LPT annex

whatever LPT consists of

マンプク宮殿26 R.I.P Mark Hollis (ex. TALK TALK)

 ’80年代初頭~中盤にかけて盛り上がった「ニューロマンテイック」と日本では呼ばれていた一連のバンド群。今でも現役感があって活動しているのはDURAN DURANくらいか?
VISAGE(リーダーお亡くなり済)CULTURE CLUB(少し前に新作ライブ盤が出ている)ABC, Spandau Ballet、HUMAN LEAGUE(ここら辺は懐かしのバンドイベントなんかの常連、日本ではビルボード東京なんかでやっている)マイナーなとこではclassics nouveauなんていうのもいたか。
 日本でもヒットしていたのでFM等で聴く事も多く、好き嫌いに関わらず知っている曲は多いのだが、当時バリバリのロッキングオン史観に毒されていた私はここらあたりの音は積極的に聴く事は無かった。
 当時、DURAN DURANの仲間、弟分みたいな形(レコード会社もプロデューサーも同じ、ライブ対バンの機会も多かったらしい)で日本でも紹介されたバンド、気持ち悪いデ゙ザインのジャケ、顔のパーツが全て唇になったアルバムがリリースされた事を微かに記憶しているバンドが今回の主題、TALK TALKというバンド。2nd シングルのバンド名と同タイトルの曲が本国でも小ヒットし、リリース当時から名前だけは知っていたが、気に留める事も無く10年以上が経過。
 90年代半ば位に、家にあったプログレ名盤ガイドみたいな本を何ともなく流し読みしていた時に、彼等のアルバムが紹介されている事に気付いた。「はて?ニューロマのバンドがなんでこんなところに紹介されている?」と引っかかり。それから数日後、たまたま立ち寄った中古盤屋に件のアルバムが大廉価で売られているのを発見。確か500円もしなかったはずだが、ま、この値段なら試しに聴いてみるか・・・と思って購入。

 

Laughing Stock

 

 「Laughing Stock」、活動時5枚のアルバムを残している中の最終作。一聴してプログレだとは思わなかったが、侘び寂びすら感じさせる空間の多い音作りの中に漂う異常な緊張感。レーベルがverveという先入観もあってかジャズ(とはいえECM系)のような感じもする。最初聴いた時はDAVID SILVIANのソロアルバムに似ているかな?とも感じたが圧倒的にこちらの方が素晴らしい。「こりゃあ凄い掘り出し物だ、他のアルバムはどうなのだ?でも、この音で最初からやっているとしたら絶対ニューロマンチックなんて範疇入ってないよな」と探究心に火がつき他のアルバムも探し出す。
 結果、1枚目はかなりポップでまあニューロマといえばいえなくもない。2枚目~3枚目で大分音が重厚になり、唄もかなり悲哀を感じさせるものに、このあたりは本国イギリスではまあまあヒットというところだが、大陸ヨーロッパ各国ではチャートアクションもかなり高いところまで行っていたらしい。4-5枚目あたりは少し前の言い方でポストロックとか音響系とか言われていたものとかなり近似値に。
 3-5枚目のアルバムは今でも我が家で良く再生されており、ライブDVDも観ていたりもする。映像で見るメンバーは地味・・・。デビュー当時の写真を見ると笑顔で写り、身だしなみも若手バンド系の華やかさが少しあるのだが、ライブの時期(3rd-4thアルバムの頃)のボーカリストの格好は洗いざらしのジーンズ&綿白シャツ、中途半端な長さのボサボサ髪でサングラス。で、唄う時は殆ど俯いていて前見ない。間奏が長い部分ではドラム台に座ってるし・・・。華やかさとは全く無縁なステージで、下手すると駆け出しゴス系バンドのような趣なのだが演奏と唄は超絶、客もかなり盛り上がっていた。

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左:デビュー当時 右:解散前

 解散後、ボーカリストはソロアルバム1枚出した後、ほぼ引退。ベースとドラムは解散後O.rangというユニットで2枚作品を出しているらしい。(探しても見つからないしweb上で見つけても高値で手が出ない)ベースはPortisheadのボーカルと共同作を出したりしており、ドラマーはBark PsychosisというTALK TALKにシューゲイザー風味を加えたようなバンドで叩いたりもしていたが、表舞台から皆遠ざかっている感じは否めない。

 今年に入り、たまたま彼等のベスト盤を聴いた数日後、ボーカリストのMark Hollisが亡くなったというニュースが流れてきた。殆ど引退状態だったので義理の従兄がTwitterで告知したというのがソースというところが何とも淋しい限りだったが、それでも日本の音楽ニュースサイトでもそれなりに取り上げられ、DURAN DURANのメンバーやCUREのビデオディレクターだった方々がお悔やみを述べていたり、デビュー時以降はまともに日本盤でのリリースもされなかったバンドメンバーの訃報としては大きい扱いだったのが香典代わりになるのだろうか・・・
 
 昨今の若いころ良く聴いていた方の訃報続きの中で、誰が亡くなってもあまり驚く事もなかったが、この方の死はかなり大きいショックを受けたのが不思議だった。20代後半以降に再発見した音楽でここまで熱中したものが他にあまり無かった上に、今でも定期的に聴いていたからだろうか。諸行無常を感じる事が最近増えた・・・f:id:Tanu_LPT:20190326170611j:image

(この文章、1月前にとりかかったのにバタバタしていて、ようやく今日、本腰いれて書き始めた途端今度はSCOTT WALKERの訃報も流れてきた。次回はSCOTT WALKERか?訃報祭りにならない事を祈る)