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ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 6 お父ちゃんの初七日 Seven Days in Heaven:父後七日

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台湾の葬式は変わっている。まあ、アジアはどこもそうだと思う。あっちから見たら日本の葬式はかなり楽な「手抜き」に見えるらしいが。

ハーフなもので、台湾の葬儀には数回呼ばれた。日本のように亡くなった後1週間以内にはすべて終わってるとか、そういうんじゃない。松竹梅、鶴亀狸とあるのだが、父の一族は偉い人が多く本葬は1か月後なんてザラだった。私たちはいつも最後のファイナル・セレモニーに呼ばれるわけだが、その1日だけでもすごい労力と装飾が見てとれた。

親が亡くなった場合、子供たちは独特な装束を身につける。男女違う。従妹とか姪になると、序列別にまた違うものを被ったり腕に巻いたりする。仏教ではなく、道教と何か混ざった独特の雰囲気で、立ったり座ったり、立ったり座ったり、拝んだり、拝んだり、司会者の掛け声に合わせて、皆動く動く。クライマックスになると、やっぱり、なんか、プカプカドンドンの楽隊みたいのが出てくる。祭壇には各種果物、お菓子、飲み物、豚の頭など飾ってある。

日本語のわかる年配の親戚が「殺生するな!」とお供えを見て憤慨していたので、豚の頭は限りなくオプションなのかもしれない。笑顔なんです、豚さん。

参列者の最後は地元の国会議員だったりして、故人が偉ければ偉いほど、それは顕著に現れ、垂れ幕なんかにも議員さんの名前が書かれていた。去年末亡くなった最年長の従姉(83)の葬儀では、献花が全部胡蝶蘭で豪華だった。日本で言うところの最後の精進振る舞いのお食事も、円卓で腰が抜けるほどの御馳走三昧で、トリを飾る上海ガニのおこわをドギー・パックにしてくれ姉妹でこっそり日本に持って帰った。

 

たまたま見つけたこの台湾映画は、台湾南部の田舎町、彰化県田中での、ランクでいったら「ツルカメタヌキ」の「タヌ」くらいのランクだろうか。台北の外資系で働いてる長女、地元の夜市で働いてる弟の父親が急死し、その葬儀を通しての慌ただしさと悲喜こもごもをベタベタに描いている。変な恰好の導師の指示に従って、姉弟が言われるままにふり回されるように父を弔っていく。日時なども風水で決める。縁起もかつぐ。盛り上げ方などは地域と予算によっても様々だとは思うが、この映画ではかなり庶民的な台湾の葬儀を「はああ~」と見ることができる。やっぱり地元の議員さんも売名行為に来る。

いつも煙草をふかしていたお父ちゃん。夜市でエッチな下着を売ったり、カラオケで熱唱したり、お父ちゃんの思い出は案外下品だがリアルだ。「故人の好きだったものを」と導師に言われ、弟が慌ててヌード雑誌を取りにいき棺桶に入れたりする。

それでもLife Goes On.何がなんだかわからないまま、葬儀後姉はさらに上級の外資会社に転職し、香港や日本など飛び回るようになる。慌ただしく過ぎていく日常。葬儀があったなんて嘘みたいに。でも、空港で移動中、いつも父親が吸っていた煙草のパッケージがふと目に入ると、姉はいつまでも泣き続ける。

台湾語はわからないので英語字幕で見ました。この映画、父と一緒に見てみたかったな。

お父ちゃんの初七日 (父後七日) 台湾映画OST (台湾盤)