LPT annex

whatever LPT consists of

Humble Mumbleその25:「婚約者の友人」(FRANTZ 2017・仏独)

私はなんとなくフランスが苦手だ。それなのに大学の第二外国語はフランス語を専攻してしまい、どうやって乗り切ったか全く記憶がない。フランス自体行きたいと思ったこともないし、今の今までかすったこともなく意外がられることもある。縁がないんでしょうね~。フランス映画もなんか、あの発音とコンセプトが苦手で敢えて見ようとはしなかった。だが、数年前にファッション界の巨匠イヴ・サンローランを、まるで生き写しのように演じているピエール・ニネという青年(当時24くらいか?)の殺気さえ感じるキレッキレッ感には結構打ちのめされた。

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ピエール・ニネ扮するイヴ・サンローラン。私はファッション史に疎く、作品中暗闇で大汗かきながらオカマ掘られるシーンとか多発して、お恥ずかしながら映画観るまでサンローランがどういう人か全く知らなかったので、かなり吹っ飛びました。映画って予備知識なしで観る方が破壊力強いですね(タヌ談)

その彼が「婚約者の友人」という最新作に出ているという。「ああ~、知ってる知ってる、なんか、婚約者を友達が殺しちゃうって映画でしょ!」と、あっけなくタヌにネタバレされて、なんだ、そうなのかい!で、そのまま見ないでおいた。

結果、もっと早く見てればよかった!婚約者がからむ、何かベタベタのコマンタレヴゥ~な映画なのかと勝手に思っていたが、フランス語とドイツ語が混ざった、時代背景を忠実にモノクロとカラー映像で交互に映し出す、非常に美しい切ない名作だった。

婚約者の友人 [Blu-ray]

1919年、第一次世界大戦後、多くの命が失われていた。当時の敗戦国ドイツ。「祖国のために戦え!」と息子を戦地に送り出したものの、大きな代償に苦しむ夫婦、その息子の婚約者アンナは悲しみに浸りながら戦後の日々を送っていた。亡骸も埋まっていない墓地に毎日のように墓参りに行くアンナ。秋には結婚するはずだったのに...

すると見知らぬ男が墓前で泣いているではないか...昨日も花をたむけてくれたのはあの人?

一目で「フランス人」と分かるのも日本人には不思議なものだなと思った。亡くなったフランツ(原題は彼の名前)も、まんま「ドイツ人」なのだ。戦前はフランスが大好きで一人で留学もしていたフランツだから、その時の友達が墓参りに来てくれたのね?もう戦争も終わったし...と、美しい誤解から話は進んでいく。

最初はフランス人なんか!と拒絶していた父親も、ある日現れた「婚約者の友人」アドリアンから生前の息子の話を聞かされるうち、まるで息子が帰ってきたかのように、生き生きとし始め、反フランス派の仲間の前で彼をかばうまでになる。アドリアンが語るフランツとの思い出シーンが急にカラーになるのも胸をうつ。

しかし、それがすべて「芝居」だと解ってしまう。アンナと見ている私達だけに。そこからが残酷だ。戦場で殺るか殺られるか選択肢のない状況で、目の前に敵国兵がいたら誰でも撃つだろう。でも殺る側にも殺られる側にも家族がいて、今まで生きてきた人生があり、これからの未来だってあるのだから。

忽然と姿を消したアドリアンを探しに、今度はアンナがフランスまで彼を探しにいく...勝戦国とはいえ、車中から見える荒れ果てた廃墟。戦争の惨さ。フランスに入れば「このドイツ人が」と途端に形勢は逆転する。どうにもならない運命に翻弄されながら、悲しい悲しい結末に向かって。

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マネ「自殺」

アドリアンが苦し紛れに語ったフランツとの嘘の思い出の中に、印象派マネの作品「自殺」が重要な鍵として出てくる。フランツの好きな作品だったと。エンディングはカラーに転換されたこの絵のドアップだ。決して綺麗な絵ではない。でも、自殺してでも生まれ変わって新しい人生を生きていってほしい、そんな無言のメッセージを感じました。そして、なぜか、常にピエール・ニネの顔が猟犬ボルゾイと重なり、タヌに検索してもらい、妙に納得しました。いい映画です。ぜひ。

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ボルゾイ 四肢が細長く、仔犬はホント折れそうです


 

 

