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マンプク宮殿1 干し芋と宮殿

mampuku

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 最近にしては珍しく冬らしい寒さと乾燥が続く2017年初頭東京の冬、すっかり最高気温が零度を下回る環境での冬暮らしを忘れかけている私に18歳まで暮らしていた生まれ故郷の感覚が少し戻ってくる時というのはそんな季節。
 
 春、夏、秋はものごごろついた歳から50歳になろうとする今に至るまで住む場所は変わっても暮らし方、感じ方に加齢で身体が感じる衰え以外の変化は感じないのに、冬だけは18歳までと以降とで断絶を感じてしまうのは単純に気温や湿度、降雪の多寡だけではないように思える。そして今でも思い出す情景というのは冬の事象ばかり。大体は音楽と食べ物に関連。
 
昔懐かし干し芋 (平型)1kg
Dr. Budgie : ジェントルマンの原点 干し芋
 
 生家で冬のおやつと言えば干し芋。今はスーパーに行くとブランド芋で作ったものが妙に高い値段で売られていて歯応えの無さと甘みの強さに隔世の思いが強まるが、当時は焼いても固い、表面は白粉まみれ、ちょっとやそっとではカビない、甘さも微かにしか感じない、まさしく「ザ・保存食」みたいな風情の食べ物。それを学校から帰ってくるとテーブルの上の袋から2-3枚取り出し灯油ストーブの天板上にアルミホイルを敷いて数十分炙って軽く焼き目が付いた処で親の居る居間から抜け出してステレオのある二階へ上がる。同じくストーブの上の薬缶のお湯から作った緑茶と共に。
 
 当時、家のオーディオ機器は2階の3部屋ある部屋の1つに置いてあり、自分の部屋も2階にあった私は贅沢にもほぼ2階を占有していた。自室、オーディオ部屋、昼寝部屋…どんな贅沢な使い方なのやら。家族も誰も文句を言わない事を良いことに生涯最も贅沢な空間を満喫していたが当然そういう状況なので自分が上がるまでは暖房の類は一切入っていない。
 
 地球温暖化の影響なのか今はそこまで寒くならないが、当時は最高気温が零下の日々が数週間続くのが当たり前、夕方、太陽が沈むと間違いなく外に存在するものは全て凍り付く状態では暖房無しでは部屋の中も吐く息も白い。利口な人なら暖房を点けた後、一度居間に戻り家族と談笑しつつ部屋が十分暖まった後おもむろに部屋に向かうのが正しい。でも、それはしなかった。何でだろう?反抗期らしい反抗期はなかったつまらない子供ながらやはり親と同じ空間に居るのが嫌だったのもあるのですが・・・とにかく一刻も早くレコード聴きたかったから!
 
IN THE COURT OF CRIMSON KING クリムゾン・キングの宮殿 [12
Dr. Budgie : ジェントルマンの原点 クリムゾン・キングの宮殿
  
 中二の春に当時の友人宅で「姉の持ってるレコードでこんな変なジャケがあるぞ!」と見せられた赤ら顔の森進一が絶叫してる絵が表紙のアルバム。ゲートフォールドジャケの中面を見ると今度は変態としか言いようのない男がニャニヤ笑っている絵。曲は5曲だけ・・・一曲が長い・・タイトルは「精神異常者」とか「墓碑銘」とか「宮殿」とかで普段聴いてる「ラヴ」とか「ベイビー」とか「ロックンロール」とかいう高揚する単語ではなくなんか嫌な感じの言葉が並ぶんですが、聴かされた瞬間「このアルバムは自分のために存在する!」と思うくらいの激烈な衝撃を受けた、というと月並みな表現になりますがあれはインプリンティングみたいなものなのでしょう。親は?「プログレ?」はたまた「憂鬱な音楽?」
  
 中2の冬入るころにようやく自分で入手して、そこから朝学校行く前に聴き、帰宅したら聴き、夕飯食べたらまた聴く。を繰り返して中2の冬は終わりました。後にも先にもあんな1枚のアルバムを聴き狂った事はないでしょう。そしてその時手元には干し芋があった。今は脳内完全再生が可能な為、家で実際の音を聴くことはあまりないのですが、たまに聴くと頭の中には白く粉を吹いた干し芋が常にセットで浮かんできます。「干し芋こそが我が墓碑銘」でございます。
 


KING CRIMSON - EPITAPH (GREG LAKE VOCALS) BEST VERSION

'Dried sweet popatoes will be my epitaph' - 英語にするとちっとも面白くない

 
 それ以降、生家を出るまで暖房なしの部屋でレコードを聴く習慣は続いたのですが、あの時外に見えた風景(灰色の空と白色の地面と16-17時位の薄明)と合いそうな音楽を探し続けているような気がしてなりません。呪いみたいなものですね。