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episode 0801 : (Don't) come over anytime !

「千客万来」

 昨春引越しを手伝って貰った縁で、隣町に住んでいる主人の後輩が、月をあけずに夕飯を食べに来るようになった。大体、来訪の告知から数時間以内に来る。毎週続く時もある。彼は一女の父で、学生時代のバンド仲間だ。今も時々主人と音を出していて、うちに来ると果てしなく食べる。「うちは、家族みんな食が細いんだ。米5kgが、親子3人1ヶ月でなくなんねぇ」といいながら、ちょっと目を離した隙に、台所で勝手におかわりをしている。

 ある日「奥さんの手料理で、好きなものは何?」と聞いたら、即席麺の銘柄を幾つもあげるので仰天した。土曜出勤の後など、一旦車を家に置いてから、箱買いしている発泡酒を手土産に持ち出してうちまで歩いてくるのだが、帰宅したら妻が娘と袋麺を食べた後、丼を流しで洗っている所に遭遇、自分の夕食は用意されていないのだと話しながら、2回もおかわりしていた。よくみると、主人と争って台所に走っていた。たまたま前日に作っていた牛すじ煮込みの鍋を、彼が帰った後にはもう洗っていた。米の減らない理由が判った気がした。

 元旦に主人と彼の共通の友人が来ることになった。当然彼もやってくる。珍しく「夕食は済ませて行くよ」と連絡があったので、早々とメインのとんしゃぶを始めようとした瞬間現れた。ファミレスで妻と娘にはラーメンを食べさせ、自分は卵スープを飲んできただけなので、まだまだ食べられるよ!と笑顔で席に着いた。年末に鍋の蓋が閉まらないほど作った煮〆が、すかすかになった。3日の朝には鍋を洗い、3が日持たなかった。

 引越してからもうすぐ1年になる。居間という空間の貢献度は高く、不意の来客にも以前ほど慌てなくなったし、来客自体増えた気がする。千客万来の家には福の神がつくという。しかし、それが特定の人物が頻繁にやって来る場合は、いかがなものだろうか。一度、福の神に聞いてみたい。

Jan. 2008

追記 Jul. 2015
後輩はその後平日の夜でも食べに来るようになり「俺はここの長男だから」と公言するようになりました。大概夕飯の準備を始めてから来るので、時には2匹のサンマを3人で食べたり、私のおかずがなくなる事も。「まだ食ってないんだ」と自分の娘を連れてくることもありました。波はありますが、「今日は大丈夫なのね」「今晩来そうな匂いがする」というのが週末交わされる会話のひとつです。