LPT annex

whatever LPT consists of

マンプク宮殿21 とんかつ村とTrash

f:id:Tanu_LPT:20180626130148p:plain

 

 私の通っていたマスプロ私立大は、80年代の大学キャンパス郊外移転が相次いだ時期に、八王子市と橋本市の境に一部学部を移転させた。私はそこに移転2年目で入学したのだが、3,4年生はそのまま元の場所に残ったので、無駄に広い学内に2学部だけの移転で1.2年生しか居ない為、非常に閑散とした中に放り込まれた。図書館も棚に空きが目立ち、購買部も何とも淋しい品揃え。高校時代の友人が多摩動物公園近くの大学に通っていたので一度遊びに行ったが、そちらは何もかも段違いの充実振りで、余りの環境の違いに我が身を呪ったものだ。昨年話題を独占したKK学園獣医学部開学後の惨状を見聞きすると、昔の自分が居た環境を思い出す程。
 本校市ヶ谷キャンパスでは学生会館というものがあり、そこがサークルや学生組織の活動場所になっていたが、完全学生自主運営という名の元、新左翼系運動の拠点になり大学当局が対応に苦慮した事もあったのか、新キャンパスは学生のたまり場となる場所を意図的に排除したような作りになっていた。サークルというものも殆ど無し。
上京したらバンドでも組めれば良いなと思っていたが、上京組の友人にはその手の嗜好の奴は居ない。そして学内でもそういう知り合いは絶無。そして最大の問題として、高校時からギターは持っていたが、サウンドホールにワイヤレスマイク放り込んで盛大なハウリングと短波ラジオをコラージュ、ハサミを弦に押し当てて謎スライドギター、フレッドフリスごっこと名付けたテーブルにギター置いて弦に豆や磁石を放り投げる、真面目に楽器としての練習を怠っていたので、そもそも人と合奏出来る技術が無い。これが最大の問題なのは自覚していたがどうにもならず。ならばきちんとギターを練習すれば良いのに、何故かベースを購入して真面目に教本やコピー譜を使い、自宅練習に励んでいた。あても無いのに・・・。
 僥倖というのか、同じゼミの奴から、彼の友人がバンドを組んでいてメンバーを探している、で、あんたに会いたがっているという話が来てそのバンドに参加。ギターをやってほしいというので実家からギターを送ってもらい、殆どまともに弾けないながらギタリストとして復帰した。
 練習場所は件の学生会館内、バンド自体が市ヶ谷のサークルに所属しているので、私もそこに所属してほしいとの事でサークルにも参加させていただく。サークルが持っている部屋がリハスタとなっており、そこを週一回の部会で取っていくシステムなのだが、私の入ったバンドは殆ど競合も無く毎回決まった時間を取れていた。日曜の朝、誰も取らない時間帯。

f:id:Tanu_LPT:20180926101804j:plain

一般的なメンチカツ定食(写真:小川港魚河岸食堂HPより)

 学生なんぞ、週末は昼位まで寝ている時代だったが、メンバー皆八王子、蒲田、渋谷(これは近いが)から殆ど遅刻も無く市ヶ谷までやってくる。私も最初は西八王子から、1年後には京王線千歳烏山駅と大分近くになったが、日曜朝9時の閑散とした学内まで良く通ったものだ。
 リハが終了するのは昼、今なら昼だろうがなんだろうが飲める場所を探すところだが、当時は飲酒の習慣が無く、他のメンバーもそうだったのか(思い出せばメンバー全員で飲み屋へ入ったという事は一度も無かったような)安く食べられる飯屋に行っていた。神楽坂入口あたりの地下にある「とんかつ村」という店。今はもう無い店だが、調べてみると千葉が本社で神楽坂以外では神保町にお店があったらしい。メニューは「村」だけに「村長セット」とか「村の三役セット」とか「村長セット」「青年団セット」とかあった記憶が、恐らく村長はヒレカツ、三役がロースカツだったのか?判らない、食べた事が無い。いつも頼むのは「青年団セット」メンチカツだった。リハ後に食べるこれは、何かとても美味しかった記憶がある。今食べて美味しいと思うかどうかは判らないが、気のおけない仲間と共通の目的に取り組んだ後に食卓を囲むというのは、それだけで若い時分には最高の調味料なのかも、と柄にも無く感じたりする。学生の頃食べた貧しい食事に郷愁を感ずる事はあれど、もう一度食べたいと思う事は無いが、青年団セットはもう一度食べてみたいな、と思う事がある。無理だけど。

 当時、どこかへ移動するときにポータブルカセットプレイヤーで良く聴いていたのがTHE STALINの1stアルバム「TRASH」。新左翼の拠点でもある学館に向かう時に「革命的日常」豚喰った後に帰宅する時は「解剖室」朝一の授業出る為に空腹を抱えて登校する時は「メシ喰わせろ!」とまあ見事なBGMだ。このアルバム、トータルプレス枚数が3.000枚程度だったらしく即完売。権利関係が複雑なのか、一度も再発された事が無い。私もレコードは持ってなく、友人からダビングされたカセットを擦りきれそうになるまで聴いていた。後に不正コピーのCDが出たり、B面のライブ録音は同じライブの会場録り別録音がBOXセットに収録されたりしたが、このレコードは機会があれば当時の本物を手元に置きたいと今でも思っている。凄まじく高額になっているのでこれも無理だが。

飢餓々々帰郷(DVD付)
飢餓々々帰郷/遠藤ミチロウ(DVD付)
これにTRASHのライブと同じ時の客席録音ライブが入っている

 

 そういえばこのレコードのライブ部分、収録会場は私たちがリハで使っていた学館のホールだった。そして数年前知ったのだが、ジャケを描いた宮西計三氏は今私の故郷、盛岡市でワインバーをやっている。今年時間があったら訪ねようと思ったが、夏は時間が取れず断念。来年は行けるだろうか?無理になる前に実現させなくては。

 

f:id:Tanu_LPT:20180926160510j:plain

Trash オリジナル盤ジャケット。正規にCD化されていないため、Amazonからのリンク画像ではありません