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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 10 プリシラ

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無意識だと思うが、私は案外ゲイものに寛容だ。選んで観ているわけではないが、偶然当たる確率が結構高い。しかし、タイで念願のオカマ・ショーが見れ、タイ旅行の経験のある友人に喜んで話すと、「うちの主人はあの中には絶対本物の女性が混ざってるんだって本気で言うの!」と言うし、他の友達の旦那にバンコクのショッピング・モールでも女装してかき氷売ってる男の子がいた!と確信して話すと、「そういう骨格の女の子もいますよ!」と譲らない。まあ、いいんだ、どっちでも。でも女のカンてのがあるんですよ!

 

「プリシラ」は女のカンどころか、世間がどう言おうと、私の生きる道はドラッグ・クイーン!と決めた3人がそれぞれの問題を抱えながらも、広大なオーストラリアの砂漠を「プリシラ」号に乗り、ある事情から北部でのリゾートショーに向かう、ロード・ムービーだ。この3人のキャスティングが信じられない。実は昔結婚していて、子供までいるミッチに、あの「マトリックス」で「ミスター・アンダ~ソ~ン!」と言ってキアヌ・リーブスをしつこく追いかけ回すサングラスのエージェント・スミスのヒューゴ・ウィービング!

本当に性転換手術までしてしまっている、年配の大ベテランに「コレクター」のテレンス・スタンプ様!わがままでやんちゃな、筋肉ムキムキの、一番ドラッグ・クイーンらしい金持ちのボンボン「フェリシア」にガイ・ピアース!この人、「英国王のスピーチ」で王座を捨てて人妻を選んだ王様のお兄さんとかも演じてて、その落差に仰天しました。

何もない砂漠をひたすら運転交代で走る。だいたいゲイの口喧嘩は煩くて下品になる。その中でも品格を保っているテレンス様も、通称「バーナデット」で生きているが、本名の「ラルフ」と呼ばれると烈火の如く怒り、男同士の喧嘩になってしまう。途中下車した見知らぬ田舎町。都会ではタフなつもりだったが、「おまえらに飲ませる酒はない!」「Aids Fucker Go Home!」とバスに落書きされたり、あからさまな差別を受けていく。ついでに立ち寄った店で、どんなに綺麗に女装して(デコ盛りどころじゃありません!)、ノリノリのディスコ・ナンバーで歌って(クチパク)踊っても、お股にピンポン玉を潜ませては後ろ向きに観客に向かって飛ばす半裸の女性のパフォーマンスにはかなわない。冒頭に出てきた友達のご主人様も後者の方がお好きでしょう。

そんな中でも昔、バーナデットが所属していたLes Girlsの大ファンだったという初老のボブだけが「彼女」たちを真摯に受け入れてくれ、車の修理など手伝いながら同行することになる。若い恋人を失ったばかりのバーナデットが徐々にボブに恋していく様子をテレンス様がきめ細やかに演じていて感動する。あの素敵な俳優さんが本当の女性に見える瞬間があるんです。3人とも凄いけど、奇抜な衣装を着て一生懸命テレンス様も踊るんです。いつも二人よりキレがなく、テンポがズレてるところも必見です。

選曲もよく、ああ~、やんなっちゃった~って時に見ると、絶対元気が出る、大好きな映画です!

 

道中暇つぶしに、真っ赤な凧にくくりつけて飛ばしたダッチ・ワイフが、エンディング・ロールの後、流れ流れて中国の寺とおぼしき所に着地して幕です(笑)

 

プリシラ [DVD]