マンプク宮殿21 とんかつ村とTrash

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 私の通っていたマスプロ私立大は、80年代の大学キャンパス郊外移転が相次いだ時期に、八王子市と橋本市の境に一部学部を移転させた。私はそこに移転2年目で入学したのだが、3,4年生はそのまま元の場所に残ったので、無駄に広い学内に2学部だけの移転で1.2年生しか居ない為、非常に閑散とした中に放り込まれた。図書館も棚に空きが目立ち、購買部も何とも淋しい品揃え。高校時代の友人が多摩動物公園近くの大学に通っていたので一度遊びに行ったが、そちらは何もかも段違いの充実振りで、余りの環境の違いに我が身を呪ったものだ。昨年話題を独占したKK学園獣医学部開学後の惨状を見聞きすると、昔の自分が居た環境を思い出す程。
 本校市ヶ谷キャンパスでは学生会館というものがあり、そこがサークルや学生組織の活動場所になっていたが、完全学生自主運営という名の元、新左翼系運動の拠点になり大学当局が対応に苦慮した事もあったのか、新キャンパスは学生のたまり場となる場所を意図的に排除したような作りになっていた。サークルというものも殆ど無し。
上京したらバンドでも組めれば良いなと思っていたが、上京組の友人にはその手の嗜好の奴は居ない。そして学内でもそういう知り合いは絶無。そして最大の問題として、高校時からギターは持っていたが、サウンドホールにワイヤレスマイク放り込んで盛大なハウリングと短波ラジオをコラージュ、ハサミを弦に押し当てて謎スライドギター、フレッドフリスごっこと名付けたテーブルにギター置いて弦に豆や磁石を放り投げる、真面目に楽器としての練習を怠っていたので、そもそも人と合奏出来る技術が無い。これが最大の問題なのは自覚していたがどうにもならず。ならばきちんとギターを練習すれば良いのに、何故かベースを購入して真面目に教本やコピー譜を使い、自宅練習に励んでいた。あても無いのに・・・。
 僥倖というのか、同じゼミの奴から、彼の友人がバンドを組んでいてメンバーを探している、で、あんたに会いたがっているという話が来てそのバンドに参加。ギターをやってほしいというので実家からギターを送ってもらい、殆どまともに弾けないながらギタリストとして復帰した。
 練習場所は件の学生会館内、バンド自体が市ヶ谷のサークルに所属しているので、私もそこに所属してほしいとの事でサークルにも参加させていただく。サークルが持っている部屋がリハスタとなっており、そこを週一回の部会で取っていくシステムなのだが、私の入ったバンドは殆ど競合も無く毎回決まった時間を取れていた。日曜の朝、誰も取らない時間帯。

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一般的なメンチカツ定食(写真:小川港魚河岸食堂HPより)

 学生なんぞ、週末は昼位まで寝ている時代だったが、メンバー皆八王子、蒲田、渋谷(これは近いが)から殆ど遅刻も無く市ヶ谷までやってくる。私も最初は西八王子から、1年後には京王線千歳烏山駅と大分近くになったが、日曜朝9時の閑散とした学内まで良く通ったものだ。
 リハが終了するのは昼、今なら昼だろうがなんだろうが飲める場所を探すところだが、当時は飲酒の習慣が無く、他のメンバーもそうだったのか(思い出せばメンバー全員で飲み屋へ入ったという事は一度も無かったような)安く食べられる飯屋に行っていた。神楽坂入口あたりの地下にある「とんかつ村」という店。今はもう無い店だが、調べてみると千葉が本社で神楽坂以外では神保町にお店があったらしい。メニューは「村」だけに「村長セット」とか「村の三役セット」とか「村長セット」「青年団セット」とかあった記憶が、恐らく村長はヒレカツ、三役がロースカツだったのか?判らない、食べた事が無い。いつも頼むのは「青年団セット」メンチカツだった。リハ後に食べるこれは、何かとても美味しかった記憶がある。今食べて美味しいと思うかどうかは判らないが、気のおけない仲間と共通の目的に取り組んだ後に食卓を囲むというのは、それだけで若い時分には最高の調味料なのかも、と柄にも無く感じたりする。学生の頃食べた貧しい食事に郷愁を感ずる事はあれど、もう一度食べたいと思う事は無いが、青年団セットはもう一度食べてみたいな、と思う事がある。無理だけど。

