LPT annex

whatever LPT consists of

ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 10 プリシラ

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無意識だと思うが、私は案外ゲイものに寛容だ。選んで観ているわけではないが、偶然当たる確率が結構高い。しかし、タイで念願のオカマ・ショーが見れ、タイ旅行の経験のある友人に喜んで話すと、「うちの主人はあの中には絶対本物の女性が混ざってるんだって本気で言うの!」と言うし、他の友達の旦那にバンコクのショッピング・モールでも女装してかき氷売ってる男の子がいた!と確信して話すと、「そういう骨格の女の子もいますよ!」と譲らない。まあ、いいんだ、どっちでも。でも女のカンてのがあるんですよ!

 

「プリシラ」は女のカンどころか、世間がどう言おうと、私の生きる道はドラッグ・クイーン!と決めた3人がそれぞれの問題を抱えながらも、広大なオーストラリアの砂漠を「プリシラ」号に乗り、ある事情から北部でのリゾートショーに向かう、ロード・ムービーだ。この3人のキャスティングが信じられない。実は昔結婚していて、子供までいるミッチに、あの「マトリックス」で「ミスター・アンダ~ソ~ン!」と言ってキアヌ・リーブスをしつこく追いかけ回すサングラスのエージェント・スミスのヒューゴ・ウィービング!

本当に性転換手術までしてしまっている、年配の大ベテランに「コレクター」のテレンス・スタンプ様!わがままでやんちゃな、筋肉ムキムキの、一番ドラッグ・クイーンらしい金持ちのボンボン「フェリシア」にガイ・ピアース!この人、「英国王のスピーチ」で王座を捨てて人妻を選んだ王様のお兄さんとかも演じてて、その落差に仰天しました。

何もない砂漠をひたすら運転交代で走る。だいたいゲイの口喧嘩は煩くて下品になる。その中でも品格を保っているテレンス様も、通称「バーナデット」で生きているが、本名の「ラルフ」と呼ばれると烈火の如く怒り、男同士の喧嘩になってしまう。途中下車した見知らぬ田舎町。都会ではタフなつもりだったが、「おまえらに飲ませる酒はない!」「Aids Fucker Go Home!」とバスに落書きされたり、あからさまな差別を受けていく。ついでに立ち寄った店で、どんなに綺麗に女装して(デコ盛りどころじゃありません!)、ノリノリのディスコ・ナンバーで歌って(クチパク)踊っても、お股にピンポン玉を潜ませては後ろ向きに観客に向かって飛ばす半裸の女性のパフォーマンスにはかなわない。冒頭に出てきた友達のご主人様も後者の方がお好きでしょう。

そんな中でも昔、バーナデットが所属していたLes Girlsの大ファンだったという初老のボブだけが「彼女」たちを真摯に受け入れてくれ、車の修理など手伝いながら同行することになる。若い恋人を失ったばかりのバーナデットが徐々にボブに恋していく様子をテレンス様がきめ細やかに演じていて感動する。あの素敵な俳優さんが本当の女性に見える瞬間があるんです。3人とも凄いけど、奇抜な衣装を着て一生懸命テレンス様も踊るんです。いつも二人よりキレがなく、テンポがズレてるところも必見です。

選曲もよく、ああ~、やんなっちゃった~って時に見ると、絶対元気が出る、大好きな映画です!

 

道中暇つぶしに、真っ赤な凧にくくりつけて飛ばしたダッチ・ワイフが、エンディング・ロールの後、流れ流れて中国の寺とおぼしき所に着地して幕です(笑)

 

プリシラ [DVD]

マンプク宮殿9 ホヤとヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(後編)

