「フレッシャーズ!万歳」
先日広尾に出かけた昼、ナンが食べ放題のインドカレーやに入った。場所柄白人が多く、その店も客の半数は白人だった。その中で、日曜の昼下がりだというのに、全員黒いスーツで髪もびしっとまとめた白人男性4人が、焼きたてのナンを頬張りながら熱心に語り合っていた。年齢的には2人が団塊の世代、残りは20代。話の中心になっているのは若者のほうで、父親ほどの2人は笑顔でもなく異議を唱えるでもなく、真面目に聞いている。よく聞くと、彼らはキリスト教の宣教師で、若者の一人は、どうも最近日本に「赴任」してきたらしく、赴任した教区をどう発展させるかについて、新人らしく自分の考えを次々と披瀝していた。
東京は中国人が多く在住するから、彼らの受け皿となる布教所を増やさねばならない。一口に中国人といっても、台湾人も多くいるからその辺は留意して…と、彼の視点はもっぱら中華系信徒の拡大に向いていて、日本人への布教は念頭にないらしい。折角日本に赴任してきたんだから、日本人にも興味をもって欲しいなあ。話ぐらい、聞かせてよ。
彼はひとしきり熱意を語った後、ようやく話題が日本へ向いてきたが、口を開くやいなや「ウメボーシ、ヴェリィ、サワー!」と、瞬間かなりすっぱい顔をした。他の3人も「うん、うん」と無言で同意していた。日本=梅干で締めるなよ!他に話題はないのか!と思った矢先、それ迄主役が語るに任せていたもう一人の若者が、待ってました!とばかりに「日本ではね、’KO’と発音する言葉は、『小さな子供』って意味もあるんだけど、名前の最後につくと、女性の名前になるんだよ!」
「オーゥ」梅干の時にはなかった感嘆の声が全員からあがった。日本の話題はそこで終わった。
これから彼らは、母国に帰る者、ここ日本で中国人相手に布教する者、それぞれの道をゆくのだろう。来る者去る者、思いは色々だろう。だがしかし、日本に生まれ育った私としては、もうちょっと彼らの中に日本の存在が食い込んで欲しいと思った、そんな食べ放題の午後だった。