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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 5 真珠の耳飾りの少女

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台湾は様々な国に支配されてきた。明の一部としてオランダと戦った17世紀。結局1624~1662年の37年間も南部を首都として統治されていた。その中心地に建てられたゼーランダ城は今でも観光の名所だ。台北とは違い、何かのどかな台南。父も南部麻豆(まとう)の裕福な商家出身なので(親族でただ一人日本に帰化して最後倒産。アハハ)親戚が何回か観光案内してくれた。スペインやポルトガルも跋扈していた時代、ゼーランダ城を取り巻く城下町には地元民に限らず本国オランダから派遣された軍隊や商人、職人その家族など活気ある日常がくり広げられ、文化的にも様々な交配が織りなされていったのだろう。当時の面影を残す狭い裏路地など、’16年末に妹と訪れた時、安平区というまさしくオランダ政権のメッカで、現地名物、「爆蝦せんべい」を恥ずかしいほどお土産に買ってもらった。1個でもバルキーなのに、ひとり4袋、巨大な赤い屈強なビニールに入れて「荷物になるけど」と持たせてくれた。荷物になったよ!うまかったけど!

帰国着、買いっぱなしで7年間しまい込んでいたDVD「真珠の耳飾りの少女」を見てぶっ飛んだ。
フェルメールがオランダ人だったことを今更ながらに思い出し、主演がコリン・ファースだし、見てみるか~程度の、私のバカ!まさしく、17世紀オランダ、デルフトが舞台なのだ。この時代、貴族ではなく商人が交易を通し、巨額の財を築いていたという。そこにはアジアからもたらされた美術品や文物もあったはずだ。ウィキペディアでも当時のオランダ文化を知りたいなら、フェルメールの絵画を見てみるといいと出ている。映画の筋としては画家フェルメール一家に奉公にきた、貧しくとも色彩感覚にたけた少女と、旦那様(フ氏)との魂のタッグから名画「真珠の耳飾りの少女」が誕生する、切ないラブロマンスとして仕上がっているが、小説がもとになってるので、ほぼフィクションらしい。「あんなに大きな真珠の耳飾りもモデルも存在しない論」が最近は主流だという。奥様の嫉妬、ヒステリーもすざましいものがあるが、筋書うんぬんより、とにかく建物、運河、庶民、金持ちが着ている衣装から目が離せなかった。長崎カステラのパッケージに書かれているような広いつばの帽子を被り、中途半端なロンゲに寸足らずのズボンにマントの男性。豪華なドレス、素敵な髪形。でもイギリスのそれとも全然違う。女中たちはみな髪を隠し白い頭巾を被っている。賑わう市場。捌きたての豚、鶏、魚、野菜。窓から刺す柔らかい光。この映画は場面場面がそのまま絵画のようだ。ただ、こういう時代のオランダ人が財にものを言わせ、遠路遥々船に乗って台湾に行き、現地人を労働力にし、ある時は圧政に蜂起した漢民族を虐殺したのか、本国ではこういう生活をしている人たちが、南の島に行った家族を待っていたのか...などなど、中年女の胸中は違うベクトルから感無量になっていた。オランダの黄金時代は短く、英蘭戦争やフランスの侵略で経済は大ピンチになり、リッチなパトロンを得ていたフェルメールも破産している。
台湾のオランダ統治も鄭成功の猛攻撃によりあえなく終焉を迎えている。20代の頃、初めてゼーランダ城界隈に行った時、鄭成功の前で頭を下げて降伏している有名なオランダ人の銅像の前で、当時何も知らなかった姉妹は同じポーズをして写真を撮ってもらっているのでした。私46キロ、妹60キロでした。 

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]