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私が中学生の時出版された北村昌士氏(故人、当時は音楽雑誌FOOL'S MATE編集長。)の著作「KING CRIMSON 至高の音宇宙を求めて」という書籍、乏しい小遣いの中から必死で入手し何度も読み返していた。(今でも手元にあるが手垢と破損で見るもおぞましい状態)巻末に在籍していたメンバー参加作品の異様に詳細なディスコグラフィーがついており、何せメンバーの出入りが激しいバンドだった上に皆様それなりに腕の立つ方々だった事もあり、「え!なんでこんなアルバムに?」というのがちょこちょこ載っていた。BAD COMPANY、LEO SAYER、T-REX等、音の志向性がまるで違うものから、山口百恵というどう考えてもお仕事で受けただけであろうものまで(数年後杏里のアルバムクレジットにもメンバーを見つけて更に驚くのですが)玉石混合具合がたまらない。
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 その中でもやはりリーダーで最初から最後まで在籍し続けたROBERT FRIPP翁参加作を重点的にチエック。購入したり友人から借りて聴けたものは「○」でチエックを入れていく作業が始まった。他のメンバー参加作も併せてELP,YES,ROXY MUSICは難易度1、PETER GABRIEL,GENESIS,UKあたりが難易度2、TALKING HEADS,BLONDIE,DARYL HALLあたりのアメリカ勢は当時は興味無いので後廻し。ここからが一挙に難しくなり過去日本盤が出ていても廃盤かそもそも日本発売されていないものが目白押し。FAMILY、JACKSON HEIGHTS, FRUUP, MUSIC INPROVISATION COMPANYあたりは地方都市ではまず見つけられない。その中でも一番欲しかったのがVAN DER GRAAF GENERATORというバンドの作品だった。
 このバンドの3rd,4thアルバムでROBERT FRIPP がギターを弾いているという事で探してみる。当然の如く見つからない。レコード屋の店員さんに質問しまくって(嫌なガキだ・・・)判った事は
このバンド、数作は国内盤が出ていた。が、今は全て廃盤。探すなら中古盤や輸入盤店を探すしかない。いつもながら苦難の行軍を思わせる展開にも慣れてきたいたがとりあえず当時懇意にさせていただいていた中古盤屋の店長さんに入ったら連絡を貰えるようお願い。併せて最寄りで一番の大都市、仙台市の輸入盤屋の店名と所在地も調べだす。最悪、夏休みにバスで仙台市へ行き探すことまで考え始めて数か月、中古盤屋さんから連絡があり1枚入ったとの事。タイトルも確認せず向かった店先で見たのは黒字に白抜きでバンド名、赤字でタイトルが印刷されただけのプログレというには不愛想でどちらかといえばパンク系の趣があるジャケット。

Godbluff

 「GODBLUFF」というタイトルのこのアルバム、後に判ったのは一度解散した後の再結成第一弾アルバムだったという事、裏ジャケに小さいメンバー写真が出ているが4人編成、各々楽器を持っているがベースが居ない・・・写真ではボーカルがギターをさげているが実際の音では殆どギターは聴こえて来ない・・・このバンドは歌、オルガン、サックス、ドラムという「ロックバンドとしてそれはどうなんだ?」と問い詰めたくなる編成、「ああ!ギター専任メンバーいないからROBERT FRIPPに録音では頼んだんだ。」と納得したが、全4曲、アナログ片面各2曲のアルバムに針を落とすと最初に聴こえてきたのは「ポッ ポッ ポッ」と寂しく鳴るサックス。不安不安不安不安々々・・・・。そこに入ってきた超ナルシスト丸見えの歌声。「あ?まあ恰好良い?」と1曲目終えて2.3.4曲目と一通り聴き終えた最初の感想は「悪くないけどやたら荒々しいしエグ味のある音だな」という感じで意外と凡庸。それでも買ったからには毎晩何度も聴き続けるのだが1週間ほどだったある日、B面に変えて三曲目の「ARROW」という曲を聴いてる時、囁くような歌い方から一転、怒号のような叫びに変わる部分で本当に突然、月並みな表現になるが「感動」した。
 「腑に落ちる」という言い方になるのか、歌詞の内容もまるで判らない、この作品のバンドの中の位置づけ、意義、外部からの評価など一切判らない状態にも関わらず生意気にも「このアルバムを俺は今完全に理解した!という想いでその晩は何度もこのアルバムをステレオでかけ、カセットに落とし部屋のラジカセでヘッドホンで聴きながら夜更かしをして聴き続けた。
 
