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Humble Mumbleその39:ストーンヘンジ(UK)あるいは「時の面影」(The Dig 2020 UK Netflix Original)

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一体誰が、いつ、何のために、どうやって造ったのかいまだにはっきり解明されていない遺跡は世界中に多々ある。35歳の12月、お金もないし、きっとこれが最後になるかなと思いつつイギリス北部のホストファミリーや朋友Peter Hall(当時Hull大学在学中。退職してから進学)に会いに出かけた。(最後じゃなかった~、日本にも来てくれた~!ロッテルダムでも会えた~)
当時はお手頃なコーチ・ツアーという基本日帰りで名所旧跡を貸切りバス、ガイド付きでリーズナブルに回れるお得な旅があった。今じゃ日本からネットで簡単に申し込めるけどね!
旅の最後に私が選んだのはロンドンからそう遠くない、ストーンヘンジ、ソールズベリー大聖堂、お風呂の元祖バースを回るツアーだった。怪しい日本語ができるイギリス人女性が車内だけガイドして、現地では自由行動。1日で自力で回るのはとても無理な名所ばかりなので、機会があればもう一度...(ないな)

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ストーンヘンジ。スマホはおろかパソコンや携帯もそれほど一般家庭に普及していない時代、海外渡航先、しかも出先からの連絡は公衆電話。写真の感じだと昼だが、時差の都合で日本は夜更け。黒電話が鳴ったと思ったら、近所に買い物ついでの勢いで「あ、さっちゃん?今ストーンヘンジ」というハン1の第一声に驚愕した

今でも鮮烈に覚えてるのがストーンヘンジ。(写真参照)なんもない平べったい道をひたすら走っていく。緑の芝生がずーっと続く。民家も農場も高い建物なんかなんもない。そこにいきなり現れてくる石の塊..昔は実際に触れることもできたというが、ヒッピーとかがたむろして悪さするようになったので、一応周囲にはロープが張り巡らされている。なんかよくわからないけど、高い空、石の群れ、緑の芝生。日本人(一応)は私だけ。太陽神の神殿とか色々言われてるけど、あの異次元は忘れられない。敷地内にしっかり土産屋もあり、当時は携帯なんかないから、小銭集めて公衆電話から時差丸無視でタヌに電話。「あ、さっちゃん?あたし~、今、ストーンヘンジ」と、まるで、西武池袋線秩父駅からかけているかのような大迷惑な気軽さは今も語り草になっている。悪かったよ。夜中に起こして!

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サットン・フー遺跡(左)と出土品(右)

イギリス南東部サットン・フー遺跡。イーストアングリア王国の墓地、古墳が多数あるという。名前は知らなくてもこのお面?なんかは教科書で一度は見た事があるのでは。(写真参照)なんでも7世紀、アングロサクソン時代の船葬墓からおびただしい副葬品と共に発掘され、中世初期のイギリスに対する理解を一挙の変えてしまった国家レベルの大発見だという。当時は野蛮な暗黒時代ではなく、高度な文明、芸術があったと!
第二次大戦直前、1939年、ローマ遺跡の発掘には熱心に取り組むも、大英博物館などの貴重な展示品は安全な場所に(主に地下鉄構内)避難させてるようなせわしい時期に、土地の所有者で未亡人のエディス・プリティ(キャリー・マリガン、老けたわ~)がアマチュアでも腕利きの掘削家バジル・ブラウン(レイフ・ファインズ、老けたわ~)に依頼し、敷地内にある塚を掘ってもらう。「ここには何かある!」考古学に造詣が深い夫人は確信していた。独学が故に、イプスウィッチ博物館や大英博物館のお偉いさんからは軽んじられるブラウンさんを、まだまだセクシー路線でもいけるレイフ・ファインズが(KING’S MEN最新作、および007近作を見よ!)わざと太った無骨で訛ったサットン男を熱演!
地中には東西27メートルの船が丸々埋められていて(写真参照)、埋葬室は墓荒らしにもあわずに300個近い装飾品も出土。それも世界中から集められた材料で精巧に作り込まれたものばかりだという。

地味なトーンで淡々と進んでいく。当時のファッションも丁寧に再現されていて沁みる。物語中盤、若い学者の卵夫婦が発掘に参加するのだが、そこで目が釘付け。1930年代とはいえ、猛烈にやぼったいメガメをかけた女性が出てくる。でも、あれ?これ、見たことある、この人、この人、Baby Driver,、マンマミーア、レベッカとかでブイブイいわせてるリリー・ジェイムズじゃないの!女優さんてスゴイ!
あまりの衝撃に瞬時に①似顔絵(落書き)を書いてしまった。②発掘作業中。③ケネスブラナー様監督のシンデレラ(2015)にも出てた!前に見てたのに気がつかなかった!しかも、本作では学者の卵夫婦で出演している俳優さんと、シンデレラでは親子役で出演!ケイト・ブランシェットの継母と、ヘレナ・ボナム・カーターのフェアリーゴッドマザーも素敵!!って、何の映画の話だったっけ??失敬、失敬。

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リリー・ジェイムズ。左)「シンデレラ」より 右)「時の面影」より

結局、終戦後、心臓の悪かった夫人他界9年後に、大英博物館に寄贈されていた埋葬品は、一般人も鑑賞できるようになったというが、一番の貢献者ブラウンさんの名前はどこにも記載されていなかったという。そう、ここ数年、やっと夫人の名前と並んで掲示されるようになったとか。実話に基づいたお話ですが、元々こうした素晴らしい遺跡、宮殿、建物など、決してそこには住むことのない、完成すれば中に入ることも許されない名もない民草が時には命を落としてまで造り上げていることを思い知らされるようなエピソードだ。

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左)遺跡が出土する広大な敷地の女主人。色味のなさに薄幸が光る 

右)原題:The Dig。現在Netflixで視聴できます

立派な墓に埋められた高貴な方だけの生き様があるように、どんな人にもそれぞれの生き様がある。誰にも思い出してもらえなくても、生きた証はきっとどこかに残ってる。そう信じたい作品でした。コロナ禍で、久々に数十年前の写真とか引っ張り出し、「これって、私の歴史の一部よね~」「色んな経験させてもらったな~」「いっぱい迷惑かけてきたよな~」と終活も射程圏内に入ってきたハン1はしみじみ思うのでした。

 


キャリー・マリガン、レイフ・ファインズ出演『時の面影』予告編 - Netflix