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episode 1101 : Snow on the New Town

「ニュータウンの雪」

 大晦日から元旦にかけて全国的に大雪となり、帰省した盛岡もご他聞に漏れず大晦日の早朝から元旦の未明まで、降雪地帯としても近年稀に見る積雪となった。主人の実家は盛岡市内のニュータウン第一期区画で、初期入居から40年が経ち、急激に高齢化が進んでいる地域だ。住民の半数が60歳以上、ここ数年は荒廃する一方で空き家や更地も増え、入居者の子世代がUターンしたくても不況で市内に職がないのも荒廃化の一因で、大きな家に独居の老人も多数いる。行政の除雪予算もすぐ底を尽きるので、真っ先に打捨てられるのは労働力が少ないニュータウンの除雪作業で、ぐちゃぐちゃになった灰色の雪塊に白い雪が重なっていく。

 そんな状態で元旦は、真綿のように積った雪をまず何とかせねば、と餅が3個も入った雑煮も程々に、朝10時から2時間かけて主人と雪かきをした。一生懸命慣れない雪かきをする中ふと気づいたら、雪かきをしているのは専ら私達と姑で、舅は外にも出てこない。話を聞くとこの冬はずっとそうで、雪かきどころか家事一切を手伝わず、外出もせずにソファで寝ているという。地方ならではの大きな家の家事を彼女一人でまわすのは大変で、姑は悲鳴に近い不満を漏らしていたが、リタイヤ後は寝てばかりで足腰が弱り、認知症も進んだ自分の父の晩年を彷彿し、不満だけに留まらない一抹の不安を覚えて帰京した。

 雪はその後も周期的に降り、降雪予報が出ると戦々恐々とした。せめて少しでも楽に雪かきして欲しいと、実家周辺では軒並み売切れのスノーダンプを八戸に住む主人の妹と打合せ通販で送った。その際「お父さん、ずっとこの調子なら私達も考えなくちゃね…」とさほど他意なく話したら、大きく受止めた彼女は姑に「お父さんの事、ちょっと考えるって言ってたよ」と電話してしまった。数日後、姑から妹宛に喜びの電話がかかってきた。義妹の電話を切った後、横のソファでごろごろしている舅に向って、雷鳴一発轟かせてやったのだという。

「いつまでそんな調子なの、さっちゃんが夏頃施設に入れるって言ってたわよ!!」

「さっちゃん」という実名と「夏頃」という具体的な時期を突きつけられた舅は、瞬間ソファから飛び上がり、やおら上着を着て外に飛び出し、雪かきを始めたという。そして、終わったら姑にコーヒーを淹れてくれたそうで、それ以来しっかり家事を手伝っているそうだ。結果オーライで姑は大喜び、妹はバカ受け、主人はやや受けだったが、皆さん、そういう冗談は笑えないから是非やめて下さい。

Jan. 2011