 最初に聴いたとき感じた、歌のクドさ、曲の構成の極端さ、ギターやベースが出てこない代わりにサックスがこれまたクドく暑苦しいフレーズで前面に出てくる、ドラムは異様にドタドタした重戦車のようなリズム、結界のように張られたこれらをクリアしてみるとその先には魅惑の世界が。そこを魅惑に感じる人間は少ないにしても。
 今でも新譜が出れば必ず購入してまで聴く音楽、齢を重ねそういう偏愛が少なくなった今でも彼らはまだその中に入っている。
 
 彼等の音を聴き始めたあたりからホヤの味も判るようになってきた。単なる偶然だとは思うがエグ味の先に愉悦がある、という部分は共通するところがあるようにも思える、その魅力をどう説明しても殆どの人には拒絶されるが一部に偏愛の対象になる部分も同じだ。
 
 今も私はVAN DER GRAAF GENERATORを聴いており、これから酒を飲みホヤをつまむ。
 
最高じゃん!
 
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Least We Can Do Is Wave to Each Other

Episode 1709 : The Disappointed 2 / Ms. Ashura

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練馬残念猫2 アシュラさん 
 
主人と入籍して最初に住んだ集合住宅のそばには、小学校が隣接する公園があった。当時は沢山の動物が住みつき、それに対し誰もが何の疑問も抱かず温かく接していた。しばらく公園で暮らす間に頼れる人間と出会い、飼い猫に昇格する強運の猫もいたし、地域猫活動も盛んで、毎朝バケツでお湯を運び、皮膚病に苦しむ猫の足を洗ってあげているお婆さんや、毎晩定時に段ボール箱が運び込まれ、そこで寝泊まりする猫もいた。ある時から無情なまでに整備され、多くの樹木が切り倒され、動物進入禁止、砂場使用禁止、球技禁止…と公園の楽しさを根こそぎ削除した現在のその公園からは想像もできない「楽園」のような場所だった。そこにアシュラさんも住んでいた。彼女は洋猫の血が色濃く姿に現れた、眼光の鋭い長毛の三毛猫で、顔の半分が黒く、引越当時は同じ腹の姉妹と思しきそっくりな白黒の猫もいたが、「銀猫」と呼んでいたアシュラさんのきょうだいは、足しげく公園の向かいのアパートに通った結果、飼い猫に昇格し、その後外には現れなくなった。一方アシュラさんは、地域猫活動家の手厚い庇護を受け、朝晩の食事と公園のベンチに設えた段ボールの寝床を保証され、自由な生活を満喫していた。気に入った人間が通りかかると、媚を売るでもなく、かといって逃げるでもなく、ふんわりと長い尻尾を立てて近づいていくが、夜9時を過ぎると判を押したように段ボールハウスに入ってしまい、幾ら声をかけても「本日の営業は終了しました」状態で、てこでも出てこなかった。
 
アシュラさんは、公園を中心とした猫社会の女ボスだったらしく、なんと自分の母猫まで縄張りから追い出し、コミュニティ内の猫には一目置かれていた。地域猫活動のおばさんに何度かアシュラさんの話を伺う機会があったが「え、みーちゃん?この辺の猫はみんなみーちゃんにビビってるわよ。でも男の趣味は悪いんだけどね」と、この迫力で巷ではあっさり「みーちゃん」呼ばわりされているのに驚いたが、おばさんが言う所の「趣味の悪い男(後述)」とあしゅらさんが、確かに人様の屋根の上で玉になって寝ているのを見たことはあるので関係は否定しないが、近所の人に男の趣味まで周知されている程のプライバシー侵害を受けている猫に初めて会った。
 
アシュラさんは、公園に来る人間には凛としていながらも、常に相手の様子を伺い、励ます事すらあった。ある日、仕事で精根尽き果て、あと数分で家という、そのもう少しが踏み出せず、公園のベンチで一休みしていたところ、暗闇の中からふわっとアシュラさんが現れた。地面から人の顔を覗き込むように私を見るなり、とんとん、とベンチにあがり、私の膝に乗ってきたのだ。私はびっくりしたが、アシュラさんの思いやりに感謝して、そのまましばらく膝の上のアシュラさんと無言の語らいを楽しんだが、じわじわと太腿がかゆくなってきたので、せっかくのご厚意だったが「どうもありがとう、帰ります」と挨拶してベンチを立った。アシュラさんも、別に驚く事もなくベンチを降り、段ボールハウスへと入っていった。
 
