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episode 0911 : Infected islands

「感染列島」

 10月の半ば過ぎから何となく咳込むようになった。別段体が辛いわけでもなく、熱もないので今大流行している新型及び旧来型インフルエンザではないと思ったが、咳は日に日に酷くなり、10月の最終週からは毎晩発作的に出る激しい咳で目が覚め、何日も眠れない夜が続いた。木曜日、組合の診療所で咳止めをもらい、週明け迄様子を見る様にと言われたが、咳は酷くなる一方で、遂には心配した方々の人垣ができてしまう程の発作を社内で起こし、さすがに週明け迄待てないと、金曜日、藁をもすがる思いで探し出した茅場町の呼吸器内科に転がり込んだ。

 診察では花粉症・ダニ等、アレルギーに関する問診を色々受けたが、最後に「…インコ、飼ってませんか?」

セキセイインコ、飼ってますが、何か?と答えると医師の表情が瞬時に変わり、「何で早くそれを言わないの!インコはね、アレルギー検査で3つも項目があるんだよ!インコの毛、インコの垢、インコの糞!何もアレルギーがないと言ったけど、インコ、調べた事ないんでしょ?今回の咳はね、可能性は3つ!一つ、咳喘息、二つ、百日咳、三つ、オウム病!あとの二つは伝染病だからね!」と、慌てて血液検査の項目に「インコ、インコ、インコ」と打ち込んでいた。

 抗生物質と咳止め、ステロイド吸入で徐々に発作は起こらなくなったが、咳の原因が飼ってるインコだとしたらどうしよう。抗体が出来てしまえば過剰なスキンシップを避ければ飼っても大丈夫との事だったが、検査結果が出るまでインコと私の間には気まずい空気が流れた。その週末は急に友人宅を訪問する用事が出来、咳をこらえて伺った。そして1週間後、診断結果は「百日咳だね。しかも数値が異常に悪い。あまりに悪いんで今再検査中だよ。インコは全て陰性!良かったねー」良かったには良かったが、百日咳も立派な感染症。症状は大分治まったとはいえ、今年一杯はステロイド吸入を2種類続けてようやく完治するという。しかも抗生物質の投与開始後、抗体が出来上がる迄の約2週間は感染力が強いとの事。…2週間?先日訪問した友人に移していないか心配になり連絡してみると、幸い友人自体は元気だったが、下の子(中3)が新型インフルでお休み中の上、彼のクラスはその日から学級閉鎖だという。それだけではない。上の子(高2)は前日まで京都へ修学旅行だったが、生徒が次々に新型インフルを発症し途中帰還、彼女のクラスで3泊4日の旅程を全うできたのは40人中22人だけだったそうだ。仲間がどんどん減っていく。次に消えるのは誰だ。遂には担任教師も発症し、楽しいはずの修学旅行が恐怖のサバイバルゲームと化したそうだ。お互い様「お大事に」としか言い様がなかった。再検査でも、非常に強い百日咳と断定された。

 百日咳に新型インフル、あっちもこっちも、どいつもこいつも感染症。今日はおまえか、明日は俺か。皆さん、咳が出たら我慢せず、すぐ病院へ行って下さい。

Nov. 2009
 

追記 May 2016

百日咳を患って以来、喉喘息を患う事が多くなり、遂には気管支喘息の発病まで至りました。喘息というと小児喘息のイメージが強く、大人、それもこんな中年になってから発病するものとは夢にも思っていませんでした。こんな場でいうのもなんですが、咳喘息までならまだなんとかなりますが、気管支喘息は投薬でコントロール可能とはいえ、完治しない病気です。本当に咳は侮れませんので、ご自身及び身の回りの方に何週間も咳をしている方がいらっしゃったら、たかが咳と決して市販薬などでごまかさず、信頼できる呼吸器内科へすぐ受診するよう、心よりお勧めします。