 当時、どこかへ移動するときにポータブルカセットプレイヤーで良く聴いていたのがTHE STALINの1stアルバム「TRASH」。新左翼の拠点でもある学館に向かう時に「革命的日常」豚喰った後に帰宅する時は「解剖室」朝一の授業出る為に空腹を抱えて登校する時は「メシ喰わせろ!」とまあ見事なBGMだ。このアルバム、トータルプレス枚数が3.000枚程度だったらしく即完売。権利関係が複雑なのか、一度も再発された事が無い。私もレコードは持ってなく、友人からダビングされたカセットを擦りきれそうになるまで聴いていた。後に不正コピーのCDが出たり、B面のライブ録音は同じライブの会場録り別録音がBOXセットに収録されたりしたが、このレコードは機会があれば当時の本物を手元に置きたいと今でも思っている。凄まじく高額になっているのでこれも無理だが。

飢餓々々帰郷(DVD付)
飢餓々々帰郷/遠藤ミチロウ(DVD付)
これにTRASHのライブと同じ時の客席録音ライブが入っている

 

 そういえばこのレコードのライブ部分、収録会場は私たちがリハで使っていた学館のホールだった。そして数年前知ったのだが、ジャケを描いた宮西計三氏は今私の故郷、盛岡市でワインバーをやっている。今年時間があったら訪ねようと思ったが、夏は時間が取れず断念。来年は行けるだろうか?無理になる前に実現させなくては。

 

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Trash オリジナル盤ジャケット。正規にCD化されていないため、Amazonからのリンク画像ではありません





 

Humble Mumble その24:「ケス」(KES 1969 UK by Ken Loach)

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私の英語は非常にいい加減である。中学の時は英語が大嫌いで、長じて高校2年で音楽を通して歌詞やアーティストの記事の意味が知りたくなり開眼、独学で辞書を引き引き、米軍放送を聴きつつ耳を慣らしたものの、時すでに遅し。Queenと漫画にうつつを抜かし、浪人決定!当時クラスで浪人した女子は私を含め2名だった。ロックを聴いてるのも男子2名と私だけだった。やっと入れた大学も滑り止めの法学部"(-""-)"。「阿呆学部」と、よく父に揶揄された。
そんな私が巡り巡って、経費削減のため、昔、妹のコネでUKデスメタルバンドの同行通訳(私に頼むなんてスッゲー、いい加減!!!)をした事があった。メンバーは全員入れ墨、ロンゲで恐ろしかったがマネージャーが苦労人の敏腕紳士で、日本人(sort of!)は若く見える事もあり、ペットのように可愛がってくれた。「君の英語はケンジントン訛りがあるね。どこで勉強したんだい?」
「North YorkshireのSkiptonデス!」ケンジントン訛りなど知る由もなく、マネージャーの反応たるや、大爆笑。「Leaning English in Skipton(羊の町の意)!!!ガハハハハッ!」
「It's a Yorkshire thing!」と冷めた表現があるほど、当地は訛りが酷く、日本で言えば、青森のズーズー弁のような、日本人が初めて来た羊ゴロゴロの村で3か月、国際交流活動に勤しんだ事が私の人生のターニングポイントにもなっているが、確かにYorkshireの方々の英語は独特でヘビーだった。(全員じゃないです。念のため!)自然が美しく、よそ者の私にはただただ夢のような時間だったけど!

ケス [DVD]