ある年、公園に子猫が大量発生した時期があった。地域猫活動のおばさん達のお世話になりながらすくすく育った姿はほぼ大人だが、中身はてんで育っていない年頃の若猫の中には、野良生活でだんだんすれっからしになっていく者もおり、手を伸ばした際、急に引っかかれそうになった。その瞬間アシュラさんが「ギャギャッ!」と金切声をあげ、その猫を横から2発引っぱたいたのだ。女ボスに2発も食らった若猫は「ちっ、なんだよババア」とでも言いたげな顔ですごすごと去って行った。そうやって人への仁義を教える猫というのも、後にも先にも彼女以外会った事がない。
 
地域猫活動の中心だったお婆さんが、脳梗塞で倒れ、車椅子生活となったという話を聞いた頃、公園は世論の時流に乗って動物進入禁止、遊具の撤廃、大規模な樹木の伐採を急ピッチで進めていた。1年位経ち、公園はいきものの息遣いを感じない、ただの管理区域に変わり果てた。地域猫活動も息の根を止められ、アシュラさんや他の猫が休む段ボール箱も置かれる事がなくなり、そのうちにアシュラさんを初めとする猫は姿を消した。
 
最後にアシュラさんと会ったのは、10年前現在の家に引っ越した際、主人が「久しぶりに公園でも行ってみるか」と足を運んだ時だった。運よく、数年ぶりに見かけたアシュラさんは、元々単色の体毛が更に薄三毛になり、毛艶も悪く、人間でいったら少し認知症のような目つきに変わり、私たちの事は毛頭記憶にない、といった表情で土の上に横たわり、こちらをぼんやり眺めていた。実際相当の高齢だったと思うが、日々の飲食に事欠いているような荒んだ風ではなかったのがせめてもの救いだった。その公園に足を運ぶ事は殆どないが、そばを通ると今でもアシュラさんの凛々しい姿を懐かしく思い出す。

 

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軽トラックの上で正座するアシュラさん 2005年ごろ

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2006年ごろ 玉アシュラ

ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 9 ターザン:ROBORN

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台湾の親戚で’15年末に亡くなった最年長の従姉の次男、建ちゃん(54)は奥さん共々日本の大学を出ていて、長女も今年日本の通訳養成コースに留学している。従姉の子供の方が私たちの年齢に近いので、若い頃から色々な形で縁があった。どうにもこうにも留学中からとにかく富豪なので、遊びにきた両親を一緒に羽田に見送りにいき、帰りは当たり前のように空港からタクシーで帰ったりした。現在も親族経営の会社が大繁盛で世界中を飛び回っている。数十名を引き連れた社員旅行の写真を見せてもらった時、「ああ~、ハウステンボスに行ったんだ~?」「ううん。ウィーンだよ!品のいいおばあさんて感じの街だったな!」

長男の通称「マコトくん」は今年大学を卒業するが、毎年なんらかの形で会う機会があった。どらえもんのノビ太みたいに小さくて、黒ぶちメガネで言葉は通じないが愛想のいい子だった。それが毎年会うたびにニョキニョキヒョロヒョロ背が伸びていき、今では187cmもあるという。’16年末、妹と台南で建ちゃん家族と会食した時、本人はいなかったが奥さんが動画を見せてくれた。そ、そこにはムキムキ、マッチョなマコトくんの姿が!ある時筋トレに目覚め、今は蟹腹だ!最後に会った時から半年しかたってないのに、人間てこんなに変われるのか!プロテイン命か!卒業後の兵役も楽しみにしているという。Good Bless Makoto!

 

「ターザン」の名を知らない人はいないだろう。原作でもターザンが貴族出身だったというのは初めて知ったが、この映画は凄い。19世紀、ジェーンと結婚してジャングルから英国貴族に戻ってロンドンで大富豪として国会議員も務めているというシチュエーションから始まる。(可能なのか、8年ぽっちでそれって...)

