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episode 0806 : Unequal society

「格差社会」

 先日、上海から従兄夫婦が両親を見舞いに突如来日した。現在両親は同じ特養に暮らしており、父も母も甥っ子との再会に涙した。私達家族も、親の様子から次はないと分っているので、突然の来訪に心から感謝した。

 従兄は、上海で医療関連のプラントを持っており、本人曰く「儲かって儲かって仕方がない」そうで、今回の来日も、北海道を旅行した帰りに、東京まで足を伸ばしてくれて、帰国までに北海道と東京近郊に、2件家を買うあたりをつけるのだ、と話していた。その羽振りの良い話にも驚いたが、私達3姉妹への手土産が、イタリアのブランド、G社のバッグ3個だったので、普段ブランド物を身につける習慣のない私は、かなり仰天した。
平生、親の介護費用にも事欠き、何かある毎に姉妹で費用分担会議をしながら生き延びている身分からは想像も出来ない羽振りの良さだ。土産は、普段両親の介護に当っている次姉が代表して受取った。

 従兄達が帰国して、ゆっくりバッグを手に取った姉の視界に、おかしな文章が飛び込んできた。品質保証カードのようなものだが、「…水に対しては非常にラリケートてす」

…ラリケート?
…てす?     デリケートの間違いかしら?

ぐいぐいその注意事項に引き込まれていった姉は、濁点やカナの拾いそこないなど序の口、「カーフ」の「カ」が「力(ちから)」になっていたり、「ショップ」が「ツョツつ」だったり、誤字脱字の絨毯爆撃に見舞われ、とどめは「こ質問やニースにお応えしておつますのて店員にお気軽にお問い合たせくたをい」と、どこにも苦情を持っていけない臭をふんぷんと放つ一言で木っ端微塵になったという。

 バッグ自体は、ブランド物に縁のない私が見る分には作りも良く、純粋にバッグだとしたら悪いものではない。しかし、このカード1枚で全くの偽物という保証がついてしまい、もうちょっと校正に予算を費やす事が出来たら、いやそんな事はどうでもいい、本物の名前すら聞いた事のない辺境の労働者達が、日々生きる為に偽バッグを作っているんだなあ、と、折角貰ったけど、使うにはちょっとしんみりしてしまう、巨富者の上海土産なのだった。

Jun. 2008