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マンプク宮殿4 コッペパンとThe Voice of America

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 いつの間にか全国区で知名度があがってしまっていた地元のパン屋「F田パン」。私が高校生の頃は昼飯前、3時限目の終わりくらいに学校に売りに来る新陳代謝全盛期の餓鬼御用達のパン屋だった。
かなり大きなコッペパンの横に切れ目を入れて様々な具を入れて売る。メニュー名は「ジャムバター」「バター」 「チョコレート」「メロン」と甘さと脂マキシマムなメニューばかり。その中で一番人気は「ジャムバター」。3時限目終わり次第すぐ駆けつけなければ購入するのも難しい。教師によっては終業のベルが鳴ってもキリが良いところまで授業を終わらせない御方もいらっしゃる「や・・・教育熱心なのは結構な事。だが!今この瞬間だけは我々の食欲の邪魔をしないで欲しい」という怨嗟のこもった視線を彼は気づいていたのであろうか。
 買えなかった敗残者たちに複数個買いしておいて定価より高い値段で売り小銭稼ぎする輩も出る有様。阿漕な事するよな・・・と横目で冷ややかに見る先には売ってもらった事に本気で感謝している奴がいる。ここ昨今はジャガイモ不足でポテチ欠品、報じられた矢先に買い占めヤフオクやメルカリで1袋500円で売っている連中がいるが、買い占めるやつとそれを買って喜んでいる奴がいる限り人類滅亡までああいう光景は続くのであろう。願わくばあの時パンごときで利ザヤ稼いでた奴が商社などに入っていないことを祈るばかりだ。
 
高校2年になった頃に新メニュー「餡バター」が登場。より甘さと脂気増量で更に売り場が阿鼻叫喚になるんだが、そうはいっても所詮間食のおやつみたいな扱い。高校卒業と共に食べることもなくなり、30半ば位までは忘却の彼方。ある時、妻を連れて帰省した際に近所のスーパーで売っているのを発見。「これこれ。こいつは市内の学校に売りに来てたパンで子供の頃みんな世話になった。ある意味ソウルフードだよな」と妻にひとしきり蘊蓄述べた後、加齢に伴う若さへの郷愁なのか「ジャムバター」と「餡バター」を購入してみた。値段は当時の2倍になっていたがそれでも¥168(税抜)それくらいでちょっとしたノスタルジー味わえるなら良いんじゃない?と。東京へ戻る新幹線内で食べてみると懐かしさ補正で数割増しになってるかもしれないが今でも結構美味しく食べられる。何より驚いたのが妻がえらく気にいってしまった事だ。それからは帰省する毎に機会があれば買うようにしていたが、いつの間にかローカル限定のレトロフード扱い だったものが知名度が上がる一方、東京にもインスパイア店が出来たというニュースを聞き、昨年には店の前に買いに来た車が駐車場に入りきれず道路渋滞を引き起こし問題という記事を見つける羽目になった今、本人達も望んでいないのに上のステージに上げられ困惑してるのでなければ良いが…
 コッペパンにジャンク系の具がたっぷり詰まった食べ物。そんなものと「道路渋滞」という単語が並列する世界は何かが間違えてるような気がして仕方ない。
 
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一番人気のアンバター 1個1メガカロリー相当
 
 さて、日々体に小麦と餡とバターを放り込んで未来の脂肪腹製造に勤しんでいた頃、一部で話題を呼んでいたロックのサブジャンルに「ノイズ/インダストリアル」というのがあった。
THROBBING GRISTLE,SPK,MB,WHITEHOUSE。
日本だと非常階段とかNORDといったバンド群が思いだされる。「思い出される・・ってアンタそんなもん聴いてたの?」ええ・・・聴いてました・・・・乏しい小遣いから捻りだして「ガー!」とか「ジジジジジ・・・・」という音に絶叫やら鼻声でなんかイヤーな感じの事ブツブツ言ってるような音盤を何枚か・・・。 
 日本のレコード会社も海外の大手レーベルとの系列化が進んできた時期で、日本国内独立系のレコード会社はメジャー系アーティストの販売権が無くなり海外の新興独立系マイナーレーベルとの契約を与儀なくされて来た時期、そして今より洋楽が売れていて聴取層も厚かった事。映画、活字、漫画の世界とも横断してマイナー/アンダーグラウンド系の活動が多面的に紹介されていた事。諸々の要素が絡んであの頃はこの種の音楽も日本盤で発売され、片田舎のレコード店でも購入可能になりつつあった。
 
 その中でも早くから紹介され、複数タイトル国内盤で発売、来日公演も行った上そのライブ盤が発売されたのがCABARET VOLTAIRE。日本では略して「キャブス」と呼ばれていた。もうバンド名からしてダダイズム運動の活動拠点からとったという臭さ満点の彼等。彼らのアルバムを初めて購入したのは16歳の誕生日前後。一応今でも最高傑作と言われている「THE VOICE OF AMERICA」だった。発売すぐに買ったわけではなく数年後の購入。ジャケデザインは非常に好み。モノクロームのコラージュ写真に蛍光ピンクでハイライトを入れたデザインは今でも秀逸だと感じる。
 音はというと・・・当時感じたのは「やけに薄口、というかこれ音が安っぽいテクノポップだよな?」薄っすらと背後に不穏な音聞こえたり、ボーカルにキツいイコライザーかけて歪ましたりしてる部分にこちらが望む要素はあるんだが「でも・・・これノイズじゃないよね」と悩みつつ何度も聴いて、その上他の作品も買ったのだからどこか気に入る部分はあったのだろう。今でもCDで買いなおして持っているわけだし。彼等自体は80年代半ばからは大手レーベルに移籍し音も洗練された感じになっていったが、いつまでも「そこはかとなくチープ」な佇まいは変わらなかった。
 
 90年代以降は「テクノのオリジネイター」とか「音響系の元祖」みたいな再評価がなされ、ここ数年でも旧譜の再発が続いている。中古屋に行けば初期音源集がプレミアがついて売られているキャブス。
でも。彼らの個性はあのなんとも言えない安っぽい音の中に見え隠れする侘び寂びみたいな中にこそあったのではないだろうか?
 そういう行間から滲み出てくる灰汁を愛でる時に「元祖」とか「伝説」とか「過激」なんて言葉は要らない。「渋滞」ももっての外。
 
ああ・・・・そういえば彼らの来日公演、会場のディスコに客詰め込めるだけ詰め込んで満員電車より酷い状態だったと当時記事で見た記憶がある。その日の録音でリリースされたライブ盤、帯のコピーが「熱狂の発汗ライブ!」って・・・そりゃ詰め込みすぎなだけでしょうが! 
 
Voice of America