俳優さんがまた凄い。この映画の為に肉体改造したのが手にとるように分かる。アレクサンダー・スカルスガルドというスウェーデンの俳優さんで三つ揃いでビシっと決め美しい金髪、碧眼。品のいい英語。でも、彼が出てきただけで映画の顛末が全部わかるようで、もう脱いだら凄いんです、この後脱ぎます、脱ぐんです、戦うんです感がムンムンなのだ。最初、俳優さんの情報が全くなかったので、この人本職はレスラーかしら、これがデビュー作かしらと不安になったが、彫刻のような雄姿はCGではなく、筋トレのたまものだという。すべて撮り終わって、やっと好きなものが食べれる!と太り始めていた時、ワン・シーンだけ撮り直しの命令が出て、再度過酷な筋トレで絞ったという。「その場面だけCGでできね~のかよ~!」と叫びながら。俳優さん偉い。ハリポタの監督さんなので全体的にアクションでも品がいいです。悪役にもそれなりの魅力があり2回見直しました。LPT読者にご存知の人がいるかどうか不明ですが(タヌでさえ)、中村光先生の「荒川アンダー・ザ・ブリッジ」に出てくるヨーロッパの屈折した元傭兵、いつも戦闘服の上に修道女の衣装を着ている「シスター」の実写版みたいで凄いお得感がありました!

PS:アレクサンダーさんはレディ・ガガの「パパラッチ」のPVにも出ていました。同じ人とは思えないほど、ゲスな恋人役で。筋トレ前でした。 

ターザン:REBORN [DVD]

マンプク宮殿8 ホヤとヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(前編)

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 その昔、仕事から帰ってきた父が晩酌でサッポロを飲んでいる時、傍らの皿に入っているオレンジ色の憎い奴、臓腑を掘り出したように見えるそれが「ホヤ」なる海産物だと認識したのは小学校を卒業するかしないかの頃だった。父のみならずお盆などで親族が集まり叔父連中が酒盛りを始めると皆の前にもれなくそれが入った皿が並んでいる。
 
産直丸魚 南部もぐりの手摘み 種市産 活 天然 ほや 1kg (3-5玉)
ホヤ
 生臭い中にケミカルな成分を含んでるかのようなその香り、オレンジ色と黒にグロテスクに染め上げられた身。そして捌き済で流しのコーナーポストに捨てられている殻・・・赤黒い色でイボイボが出ている。ウルトラセブンのブラコ星人かはたまや日野日出志の「蔵六の奇病」かという気持ち悪さ。子供の食卓に並ぶことは無いがたまに親父が面白半分に「どうだ?食べてみるか?」とサッポロと一緒に勧めて来る事があった。
ウルトラ怪獣消しゴム No.108 ブラコ星人(銀)|ウルトラセブン 円谷プロ一度だけ両方貰った事があったがどちらも苦い!変な味!食感がグニャグニャして気持ち悪い。いつまでも口の中に後味が残り続ける・・・キリンレモン飲んでも消えない。こんなものを喜んで食べる大人というものは理解できない、という真っ当な子供らしい感想のまま高校を卒業し上京。20歳の声を聞くまで二度と口にすることは無かった。東京ではその頃は殆ど見ることの無い、少なくとも金欠大学生が行くような店に置いてあるようなものでも無かったし。 

蔵六の奇病 (1979年) (ヒットコミックス)大学三年あたりにはビール等も少しは吞むようになり、夏の風呂上り一杯の旨さにも開眼。たまには友人などと安居酒屋に行ってオダを上げるようになってきた夏。帰省して高校時代の友人と入った地元食材が肴の居酒屋で奴と再会した。ほろ酔い加減で勢いに任せ頼んだそれは過去の諍いなど水に流すかのように美味。酒と煙草で恐怖の味覚改革されたのか?翌日、宿酔の苦しみから解放された夕方に近所のスーパーで買い求め、母親に捌き方を教わり自分で酢の物にして食べている自分がそこにいた。ホヤとの再会&今に至るまでの永い付き合いの始まりだった「ユリイカ!」とでも叫んでいたら良かったのかどうか。

  とはいえ、少し前まで都内のスーパーでは極まれに初夏出回る事があるくらい。そしてあまり美味しくない。居酒屋などで出ることもあるが匂いだけが強くて味は・・・という事が多かった。なによりホヤを食べる習慣がある地域が日本の中でも限られているというのも働き始めてから知った。東北地方の人間には馴染み深いがそれ以外の地域の方々から言われるのは
 
「あー!ホヤ。東北出張の時地元の人に勧められたけどねえ・・・何なのあれ?」
「あんな臭くて気持ち悪いもん良く食べられるな。さすが蝦夷は味覚が違う」
「怪奇!ホヤ人間!」
 
など殆どまっとうな人扱いされない。
 
 最近はスーパーでも大分鮮度が良い物が出回り、居酒屋でも臭みが強い質の悪いものは見なくなってきているが、それでもあの見た目と食感故、関東圏でも市民権を得るのは無理だろうなとは思う。ましてや中部、関西など・・・
 

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 続く!

ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble 8 アキヤマの弁当

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映画じゃないけど。

 

今は何でも食べれる時代だ。しかし、どうでもいいものが無性に食べたくなる。高校時代の母の弁当だ。キャラ弁でもなんでもない。質実剛健な弁当。匂いも色も移ってしまいそうな深めのタッパーにギュウギュウに詰め込まれた赤いスパゲッティ。表面には色よく茹でたサヤインゲンが散らされ、やや半熟の二つ切りのゆで卵が埋められていた。サイケだった。当時はレンジなんかない。硬くなった麵をほぐしながら口の周りを赤く染め一気に食べた。十代の私には凄いご馳走だった。

「生焼けだと怖いから」と真っ黒に焼かれた硬いハンバーグ。ソースとケチャップを混ぜたものが必ず塗られていた。砂糖とバターで茹でた橙色のニンジンの付け合せ。大嫌いだった。それに手元が狂って塩が利きすぎた厚焼き卵。個別に持たせればいいのに、これまた半分に切ったみかんが埋められていた。見た目がファンキーだからか、いつしか隣の席の女子が「おかず、交換して~」というようになり、あちらの卵焼きをもらった。まずかった。「アキヤマの弁当」はなぜかよそのクラスにも噂が広がり、前出のスパゲッティなどは、ひとくち食わせろという子もいた。懐かしいなあ。

 サンドイッチに到っては、母は食パンの耳あり派だった。薄く焼いた卵焼き。(なぜか和風味。やっぱり塩味きつめ)スライスしたトマトときゅうりにマヨネーズを塗り、むっちりとした二つ切りのサンドイッチの完成。切り目の色はやっぱり鮮やかだが、食べる頃にはパンまでジクジクになっていて、真夏など命の危機さえ感じた。「マーガリンも塗ってあるから大丈夫」母の真心は底なし沼のようだった。

 体の弱い母に代って、年の離れた妹の弁当を作るようになった。おかずは前日の残り物が常だが、白いご飯に紅しょうがで「デブ」とか「60キロ」とか書いてごま塩をいっぱいふった。ちなみに当時、私のハンバーグは母のそれを超え、あめ色玉ネギ入りのフワフワで自他共に評判の一品だった。やっぱり空いた所は半分に切ったみかんで埋めた。蓋を開けた途端、テンションがあがる(はず)。「また作って!」と言われればしめたものだ。

 この妹も長じて、今では行きがかり上行かず後家となった姉のために、旦那と自分の弁当の他に私の分も使い捨て容器に入れ、「明日、食べな」と、徒歩3分の我が家にでき立てのビーフンなどを夜届けてくれる(独居老人ではない)。醤油と長ネギ、椎茸、竹の子、豚肉のダシがよく染み込んだ焼きビーフン。これぞ母の得意料理だった。明日と言わず自宅で思わず早弁してしまう。おいしい。そんな時、あのどうでもいい「アキヤマの弁当」が走馬灯のように脳裏を駆け巡っていく。ママ、ありがとう。私たち、どうにかやってるよ。ごちそうさまでした。

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2010年秋、在りし日のタヌ家ガスコンロ。コンロはハン1が両親を看取り、実家を

整理した際に店主タヌが譲り受けたもの。鍋もヤカンも、勿論コンロも現役です

 

 

 

ハンブルサーバントの独り言 Humble Mumble Summer Special : Who Do You Think You Are(BBC) あるいはSuffragette(未来を花束にして)