KESは朋友、Essex在住のPeter Hall(初期HMで紹介のFull Montyに登場。介護全う!R.I.P.)オススメの映画だ。50年も前の社会派(左翼?)ケン・ローチ監督初期の作品。「僕の大好きな映画なんだ!」て言われりゃ見たくなる。ネットで調べたら1999年英国映画トップ100の7位に君臨していたという。しかし、レビューがどれもこれも暗い。タヌに至っては可哀想すぎて最後まで見れなかったという。ハヤブサと少年の心温まる映画...なんかじゃない。とにかく訛りが凄い。アメリカ版は全編吹き替えられたほどだ。炭鉱しか産業のない貧しい町。母子家庭。何かと言えば体罰を振るわれるセカンダリー・スクール。(日本と制度が違うから...15歳で卒業。就職)ズルもすれば盗みもする、嘘もつけば喧嘩もする。何の目標もない主人公ビリーが、ある日ハヤブサの雛を手に入れ、飼育書を万引きして、早朝の新聞配達、つまんない学校をこなした後、懸命に育てていく。
彼の置かれている環境、先の見えない生活、炭鉱でだけは働きたくない。父親違いの年の離れた兄貴(炭鉱勤務)にはいつもボコボコにされっぱなし。母親も2回結婚に失敗しているけど、いい人がいたら落ち着きたい。でもね~そうはいかないのよね~。あと4か月で卒業。15歳で就職面談もある。ワルとつるんでタバコなんかも吸っちゃうから、校長室に呼ばれる。
ほとんどが素人を起用し、順番通りに撮影しているから、次に何が起きるか出演者はほとんど知らされていないという。それだけリアイリティに満ちていて、いや、満ちすぎていて、最悪のラストには涙も出ない。「これが現実か!」と。鳥は人に飼われているようでも、自由に空を飛べる。どんなにケスを調教しても、彼はどこにも飛び立てない。たまたま授業で最近自分の身近に起きた「事実」について何でもいいから語ろうというテーマの日、ビリーに白羽の矢が立つ。日頃無口でガリガリでひ弱に見える少年が、段々熱が入り専門用語を使い、臨場感たっぷりに飼育ぶりを語り始めると、何にも興味のなさそうな同級生たちも真剣に聞き入り、質問まで飛び交う。こんなに可能性を秘めているのに。
はなから「落ちこぼれ」「脱落者」の烙印を押されたビリーと仲間たちが校長室に呼ばれる。たまたま伝言を伝えに来た下級生まで巻き込まれてしまう。校長は怒鳴りっぱなし。生徒の意見なんか何も聞かない。体罰のひとつとして、西洋では両手の平を細い杖でひっぱたく。これ、本当に「叩かれるふり」ではなく、全員マジで叩かれている。この映画の有名なシーンだと言う。巻き添えをくって、葡萄のように大粒の涙をボロリとこぼす下級生と怒り狂う校長(顔も髪形も怖い)が主人公以上に、くっきり心に刷り込まれてしまいました。7位に君臨している映画だけに、英国人の魂には直球で響くものがあるのだろう。うん、うん、凄くよくわかると私が言ったら、きっとそれは嘘になる。映画の舞台はヨークシャーでも南部で、私が知っているヨークシャー北部とは全然違うのも考えさせられるものがありました。

PS.この後、たまたま見つけた「Versus The Films and Life of Ken Loach」(2016年ドキュメンタリー)を合わせて見ると、イギリスの知られざる部分が浮かび上がってきます。
お暇なら見てヨネ!

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マンプク宮殿20 東秀とALIENATION

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 上京して最初に住んだ街は中央線の西八王子駅から歩いて15分、風呂無し、トイレ共同、電話は呼び出しという物件だった。子供の頃に読んだ漫画、松本零士の「大四畳半シリーズ」やら「男おいどん」で学生はそういう物件に住むものと刷り込まれていた為、何の疑問も持たず決めた物件だったが既に時代は80年代半ば、風呂無しに住んでいる学生は減りトイレ共同物件に住んでいる奴は既に少数派になっていたのにも気付かないまま住んだ家賃月25.000円也。1年間はそういう環境に疑問も持たず住んでいたが2年目になると部屋の隣に位置する共同トイレから響く夜中に飲み過ぎた住人が放つ様々な旋律、隣人の夜通し麻雀の音も筒抜け、そして何より住人内でかなりの割合を占めていた某団体付属大学生が選挙権を持つ年齢になるのを待っていたかのように投票のお願いやら「ビデオ持ってないので自分の持っているビデオを見せてくれ」とか言ってさるやんごとなき方のビデオを持って来たりする(当然門前払い)のに耐えかねて引っ越しを決意した。
 次の住処は京王線の千歳烏山。6畳+台所でトイレ付き、風呂は無かったが銭湯まで3分、駅までも5分。街は典型的な郊外私鉄沿線の雰囲気で商店街にはレコード屋も楽器屋も有り品揃えの中々良い本屋さえ数店ある。住環境は飛躍的に向上したが困ったのが食。西八王子では味はさておき300-400円で腹を満たせる食べ物屋が沢山あった(100円あればラーメン、タンメンが食える)がここは住人達の可処分所得が高いのか安い飯屋が少ない。大学も3年目になると毎日朝から晩まで学校に居る事もなくなり学食で全てを賄うという手段も使えなくなっていた。
 暫く街を徘徊して見つけたのが「東秀」なる中華料理チェーン店。今はイオングループで「オリジン東秀」という名前になっているようだが当時は安中華料理食堂をあちこちに展開していた。ラーメンと何かのセットで300-400円、定食でも500円以内に収まる価格帯で腹を満たすことが出来るのだが味は・・・

