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Humble Mumbleその31:どろろ(2019 Version, Japan)

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父はテレビが大好きだった。好きだったというより、仕事人間で、趣味も何もなかったので家にいるときはほぼ、テレビ漬けだった。
子供の頃、当然テレビは一家に1台が普通だった。ない家庭だってあったほどだ。自分の部屋にテレビを置けたのはうんと後だったと思う。そんなテレビ漬けの父が主導権を握っているお茶の間で、一体どうやって見れてたのか、どうしても思い出せないのだが、懐かしいよな~と思い出すアニメのひとつ、「どろろ」。50年ぶりの完全リメイク版で今年から夜10時台に放映されていた。

オリジナルの「どろろ」は1969年放映で、カルピス漫画劇場初のアニメで19時半~20時の放映だったという。もうカラーテレビが普及していたものの、あえてモノクロだった。私の中でも「どろろ」と言えば「モノクロ」の記憶が。「カムイ外伝」も18時半から同じチャンネルでどろろと同時スタートして、声優さん(兼俳優)の中田浩二さんの声がセクシーで子供なりに大好きだった。「あしたのジョー」はあおい輝彦さんだったな。そう、今でも不思議なんだが、日曜のゴールデンタイムにどうしてアニメが見れたのか...

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カムイ外伝とどろろは1969年4月、春の新番組として同日スタートしたが、カムイ外伝は低視聴率のため2クールで打切り、どろろも後半話をより子供向けに修正、同日最終回を迎えた。10月からはこの半年の世界観全否定なお茶の間の人気者に取って代わられる

しかし、お茶の間が血の日曜日だった半年間が過ぎ、カムイ外伝の後番組は「サザエさん」、どろろの後は「ムーミン」だった。これも全部見れた記憶がある。出張が多い父だったので、不在の時に堪能したとしか思えない。「サザエさん」は父も見ていた。前後に「笑点」もあったかな。テレビが故障した時なんか、父は発狂しそうだった。即日秋葉原に買いに行ったのもよく覚えてる。テレビの音がしないお茶の間にじっと座ってる父は喪に服してるようで近寄りがたかった。 

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今年になってある時から、タヌが「録画してあるんだけどさ、もう、忙しくて忙しくて見るヒマもないんだよね。でもね、何話ではこうで、何話ではこうなんだよ!」と、やけに熱く語り続けるアニメ、「どろろ」。LINEで2行くらいふると、100行(イメージ)くらい返事がくる。
「バーフバリ」の時のようにミイラ取りがミイラになってしまった。なんとなく敬遠していたAmazonプライムに加入し、1クール一気に見てしまった!室町時代の話で(それも知らなかった!カムイ外伝は江戸時代だって!ちなみにあしたのジョーは戦後の話!)、領主が土地の飢饉や疫病、作物不作を回避するために、地獄堂に祀ってある鬼神たちに「我が領土の繁栄を約束してくれるなら、何でもくれてやる!返答やいかに!」と上から目線で約定を交わした結果、生まれたばかりの長男の体のあちこちが鬼神に奪われ、肉の塊となった赤子をただただ悲しむ母上、Deal成立!と大喜びする父親!
産婆に任せて死んでもいい、また産めばいいと放置されたものの、心に傷を負う医術の覚えがあるおじさんに拾われ生き延びる。鬼神をひとつ倒すたびに体の一部が戻ってくるという、皆さんご存知の手塚治虫巨匠の未完の名作ですが、オリジナルではオヤジっぽい百鬼丸も本作では哀愁を帯びた素敵な青年に描かれている。最初は声も出ず台詞がなく、絶叫シーンとか出てくるようになると、叫び声の末尾がなんか濁って汚いのだが「うまく発声できない時期のセリフと絶叫でオーディション受かったそうだよ!」とタヌが喜々と説明してくれる。

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百鬼丸。オリジナル版では鬼神に喰われて義眼のはずだが凄い眼力。作中でもベラベラ喋り、叫び声は超音波系。2019年版百鬼丸は途中で声帯を取り戻し喋れるようになっても非常に口数が少なく、多分台詞より叫んでるほうが多かった。決め台詞は「おっかちゃん」

前半12話はどんどん、色んな鬼神を倒していって、色んなキャラも出てきて、その時代の風習や神仏を使いものにする人間の身勝手さや、武士の傲慢さ、貧しいものの悲しさなど、時代考証に添ってて「だよな~」「そうだったんだろうな~」と勉強になった。百鬼丸も村人もみんなふんどしなのも微笑ましかった。後半はほぼパーツを取り戻したものの、あと2つ、かなりの血を流してしまったため、自分自身も鬼神になってしまいそう??感を漂わせながらも、自分を見捨てた家族の領土へと向かっていく。
ここで一番可哀想なのが、1歳違いの弟、多宝丸。両親のことも領土のことも誰よりも心にかけてるのに、どこまでいっても「次男」は「次男」。超大ヒットしたアメリカのテレビドラマ、Game of Thrones(ゲースロ:いつか書きます)でも、いかに嫡男がmatterか、庶子、婚外子に至ってはBastard(バスタード!ですよ、バスタード!)で、本当に恥とされるのに、多宝丸は正しい血筋でありながらも、鬼神にさえ相手にされない!
最期、燃え盛る城の中、図らずも兄弟対決になり、刀を交わしながら城中を駆け巡るシーンでも「ここは私の部屋だ!あの机も父上に貰った!馬もだ!」とマジ切れしながらお部屋紹介をするところがもっと悲しい。予算の関係か、作画タッチにとてもムラがあり、構成も食事シーンがメインと???な回もあったが、美しい描写の回を見ると、「彼女のひとりでもつけてやりたかった..」と感情移入中の私のゴーストが囁いた。 

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6月で本放送が終了した2019年版どろろ。5月には前半12話(画像左)、8月には後半12話(同右)を収めたブルーレイも発売(画像はAmazon.co.jpより)。ちなみにハン1さんの感想では一切登場しませんが、上のジャケ画に登場する子供は、百鬼丸に助けられ共に旅をするこのお話のヒロインで、作品の題名にもなっているどろろです。鬼神になりかかる百鬼丸を人に留めおく大事な存在で、断じてふんどしより記憶に残らない主人公ではなかったですが、他意はないにせよ、ハン1さんがどの辺に注力して視聴していたかよくわかります

TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 上巻

TVアニメ「どろろ」Blu-ray BOX 下巻

今は外出中でもスマホでアニメや映画が見れてしまう時代だが、あの作品が登場した時の自分、その時代に何があったかとか、振り返ってみると色々フラッシュバックしますね!
1969年、ハン1,12歳。タヌ2歳。Show must go on中!  

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ハン1渾身のトリビュートイラスト。ハンブルマンブルでは昨年より話中の一コマをイラストでお届けしていますが、アニメは初。もうお兄ちゃんとかお姉ちゃんにドラえもんの似顔絵描いてもらった3歳児の気分です