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And Also The Trees / The Klaxon

The Klaxon

 

 活動初~中期の、負の波動バリバリの真っ暗サウンドが原因で、何をやってもゴス扱いされ新機軸を見出せないAATTですが、これは沼地から上がってくるような重い湿気が抜けてきた転換期の作品('93)で、陰影の利いた華やかさと重厚な旋廻感が素晴しい、平常心で楽しめる名作。これ以降はサーフ転び、サントラもどきと迷走が続いており、贔屓目に見ても首を傾げてしまう作品もありますが、洪水でリハ小屋が流されても*負けずに頑張って欲しいバンドの一つです。(独Normal, CD164、輸入盤**)

Aug. 2007

*洪水でリハ小屋が流されても…:2007年7月に英中西部を襲った大洪水で、出身地インクベロウ村近隣の街、ドロイッチにバンドが所有していたライヴリハーサル場(≒ただの小屋)が流され、その後控えていたライヴに多大な影響を及ぼしたミスフォーチュンな一件ですが、小屋が流されても同年末にはバンド円熟期の代表作となった(Listen for)The Rag and Bone Manも無事リリースとなり、結果として実り多き年となりました。

追記 Aug. 2015
日本ではデビューアルバム'And Also The Trees'('84/国内発売'85)と4作目の'Farewell To The Shade'('89/同,'90)しか国内発売されず、90年代以降は殆どメディアに取上げられる機会がなかったのと、配給面でも90年代前半にドイツへ移籍したり、その契約も長続きせず自主制作へシフトして早20年近い歳月が流れてしまったうえ、本人たちも積極的な情報発信を全く行ってこなかった結果、欧州では相応(あくまで分相応)のリスペクトと活動拠点を確保しているものの、ここ日本では「80年代に名前を聞いた、キュアー絡みのネオサイケバンドか何か」以上の存在になるチャンスが巡ってこなかったAATT。そういうわけで、常々彼らのライヴは観たいと思っていましたが、そんな知名度でまさか日本で観れるとは夢にも思っていなかったので、本年5月の来日が発表になった時は天地転倒する程心底驚きました。
'Klaxon'は、過渡期の作品でアルバムとしての知名度は高くないものの、なんといってもこのアルバムには現在の代表曲のひとつで、彼らのドキュメンタリーフィルムのタイトルにもなった'Dialogue'が収録されている一方、アルバム全体の完成度が非常に高く、流れるように無心に聴ける一枚なので、もっと評価が上がっても良さそうなものを、と思っていた矢先、さきの来日でライヴ後バンドにサインを求めに並ぶファンが案外腕に'Klaxon'の、しかもアナログ盤を抱えている人が多かったので、我が耳に狂いなしとさらに評価が高まった次第です。

**CD購入先:And Also The Trees Official 
 上記アルバム発売当時、独Normalに所属していましたが、現在は自主制作のため、他の自主制作系洋楽バンドと同じく一般的なオンラインサイトでは購入しづらくなっており、参考までに公式ウェブサイトのリンクを追記しておきます。