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中華東秀(公式ウェブサイトより)

 当時でも美味いと思って食べていた記憶は無いが舌より腹が最優先な当時、どんな酷い油を調理に使っていようと素材より塩、ソース、調味料の味が勝ろうと気にしなかった。しかし、30歳過ぎの頃に気の迷いで久しぶりに入店した後、壮絶な胸やけに襲われた時にいかに昔の自分が強靭な胃袋を鈍感な舌を持っていたのか改めて思い知った。この頃、かの店は「オリジン弁当」なるお惣菜と持ち帰り弁当を扱う業態で多数出店を始め、当時の住いの近所に出来た頃何度か利用したがやはり味は微妙で食べる度に胃の調子が優れなくなった。業態は変われども常に一定の作用を身体に及ぼすぶれない味付けに慄いたものだ。

 廉価中華料理でせっせ胃を痛めつけていた頃、熱心に聴いていたアルバムが今まで何度もこのコラムに登場するFOOL’S MATEという雑誌の初代編集長、北村昌士氏が結成したロックバンド、YBO2の1stアルバム「ALIENATION」。本人達はKING CRIMSON+THIS HEATみたいな事を言っていて両方とも好きな私は大層期待して聴いたのだがそもそも録音が良くない。ドラムはスネアと潰れたシンバル音だけが目立つだけで細かいニュアンスが良く判らない。ベースも低音がばっさりカットされて全体的にやたらハイ上がり。演奏もドラムとギターは良いのだがベースと何より歌がキツイ・・・ってこの2つ担当はリーダーの北村さんじゃないか!と非常に微妙な気分になるレコードだった。そうは言いながら買ったからには聴かなくては元が取れないと思い何度も何度も聴いているうちにベースも歌も聴き慣れて来るものだから恐ろしい、気付くと夜道で収録曲の「Boys Of Bedlam」を鼻歌で唄いながら歩いていたりもしていた。
 その後も豊島公会堂や新宿ロフトでライブを観て、新作が出れば買ってはいたのだが好きな筈なのにライブや録音に接するたびにモヤモヤした感覚がつきまとう。後に段々知識が付いてくると良いなと思う曲や旋律はトラッドのカバーだったり(前述のBoys Of Bedlamがそう)昔のマイナープログレ曲からの引用だったりするのが判ってきて段々聴かなくなっていった。

ALIENATION

 最後に姿を見たのは再結成後、自分が卒業した学校の学祭深夜イベントに彼等が出演した時だった(2000年11月)。明け方近くの時間に出てきたのだが轟音と共にヘロヘロのベースと歌が聴こえる中、不覚にも寝落ちしてしまいどんな曲を演奏したかも北村氏以外他のメンバーが誰だったのかも全く思い出せない。それから一時期彼等の音を全く聴かなくなった。多分東秀で胸やけ起こしたのと同じくらいの時期。

 更に時は過ぎ、2006年に北村昌士氏は死去。追悼イベントは開かれたが廃盤になっていたアルバムの再発も行われる事も無く忘れ去られていくのかと思っていたが2016年以降酷い作りのBOXセット(アナログ起こし針飛びあり、ライブ盤が曲間ギャップ設定ミスで1曲毎に無音部分有など素人以下の仕事)が出たのち漸く未CD化のアルバムが再発され未発表のライブ盤も2作発売された。そういえば後期の作品でちゃんと聴いていない物あったな、と思いまとめて聴いてみたが相も変わらず微妙な感覚が残る。嫌いじゃないんだけど・・・好きと言って良いものかどうか?評論家として知名度があった方が実際創作に向かった場合のパターンでこういうのがあったような気が・・・・あ!「シベリア超特急」だ!と何とも不埒な感想を持ってしまった。いや、好きなのですが。何といっても学生時代はこのバンドを手本にして曲を作ったりギター弾いたりしてきたのだから。間違いない。

 YBO2を久しぶりにまとめて聴いた今、久しぶりに東秀行けば又新たな発見があるであろうか(いや、無い)そもそも今どこにお店あるのか知らないし今の自分は耳の衰えもさる事ながら内臓の衰えの方が深刻なだけに無理は出来ない。止めておこう・・・

