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マンプク宮殿25 Music from the Death Factory

 

 中学生時分、購読していた音楽雑誌やFM雑誌(死語ですね。昔はFM放送を録音する「エアチエック」なるものが盛んだったのでFM局の番組表と軽めの音楽&オーディオ記事を載せた廉価な雑誌があったのです。2000年代入る位にはほぼ絶滅しました)で「インダストリアルミュージック」「ノイズミュージック」なる海外の動きが紹介されるようになった。代表的なバンドとしてあげられていたのが「THROBBING GRISTLE」。
デビッドボウイが興味を持っているとか、YMOが注目しているとかの謳い文句に惹かれ、猛烈に気になったがその当時国内盤は未発売。怪しげなお姉ちゃん(副業でヌードモデルもやっていたので、乳放り出し写真なんかが音楽誌に出ていたりしました)と違う意味で怪しげ(猟奇殺人でも起こしそうな雰囲気)な背の低い兄ちゃん+高校物理部とかに居そうな中途半端に長髪な地味男+短髪ゲイムードばりばりのオッサン(後にイギリスで有名なデザインチーム「ヒプノシス」のメンバーだった事を知りました)のアーティスト写真や彼等のデザイン(自分たちのレーベルのロゴがアウシュビッツ、ビルケナウ収容所の写真とか、ジャケ表1がイギリスの自殺名所でメンバーが微笑んでいる写真)、スローガン「MUSIC FROM THE DEATH FACTORY」とか「INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE」等に猛烈に煽られながら想像を逞しくしていた。

 

20 Jazz Funk Greats [帯解説・歌詞対訳 / 2CD / HQCD(高音質CD)仕様 / 紙ジャケ仕様 / 国内盤] (TRCP220/221)

 やや時が過ぎてからPASS RECORDというレーベルから日本盤発売。前述した自殺現場写真ジャケのアルバム、「20 JAZZ FUNK GREATS」活動時に出たスタジオアルバムとしては最後の作品。早速購入して聴いてみたのだが・・・ノイズというので想像していたのとは少し違う。貧相なテクノ?TANGERINE DREAMの簡素なパンク版?という感じで一聴しただけではピンと来なかった。が、何度か聴いていると猛烈にイヤーな暗い気分になる事だけが判った。だからと言って聴かなくなるわけではなくまた聴いてしまう。で、又嫌な気分になる。嫌な気分になりたい時には最高!って何を言っているのか自分でも混乱するが、学校から不愉快な気分で帰って来た時など良く聴いていた。不機嫌な時にKISSとかCHEAP TRICKなんか聴くとより不機嫌になるし。
その後、地元輸入盤屋に入荷したライブカセット「BEYOND JAZZ FUNK」、最終作品のスタジオライブ盤「HEATHERN EARTH」(これが一番好きな作品)を購入したりしたが、彼等は解散後、山のようなライブ盤やスタジオ未発表作品、出所が怪しいBOXセット等、とてもフォローしきれないリリースに辟易したのと、解散後の各メンバーの活動が全く興味持てなかった為、いつしか全く聴かなくなった。

 それから幾星霜。2004年に再結成したという情報が流れてきた。ライブをやったり新作を出したりしていたのに相変わらず興味は持てなかったが、何かの機会に新しいアーティスト写真を見てみると、怪しい男は怪しい(妖しいでは無い)女になっていた・・・いつの間にか彼は性転換をしていた。他のメンバーは順当に年齢を重ねてオジサン、オバサンになっているだけなので彼の周りだけ異空間のようになっている。私が知らない間に彼に何が起こったのか?まあ何が起こっていようと不思議では無い感じの人だったから仕方ないのか・・・

Heathen Earth [解説・紙ジャケット / HQCD(高音質CD)仕様 / 2CD / 国内盤] (TRCP231/232)

更に数年経ち、その男→女(面倒くさいので以後ジェネシス君と呼ぶ)が突然意味不明な声明を出しバンドから離脱したというニュースが。ジェネシス君無き後、残りのメンバーで既に決まっていたツアーを続けとりあえず活動終了。それ以降聞こえてくる話はジェネシス君体調崩し生命の危機、とかゲイっぽいメンバーの方は実際ゲイで恋人が不幸な死を遂げた後、タイに渡り客死とか何とも暗い気分になるエピソードばかり。

アート セックス ミュージック (ele-king books)

そして昨年、メンバー紅一点(コージーというお名前)の方が自伝を出版、邦訳も出たのでかなりのボリュームだが読んでみた。出て来る出て来るジェネシス君の酷い話。まあ一方の見方のみで書かれているので全部そのまま受け止めるのは危険だが、ジェネシス君ならやりかねんと思わされてしまうのは負の人徳なのか。彼女は最初ジェネシス君と付き合っていて、後に別メンバー物理部系兄ちゃんに乗り換えたのだがどうも最初の解散の原因はそれらしい。ありがちな紅一点メンバーが居るバンドの解散劇。解散の際、関係各所に送られたメッセージカードには「MISSION IS TERMINATED」とだけ書かれていたらしい。くー!格好良いねえ!内情知らなければの話ですが。

やっている音楽はやたらコンセプチュアルなのだが、それをやっている人間達はドロドロの愛憎劇の中に居たというのは興味深い話なのですが、その本を読了した後、レコードを再度聴いてみた。印象変わるかな?と思ったが何も変わりません。だが同時代に同じジャンルと見なされていた他のバンド、CABARET VOLTAIREやSPK, 23SKIDOOなんかは時代補正込で聴かないと今はキツいけど、彼等は相変わらず中学~高校時代聴いていたのと同じ気分に放り込まれる、というのは凄い事なのだろうか。

 

Force It (2007 Remaster)

※余談ですが本を読んで知った事実、UFOの「FORCE IT」というアルバムのジャケット。お風呂用品展示場みたいな空間で男女がくんずほぐれつしている写真なのだが、この2人はジェネシス君とコージー姉さんだったという事、良く見れば確かにそうだ。デザインはヒプノシスだからやはりメンバー絡みの仕事だったのだろう。今更知っても一文の得にもなりませんが。