ろしい存在かを周囲に知らしめる。一応主人公らしいブラッド・ピットが「あんた、絶対普段はそんな英語しゃべらないでしょう!」てくらい、大声で南部訛りの強いアメリカ英語を一本調子に話し非常に煩わしい。

フランス人はフランス語を話し、ドイツ人はドイツ語をイギリス人はブリティッシュ英語を話す。そんな中、ドイツ人女優がイギリスのスパイとして暗躍する。イギリス将校もドイツ人将校に扮してドイツ統治下のフランスに潜り込み、さりげなく地元のパブで作戦会議と思いきや、ベロンベロンに酔った下っ端のドイツ兵に「失礼ですが、変わった訛りですね~」とつっこまれる。こんな細かいところ、どうやって日本語吹き替えするのかな。

山奥の村で育ったから、村じゃみんなこうだ、で誤魔化すものの、あっけないミス(イラスト参照)で正体がばれて皆殺し...「光をくれたひと」のマイケル・ファスベンダーが英国軍人、「マルクスとエンゲルス」で髭もじゃマルクスを演じたアウグスト・ディールがオールバックバリバリ軍服のドイツ将校を熱演しててステキ! 

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名シーン「That's a Bingo !」

でもでも、この映画での最高の収穫は今まで気が付かなかったけど、冷血で自己中のナチスSS高官、別名「ユダヤ・ハンター」、クリストフ・ヴァルツ演じる「ランダ大佐」!アカデミー賞など総なめで、確かに悪人にも関わらず、超お茶目で各国語堪能(本人はドイツ系オーストリア人?)、些細な仕草にも見入ってしまう。人格からにじみ出るアドリブだと確信!アメリカ人を真似して「ビンゴーっ!」と言えた時のはしゃぎぶり!ここだけでも見てほしい!(見て見て‼予告編で!)もう、完全に主役を食ってるし!そういえばこの方、「Tarzan:Reborn」でも悪徳商人を演じていたが、妙に細かい芸が素敵で印象に残っていたっけ。タラ監督のお気に入りらしく、他にも多数出演しています。近年の作品で、オランダを舞台にした「チューリップ・フィーバー」では17世紀の豪商を演じているけど、これはちょっと本領発揮できてなくて残念だったな~。てか、彼だけがまともで他の配役、脚本になんか無理があり、鼻息荒く期待していただけにな~。でも「チューリップ~」を見て検索して、C.ヴァルツに辿り着いたので結果大儲け! 

フランスを舞台にしてるのに、みんな英語とか、ドイツ映画でも英語とか、イマイチ感情移入しようがない作品も多々ある中、「バスターズ」は通訳まで使って、細部に至るまで「言語の違い=人種の違い=偏見・争い」を、過激な描写の中にも自然に世界の広さを見せてくれている気がしました。ちなみに、日本語吹き替え版はまだ見ていません。あしからず!

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