Humble Mumble その23:「15時17分、パリ行き」(The 15:17 to Paris, U.S.A.2018) あるいは台湾高速バス

 

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私は国内外を問わず乗り物が大好きだ。馴染みのない街とかで、フイっと乗ったバス、電車、タクシー、その車窓から見える風景、田舎道、自力では決して歩いて見回ることのできない場所。

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台湾高速バス 外観(左)、内装(右)ともに豪華なのだが…

そこに住む人々の生活ぶりに思いを馳せたりして、ボーッとするのが至福の時間。忘れられない思い出もできたりする。数年前、台湾に行った時台湾の旧友夫妻が台湾内のプチ・トリップに誘ってくれた。風光明媚な景勝地、日月潭。台北から高速バス。これが凄かった。大体2階建て。時間はかかるが、ハデなデコレーション、席も案外贅沢なくせにダントツお安い。乗り込む時の階段が異様に幅が高くて、フーフー言って乗り込む。車内のトイレがアンビリーバボー!険しい階段の脇あたり、ちょうどエンジンの上あたりに、人間がやっと入れる、ステンレスの「和式!」のトイレがある。紙はない。この絶望感!風もビュービュー吹き、それもエンジンの上なので内部は物凄く煩い。爆音を放って走行中、このトイレは生きた心地がしない。ブッシャーーーーーーッ、ゴオオオオオオオッ、ゲシャーーーーーーッ、つかまるところもなく、「和式」、もう、自分まで一緒に流されてしまいそうで、「お母さん、ごめんなさい!お母さん、ごめんなさいいいいっ!」と心で絶叫しながら、ゼーゼー言って席に戻った。友達は「プ」慣れてるのね。そう旅先では何があるかわからない。

 

15時17分、パリ行き(字幕版)

御大クリントイースト・ウッド監督(87)の最新作、「15:17分、パリ行き」は2015年に実際にヨーロッパ高速鉄道タリスで起きた、無差別テロ事件、いわゆる「タリス銃乱射事件」だ。タリス!2018年4月に初めて妹と二人で乗ったばかり!でも30分でアントワープついちゃったけど。この映画の現場がアムス発のタリスだと気づいた時、鳥肌が立ちました。

8歳から幼馴染の主人公3人は、どこにでもいる普通の青年。子供の頃は問題児でしょっちゅう校長室に呼ばれ、スカタン人生。長じてアメリカ軍に入るも、何かいつもかみ合わない。希望の部署にも入れない。子供時代の情けない思い出と、現在の軍での彼らの姿が交互に巧みに描写されていく。どんなに努力しても報われない虚しさ、どこか不器用。やりたいことがみつからない、ここで自分は何をしてるんだろう。それでも子供の頃から「神様、僕を平和の道具に使って下さい。アーメン」と祈ってベッドに入っていた。

そんな中、カードを使って、思い切って夏休み、初めてのヨーロッパ旅行に。皆配属先が違うので現地集合。とても丁寧にローマやベニス、アムスをセルフィー撮りまくりで満喫する青年たちの姿が超リアルだ。(「インスタ映えする」ってのが「Instagram Worthy」と言うのも初めて知ったけど。知ってた?) 

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再登場 タリスと筆者 2018年4月27日 9:30分、パリ行き

 それもそのはず、この監督のすごいところは、この映画の主人公たちは素人だが事件に遭遇した「本人達」に演じさせたというところだ。それもセットではなく、実際の列車を貸切り、走行中の自然光で撮影されている。554名を乗せた列車。フランス国境に入った頃、神に命を捧げる覚悟で300発の銃弾を持ち込み、大量無差別虐殺を目論むひとりのイスラム過激派テロリストが行動に出る。一人だけ犯人に撃たれた乗客も「本人」が演じている。監督が常々描きたかったのは、単なるヒーローものではなく、「人生を左右されるような動きを取った人々の動機」だという。誰の日常にも起きうる現実。ダメダメ人生だったけど、ずっと自分を活かすことができなかったけど、事件に遭遇した時の青年たちの咄嗟の判断は神対応だ。結局、ひとりの死者もでなかったのだから。何の役にもたたなかったことが、結局積み重ねてきた経験として、何ひとつムダなものはなかったと、後日、本人達も語っている。勲章まで貰ってよかったね!

