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episode 0709 : Head hairdresser in danger : one

「店長、絶体絶命!(前編)」
 
 最近、友人の紹介で美容院を変えた。担当は店長さんだ。まだ2回目なので
お互い気心が知れる程の付合いではない。「休日はどうしてますか」
「最近どんな映画を観ましたか」など、軽い問答を交わしながら鋏が進んでいく。
私の父が台湾人だという話から、急に「僕ね、初めての海外は台湾だったんですよ」
…この後、思いも寄らぬ店長の壮絶体験を聞かされる事になった。

今から20年前、台湾の著名美容家の招聘により、台北の圓山大飯店で大々的に
開催された美容ショーに参加した店長とその一行は、全行事を無事に終え、
中正国際空港(現・台湾桃園国際空港)に団体バスで到着した。
一行には、着付ショーを担当した60~70代の年配着付師が大勢おり、疲れて動けない、
こんな所もう絶対来ない、散々こき使われた、と関係者、いや日本人として恥かしい位、
文句たらたらでずるずると出発ロビーへと向かっていた。

搭乗前、用を足しておこうと男子トイレに入った店長は、壁一面に腕を組んだ屈強な
男達がずらり並んでいる事に一瞬たじろいだが、初めての外国だし、空港のトイレは
こんなものかと、さほど驚かずに個室へ入ろうとした。しかし、別の個室から出てくる人が、
いわゆる「ホールド・アップ」状態で一人、また一人と、壁の男に連行されていく。
海外のトイレって、そんなに厳しいのか?と、2人目の背中を見たら、カービン銃を
突きつけられている。いくらなんでも、それは…と思いつつも用を足し、ドアを開け、
トイレから出た瞬間、ロビーからパン、パーン!と乾いた銃声が聞こえてきた。
ロビーへと飛び出した店長が目にしたのは、激しい銃撃戦と、銃声と絶叫の中逃げまどう
人々の姿だった。自分のすぐ横を、わき腹を打たれた男が、血しぶきを上げながら
斜めに横切っていく。

…店長の運命やいかに?!

Sep.2007