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episode 0608 : Sound leak hunter

「音もれハンター」

 社会人になって18年、最初は通勤電車が嫌でたまらなかったが、40も近くなり、修羅を浄土と変える術が徐々に身についてきたのか、かつてあれほど嫌だったことが楽しみにさえなっている。そのひとつが「音もれハンター」だ。

 車内では、大概どうでもいい音が漏れているのだが、パワー全開で浪曲とか、フルスロットルでマンボとか漏れていると、その日一日得した気分になる。漏らしている人の傍にすり寄り、共に楽しいひと時を過ごす。音楽好きで良かった。普段聴かないジャンルの音がタダで聴けるし、お得感たっぷり。以前、珠算が漏れていた時もあったっけ。

 最近は、ヘッドフォンの性能も、客のマナーも良くなったのか、あからさまに音漏れしている人は激減した。車内環境としては向上したが、もっと迷惑な人たちが増えている気がする。周りの空気を察せず、自分達の世界だけの行為や会話を、不特定多数が共有する、電車という場で展開する人たち。
世の中がオープンになったせいじゃない。他人に対してクローズしている証だ。例えば、音量面でも、今や治外法権と化している子連れ客のほうが、音漏れよりもよほど迷惑行為な気がするけど、どうだろう。
いつか地下鉄のマナーポスターに、1点追加してもらいたい。

 

Aug. 2006

追記 Aug. 2015

だいぶ前ですが、九州の特急列車か何かに私の姉が乗車したところ、子供が大騒ぎしても親が全く注意せず乗客が非常に迷惑をしていたところ、乗り合わせていたヤクザがやおら立ち上がり「…うっせえんだよ!!」と一喝した所、車中の空気がピーンと張りつめ、その後子供が「ふわ…」と声を出しそうになった瞬間、親がその子を小脇に抱えて別車両に走り去って行ったそうで、それ以来こういう場面に出くわす度、電車にはヤクザがいつもいて欲しい、と願うようになりました。