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LPT annex

whatever LPT consists of

マンプク宮殿3 学食ラーメンとSEX GANG CHILDREN

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  当時通ってた高校から自転車で10分程走らせると地元国立大学のキャンパスへ辿り着けた。
 
親から貰っていたお小遣いは月¥2,500。80年代の国内盤新譜LPの定価は大体¥2,800。再発廉価盤でようやく¥2,000。単純に考えて新譜だと2月で1枚しか買えない。廉価盤でも1枚買ったらその月はキリンメッツグレープフルーツ味もマウンテンデューも(好きだった清涼飲料)ましてや「ほっかほっか亭」のかき揚げ弁当(当時260円)も殆ど我慢しなくてはならない。
 今と比べれば娯楽も情報も自由になるお金もないない尽くしの学生、その上最優先事項は音楽で服やら頭髪等も全く気にしないガキとはいえたまには放課後に買い食い位はしたいし友人付き合いで多少の金は必要。
 なんとかなんないもんかね・・・・と考えても校則でアルバイトは禁止。隠れてやろうものにも街そのものが狭い上に人間の行動範囲も輪にかけて狭い中では即発覚する事態が多発。そんな中で天啓の如く現れたのが貸レコード屋なるものだった。
 今は亡き「黎紅堂 」という都で話題の貸レコード屋が田舎の我が街にも出店する!という情報が学内の音楽好きの連中の中でどれだけ渇望を持って迎らえた事か。開店のその日に授業終了と同時に店内に駆け込んだ。店内には同じ学校の連中もチラホラと見える中、餌箱をチエックして数十分。
 
     「借りたいものが殆ど無い!」
 
 貸レコード屋だって商売。当然回転率の高いタイトルを在庫として選ぶ、人口20万未満の小都市では更に厳選した売れ筋が並ぶのは当たり前。他の連中が嬉々としてVAN HELENやGARY MOORE, RAINBOW,TOTOなんかを借りていく中で私は呆然として「BAUHAUSもCABARET VOLTAIREもPILもない・・・ましてやCAMELやCARAVANなんぞはありゃしない!」と吉幾三の替え歌状のものを呟くばかり。
 
 失意の中、それから暫くして新たな情報が入ってきた。「大学の生協のレコード売り場では貸レコードサービスをやっているらしい。そして貸し出されたレコードは貸し出された回数に応じて値引きされて販売される」つまり¥2,800のレコードが1回350円でレンタルされるとそのレコードは中古盤として¥2,450で売られる。2回借りられれば¥2,100 3回借りられれば¥1,750まで値下げ!8回借りられればタダになるのか?という疑問は残るがそんな話を聞きつけた私は大学生協へ学ランのまま向かった。
 
Sky's Gone Out
 
 レンタルはその大学生のみのサービスで学生証が無いと借りられないが値引きレコードは大学生じゃなくても購入可能という事らしい。私の居た高校は学年360人中半分はその大学に入るという予備校状態だったので良いじゃん貸してくれても!と思ったがまあ仕方ない。そこで餌箱見ると流石大学、変な音楽一杯あるある。
 当時、一部だけだが話題になっていた音楽ジャンルで「ポジティブパンク」略して「ポジパン」というのがあった。「ポジティブ」という単語が当時ネガティブ一直線だった私には馴染めなかったが実際聴いてみるとどこがポジティブなのやら。奇矯なメイクをした野郎がエフェクトかけまくりな伴奏で妙なメロディーを歌うという地方拗らせ系男子の琴線に触れる音だった。それ系の音盤が大量に在庫していたので狂喜乱舞。さて・・・・どれを買おうか・・・代表格だったBAUHAUSというバンドの「THE  SKY’S GONE OUT」というアルバムに白羽の矢を立てたがあんまり借りられてない。「まだ高いな・・・」と思い他も漁ると当時デビューしたばかりで盛り上がってたバンド「SEX GANG CHILDREN」というバンドのアルバムが有った。
 バンド名も凄いしジャケットもなんか意味ありげで気になってたし欲しかったんだよ!と思いレンタル履歴見ると5回位借りられてる!安い!と思い購入。「思ったより安く欲しいレコードが買えた」と気が大きくなった上に腹も減ってたので大学の学食に向かった。そこで食べたラーメンの美味かった事。多分どうという事も無いラーメン。200円代の値段で貧乏学生の空腹を満たす以上の価値はないものだったのだろうが自分の為すべきこと事を為した後の飯は旨いという事をあの時初めて知ったような気がする。
 
 さて、そんな高揚した気持ちで家に帰り針を落とした聴いたアルバム。何度聴いてもつまらない・・・。それまでも一聴して「なんだこれ!つまんねえ」というアルバムはあったが何度も聴くうちに段々良くなってきたものだがこれだけは何度聴いても面白くない!一か月毎日聴いたが全然面白くない!学食のラーメンを美味しく食べた私の気持は無駄になったのか?いや!あの時の俺の高揚感は嘘ではない!というやりきれない想いのまま私は大学入学の為地元を離れSEX GANGは地元へ置き去りに。
 
 数年前、中古CD屋で件のアルバムが300円で売っていた。買ってみた。聴いてみた。
当時よりは楽しく聴けた。なかなか面白かった。
 でも多分それは当時の自分をいたわる気持ちが殆どだったんだろう
「頑張ったな、若いころの私。こういうのを聴いて困惑したのもきっと今の人生に無駄じゃないよ」
Song and Legend

無駄の多さが人生の豊かさなんだと思わせてくれたのならこれも私のフェバリットアルバムなのでしょう。