 

なお、前出の台湾高速バスは年末、姉妹で台南に向け初トライする予定。トイレの改善向上を祈りながら!Go Ahead Make My Day!!!

マンプク宮殿19 キリンメッツ&かき揚げ弁当&YOU AND I

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「今年は過去最高の暑さ・・・」と夏が来るたび思っているような気がするが、実際今年は自分の体脂肪率の増加や高齢による体温調整機能衰え等を抜きにしても異常な暑さだった。過去形にしているのは現時点では通年の暑さに戻っているので一心地ついているからだが、予報によれば8月からがまだ猛暑再開との事。汗は滝のように流れるが体重は流される事もなく滞留→増加の兆し。そんなに暴食をしているとも思えないのが何故だ?暴飲だな・・・

 巷では学校に冷房を導入するしないで騒ぎになっている所もあるようで、導入否決した地域の議会では理由として「暑さに耐える根性も必要だ」という話も出たとか。熱中症で倒れたり死んでる人もいる中そう言える根性は見上げたものだが、彼の根性はクーラー無しで教室にいた事で鍛えられたのものなのだろうか?だったら議会も冷房無しでやってほしいものだ。より地方行政の課題について暑く(熱く)議論出来る事だろう。

 と言いながら自分が学生時期を過ごした時代、北東北地方の学校では冷房は必要無かった。今は実家に帰れば部屋にクーラーが設置されていて地球温暖化の影響はここまで・・・と慄く事もあったりするが、20年ほど前までは一番暑い時期でも窓を開ければ湿気が少く、涼しいカラッとした風が入ってくるので冷房必要無し、昼がいくら暑くても夜になれば気温が20度前後まで下がるので(砂漠みたいだが)寝苦しい夜とも無縁。
 
 高校制服の衣替えは関東地方と同じ6月からだったが、男はすぐ学ランを脱ぎ捨てると馬鹿にされるという妙な風習があった為、7月になっても全身黒い出で立ちで通学する愚か者が多かった。私も一時期は愚者の一人だったが湿気が無く涼しいとはいえ黒い厚手の上着を盛夏に着て快適なはずが無い。中に着る服がどんどん簡略化する。Yシャツ→Tシャツ→上半身裸の上に学ランと、字面だけ見れば本宮ひろし漫画の主人公、実際はあばらが浮き出た貧相な上半身を襤褸で包んだネズミ男がウロウロしてる風情と化した。最終的に学生服の背中に塩が浮かんできて白くなった段階で挫折。汚いし暑いし臭いし何も良いことないのに何をやっていたのか、今では死語になった「バンカラ」という気風がまだ残っていた地方だったのでその風にあてられたのだろうが。
 
 そんな季節の中、私は部活に勤しんでいたが、合宿したり強化練習などもなく暗室に籠っていた。(写真部に居た為)この暗室という存在、窓があるとそこから光が漏れて現像作業時に不用意な感光をする為、なるべく密室である事が望ましい。用意された場所は校舎の外、半地下部分にある運動部用具室が立ち並ぶ一角だった。ここは人が長く滞留する事を考慮された場所ではないため窓が無い(出入り用の木の扉のみ)、部屋の隅には排水溝が蓋もされず横切っている、電球も裸電球一灯のみという人の居住性という意味では最悪だが暗室という条件は全て満たした場所ではあった。

 アナログ写真をやった方でないと判らない話になるが、紙に焼く段階で停止液というものに印画紙を潜らせる工程がある、使用するのが酢酸という独特の酸っぱい匂いを放つ液体の為、部屋には常に劣化した酢を零したような匂いが漂っていた。

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Whatever Gentleman consisted of when he was a high school boy

 夏季は秋の文化祭の前準備、出品する作品を選ぶテスト焼きを行うため、夏休み中でも暗室に週一位は通うことになる。夏で気温は高い、常に酸っぱい匂いがする、排水溝にはたまにネズミが走っていたりする・・・そんな中、赤い電球(赤電球は印画紙に感光しない為)一つの中で蠢く輩達。昼になれば腹も空くが常に高校校門向かいにあるほっかほっか亭で一番安くて腹持ちが良い「かき揚げ弁当」260円+横の万屋で「メッツグレープフルーツ味350mlガラス壜」を買う。そして校庭に出て食べれば良いのに何故か暗室に籠って食べていた。私だけはなく部員全員が昼飯を部室で食べていた。なんであんな臭くて暗い場所でわざわざ昼飯を食べなくてはいけなかったんだろう?今あの環境で食べたらきっと吐いてしまうだろう。