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2004年から好評を博しているUKの先祖探しTV番組、Who Do You Think You Are.
そういえばイギリスの何人かの友達との会話にも何回か登場していた。先日4半世紀ぶりに会いにいったEssexPeter親子は「探しても探しても、どこまでも貧乏だった。「Happy but Poor!」と笑っていたけど。はからずしも、我が家もひょんなことから最近、父方の曾祖父がオランダ人だったということが判明した。台湾がオランダの統治下だった時代があるし、大航海時代の事、どこで何があってもおかしくないけど、「自分が何でできているのか」と考えた時、妄想は果てしなく広がる。しかし、冷静に歴史などを調べていくと残酷な事実にぶち当たったりもする。今のように格安航空券もない時代、わざわざ台湾までやってきた曾祖父はそこそこのミッションを持っていたのだろう。そこに十代の曾祖母(中華)が下女として入り、おてつきで生まれたのが祖母。ダッチはさっさと次なる目的地に旅立ち、着地点はイギリス。そこで家庭を築いて落ち着いた...のなら、我が家の英国との深い縁にも納得がいく。祖母はその後、祖母にとっての祖父母により、おそらく、混血でもいいところに嫁に出すため「纏足」までして17歳位で結婚している。祖母と話ができるなら、色々女同士聞いてみたいものだ。洋名Kimburley。私たちに現れた日本人らしからぬ骨格と白い肌は確かにダッチゆずりだとも思う。だから何なのって、それ以上でもそれ以下でもないけど、DNAとは不思議である。ちなみに祖母は富豪の妻として沢山子供を産み育て、天寿を全うしています(笑)
満を持して爆進中のLPT Grossmith特集。万博出展!ワラント獲得!香水のレシピ発見!子孫が復興!などと、非常にドラマチックだ。しかし、先祖探しの中でもこれはかなり異例のケースだろう。毎日ドキドキして読み進む中に前出のWho Do you~が添付されており、勢い50分以上にわたるアニー・レノックスの回を真剣に最後まで見てしまった。貧困、どこまでいっても貧困。よくて工場で働き、ついつい何度も私生児を産んでしまい、育てられないから大叔母に「下働き」として預けるが「Useless」として戻されてしまう。当時行き場のない貧しい子供は「商品」扱いだった...「ビクトリア朝って、なんて残酷なの!貧困て醜いわ」涙ぐむアニー。自分の先祖のひとりでも、そんな思いをして夭逝していたとしたら...
時を同じくして、偶然今春公開されていたUK映画、Suffragette(未来を花束にして)を連載開始直前に見た。1912年貧しいロンドンが舞台だ。女性参政権を得るために奮闘した女性達の実話に基づく映画だが、不思議な事にGrossmith特集の時代背景となんだかかぶるのだ。女王様の国なのに、英国では当時女性には参政権がなかったという。「女性は感情的で、政治的問題には冷静な判断ができないから」というのが理由だそうだ。洗濯工場で7歳でパート、12歳でフルタイムとして働く。低賃金に過酷な労働。セクハラ。皆、短命。それでもささやかな家庭を築くが、男女平等、参政権獲得を声高にアジる特権階級のマダムに感化され、次第に活動に参加していく。言ってもわかってもらえないから、彼女たちの行動は器物破損、ポストに爆弾、金持ちの別荘爆破...と過激きわまりない。投獄されればハンストもする。活動家の一人、薬剤師として登場しているヘレナ・ボナム・カーター(まいど!)でさえ警官につかまればこん棒でボコボコに殴られる。「違う人生が送れるかもしれない...」と活動にのめり込んでいく主人公。でも待っていたのは家庭崩壊。仲間の死。何度も投獄される妻に嫌気がさした夫は、幼い一人息子を勝手に養子に出し離婚。養子に出された坊やにはまた違う人生が待っていて、違うファミリーツリーができて...
この映画を見た後、特集記事を読むと、時代背景が何か3Dで浮かび上がるようで。一生ド貧乏の彼女たちは、香水の「こ」の字とも縁がなく、安全な場所から彼女たちを煽る特権階級の思想家婦人は、綺麗なお洋服、すばらしい香水に日々囲まれ、違うファミリーツリーを築いていくのだろう。
お時間のある方はSuffragetteも是非見てみて下さい以上、ハン1からの絶叫レポートでした!コケーッ!!

未来を花束にして [DVD]

4 Aug 2017