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マンプク宮殿11 学食の中華丼とHATFUL OF HOLLOW

学食の中華丼とHATFUL OF HOLLOW

 

 80年代、バブル経済だったらしいが恩恵もなく、ロングコートに栄養失調気味の身体を包み若さを無駄遣いしていた英国音楽ファンの方々。今では私を含め中年から初老に片足突っ込み加齢臭漂う皆さまが今盛り上がっているのはTHE SMITHSなるバンドの3rdアルバム「THE QUEEN IS DEAD」30周年記念豪華盤のリリース。

THE QUEEN IS DEAD [3CD+DVD BOX] (2017 REMASTER)

 ハイレゾやらリマスターやらで音が良くなっているという事だが老化&積年の大音量に痛んだ耳には正直良く判らず。デレク・ジャーマンという当時日本でも少し話題になった映画監督(‘94年にAIDSで死亡)のPVも目まぐるしいカット割りに老眼はついていけない。おまけでついている当時のライブ録音もまあオマケ。一度聞けば十分。当時のイギリスから出てきたバンドの中では演奏力はある方々なんだが(他がかなり酷いの多かったから贔屓目もあるが)ボーカルの変な動きが見れないと魅力半減なのは否めないところ。
 30年前熱心に聴いていた自分の姿は辛うじて覚えているが、当時も感じていた「終わりの始まり」という雰囲気がバンドの歴史が始まりから終わりまで決着がつき、当時の回顧録をメンバーの中核2人が出版、通史的な部分が既知のものになっている今聴きなおすとより強く感じられる。代表作を選べと言われれば必ず選ばれる作品であるのは間違いのないところだけど。
 
 一番熱心に聴いてたのはこのアルバムじゃないんだよな。こいつの2枚前だ。
 
 首尾よく東京の大学に滑り込んだ私は「東京」という事だけで舞い上がっており、自分の通う場所が東京のどこに位置しているかほとんど気にしていなかった。その大学は総武線山手線内(千代田区)に1つ。中央線武蔵野近辺に一つ、そして自分が通うのは1年前に出来たばかりの八王子市と町田市と相模大野市の境にある「多摩キャンパス」なる広大だが完成途中の処だった。
 受験した会場は千代田区だった故、合格が決まってから初めてアパートを決めるため学校最寄駅の1つ中央線西八王子駅に上野駅から向かった時、吉祥寺を過ぎたあたりから不安になり、多摩川を超えたあたりで騙された気分になり、日野、豊田駅を超えて諦めの境地、西八王子駅は恐ろしい僻地に感じたものだ。「東京に出てきたはずがエライ田舎に来てしまった・・・ヤバい。失敗した!」と思ったがこれで終わりではない。学校まで更にバスで20分。外に見える風景は、実家とあまり変わり映えのしない郊外住宅街→農地→最近出来たのであろう高層マンション群→農地→またまた高層団地→山地ときて墓地が見えてきたところで左折、学内のバス停留所に到着した。
 学校の周辺にあるのは山と数件の農家、そして墓地。学生街などは在りうるはずも無く、一度登校したら学内でひたすら時間を潰すか周辺をハイキングして蝮に嚙まれるかの2択。サークルというのも殆ど無く、学生運動が盛んで学校運営側は対処に相当苦労した歴史を持つ学校なので、そういう学生が無為に閉鎖した空間に集う要素を排除した作りになっているようにも思えた。
 そもそも旧知の人間はゼロ、学内の人間関係をゼロから始めざるえないので入学後1年近くはかなり孤独な校内生活を送っていたように思う。独りで時間つぶしできる場所は近辺には無いのでいきおい学食、学生協の書籍売り場、図書館といったあたりをグルグル巡回していた、その頃は図書館とかで何を読んでいたのでだろう?今となっては全く思い出せない。
ロイヤルシェフ 中華丼の具 200g 5個セット 【冷凍】
  学食での食事のパターンは大体決まっていた。
朝から夕方まで授業がある場合は朝:かけ蕎麦。昼:中華丼 夕方;飯小、みそ汁、ほうれん草のおひたし
朝から昼までの授業の場合:朝:かけ蕎麦。昼:中華丼
昼からの授業の場合:昼:中華丼 夕方:飯小、みそ汁、ほうれん草のおひたし
 
 このパターンを延々ループ。学内の食事で一番食べていたのは中華丼であるのは間違いがない。この食事パターンが終わったのは2年になりゼミに入り、バンドも始めて集団の中で過ごすのが多くなった時だった。
今では外食で中華料理店に入っても中華丼を頼むことは殆ど無い。中華丼は自分の中では「孤食」の時代を思い出すものだからなんだろうか。
Hatful Of Hollow
 腹の中が学内の中華丼と住居近所の100円ラーメンで満たされていた頃、良く聴いていたのがTHE SMITHSの2ndのようなBEST盤のようなアルバム、ラジオセッションやシングル曲を纏めた「HATFULL OF HOLLOW」だった。生まれて初めて入ったパチンコ屋でビギナーズラックで4-5000円稼いだ足でレコ屋直行で買ったアルバム。「帽子一杯の空虚」なるタイトル、ジャケデザイン、そして曲調は軽やかだが痛さ満載の笑いながら泣いてるような歌詞の数々。あの頃の自分の気分にうまく寄り添ってくれていたのだろう。THE SMITHSのアルバムの中で今でも一番聴きなおす機会が多いアルバムはこいつだ。
 

Scared To Get Happy A Story Of Indie-Pop 1980-1989 (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

 今回発売されたTHE QUEEN IS DEAD(3rd)。「女王は死んだ!」か・・・恰好良いんだけど。その前作はTHE MEAT IS MURDER(2nd)「食肉は殺人!」うーん諧謔効きながら勇ましいね・・・ 良い曲もあるし名盤なのは間違いない。でも膝抱えて聴く気分の作品ではない。数年前出た80年中期、丁度このバンドが全盛期だった頃にB級ラインで蠢いていたバンド楽曲を
集めたコンピレーションアルバム「Scared to get happy」というのがあるが内容はともあれこのアルバムのジャケの絵とタイトル。そんな感じをあの頃の音に求めてしまう。
 
「孤食」はもうあまり求めないが「孤聴」は今でも必要だ。今では通勤時のiphoneがその機会を提供してくれるが、HATFULL OF HOLLOWを聴くと危なく電車内や歩道で口ずさみそうに
なってしまう。ぼそぼそと「ディース チャーミング マーン」とか呟くオッサン。気持ち悪い。自分が電車内で隣にいたら車両替えるね。