 そしてこの時期に暗室作業中に聴くことが多かったのがYESのアルバム「危機」。B面1曲目「AND YOU AND I」(邦題:同志)という曲に夏を感じたのだろうか、よくリピートして聴いていた。今となっては全3曲のアルバムの中で一番聴くことの無い曲だが高校生の時に聴き過ぎたのだろう。いや、あの曲を聴くと酢酸と下水の匂いを思い出すからなのかもしれない。全然そういう曲では無いのだが。

 今年も8月中旬には帰省する予定。駅から実家戻る途中に母校の前を通る事になるが夏はいつも前を通る時に「AND YOU AND I」が私の頭内で再生されていることを横にいる妻は知らなかっただろう。同時に口内に安かき揚げの脂ぎった味が再現される事もだ。

 学校は私が卒業後改築されて校舎自体が別の場所に建て替えられている。あの暗室はもう存在しない筈だ。不思議とそれに関しては何の感慨も無い。

危機

ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 22 第一話無料あるいは韓流ドラマ

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特に好きでもないものに、はてしなくはまってしまうことはないだろうか?あった。

世の中便利なもんで、今ではレンタルなどせず、映画もドラマもオンデマンドとやらで見たいときに自由に見れる。シリーズものなど、第一話は無料など、「へえ~、タイトルに猫がついてるし、猫のドラマなのかな?」と、ある日、つい無料枠から入ってしまった。韓流でよくある大金持ちと訳あり貧乏ガールのからむ、今のところラブコメなのか、動物系なのか、愛憎ものなのかわからなかった。確かに猫がきっかけに話が進み、2話が見たくなる。次からは2話で325円だったかと思う。「お得じゃ~ん」と、見てしまった。じれったい。猫が巻き起こすハプニングというわけでもなさそう。じりじり、ああ、この二人がくっつくんだろうな、と思いながら、二転三転、気が付けば35話くらいまで見ていた。もう、主人公たちがあたふたしてる原因が見てる側にはバレバレなのに、すれ違い、勘違い、御都合のいい場所での「目撃」→「しばらく会わない」。「なんだ、そうだったのか」「早く気づけよ、ダホっ!」の繰り返し。何回も出てくる同じセット、ロケ現場。出勤前に2話、帰宅後に2話、休みの日に10話、俯瞰的に見ても、物語全体の進展もあまり見られない。猫の登場はほぼこじつけだったのもわかる。

「う~ん、いくら韓流ドラマは長いってよくきくけど、だいたい60話くらいがメドだよな」と思いつつも、じれったい物語進行に、すでにその時は中毒になっていた。特に気に入ったキャラがいるわけでもないのに、話の先が知りたくて、ついつい見てしまったが、2話325円でも、チリも積もれば山となる。

60話過ぎても終わりそうもない。ふと正気に返り、ネットで調べてみた。本国では確かに大ヒットした作品で、あちらでは大スターもそこここに出ているが、最終は119話!!見れね~よ~!!!!長すぎだよ~!!!

大まかな粗筋をネットで把握し、最終回だけ見た。十分だった。早く気づけばよかった。超ビッチだった脇役(K-POPグループの女の子)が改心して赤ちゃん産んでたり、主要キャラ総出でキムチ作りに励んだり、笑顔笑顔で終わり。当然だが翌月の請求額はオンデマンドだけで1万円超えていた。

コンパクトセレクション イ・サン DVDBOX 全7巻セット【NHKスクエア限定商品】

何年か前、韓国大河ドラマ「イ・サン」にもはまった。確かこれは、DVDを借りたんだと思う。やっぱり先が知りたくてどんどん見ていった。歴史ものなのでそれなりに勉強になったが、同時期鍼灸の治療にも通っていて、そこの若い女先生も毎週NHK-BSで放映されるものを録画して時間のある時に見るのを楽しみにしていた。それなのに、治療中に、「あ、あの人ね、結局毒盛られて死ぬんですよ。あとあれはね、あの人はね...」と、どんどんネタバレしてしまった因果応報として、今回のオンデマンド、第一話無料には特に気をつけようと肝に銘じ、今は新旧洋画をせっせと見ている次第である(完)

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