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マンプク宮殿23 Low Lifeと吉野家

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 洋楽なるものがまだ勢いがあった頃、私の中学時代は人気がある方々の来日公演は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、京都、福岡といった各地方の中核都市で行っていた。記憶ではJAPANやPOLICEなんかも私の出身地近くの仙台まで来ていたはず。それが高校時代になると最初に仙台が外れ、京都は大阪に集約され、福岡や札幌も無くなり東名阪だけ。今では東阪のみが殆どで東京のみという場合も多い。世界的な音楽マーケットの中で日本の需要が減退しており、他のアジア圏、中国(香港)、韓国、台湾、フィリピンあたりの公演の方が集客出来るのでそちらにシフトしているのだろう。

 当時のチケット代は3.000円~4.000円程度だったが、それでも中高生の身分でチケット代&仙台までの往復交通費を捻出するのはとても無理な話だった。ましてや東京など。中学時代は新幹線も未開通だったので行くなら夜行電車で片道8時間以上。音楽雑誌の来日公演情報等臍を噛む思いで見るしかない。たまにNHK-FMで来日公演の録音を放送したり、「LIVE IN JAPAN」とかいうタイトルでレコードが出るのを聴いたりして我慢するのが関の山。当時地元の本屋でも「ぴあ」が売っていたが「ここで売って何の意味があるのだろう?」といつも思っていた。

(当時、私の地元に来た洋楽系で記憶しているのはSKELETON CREW/フレッド・フリス&トム・コラというアヴァンギャルド系ミュージシャン2人のデュオと、デレク・ベイリーというフリー演奏の極北ギタリストが来たはず。何故アヴァンギャルド/フリージャズ系ばかりだったのだろう?そういうのを呼ぶ好事家が居たのか?会場は小さな楽器屋の2階、地元の高校生バンドがライブやるようなスペースでやっていた) 

 その後、上京して晴れて憧れの洋楽アーティストコンサートに行ける。初めて買った「ぴあ」を眺めていると「NEW ORDER」という名前が。会場は新宿厚生年金会館。今調べてみたら85年5月1/2に来ている。となると上京してすぐチケットを買ったのか。中高生時代熱狂的に聴いていた「JOY DIVISION」のボーカリストが自殺した後、残りのメンバーで再始動させたバンドなので気にはなっていたが、高校時代に聴いたのは1stアルバムと「CONFUSION」というシングルのみ。前者は薄口なJOY DIVISION、後者は音が随分ディスコ寄りになっていた。これはこれで悪くないのだが、唄が下手・・・・正直、こんな外れた音程の唄を聴くのは初めてだったので「これで良いのか?」と悩んだ。JOY DIVISONも唄や演奏が上手というバンドではなかったが、NEW ORDERの場合は演奏がシーケンサーやドラムマシン使用でカチッとしているのでよりヘロヘロな唄が目立ちまくる。とは言え好きなバンドの後継だし、来日タイミングで出た「LOW LIFE」という新作アルバムが聴いてみるとなかなか良かった。打ち込みだけではなくかなりタイトなバンドサウンドもあった上、唄も前聴いた時よりまともに聴こえた。「これなら期待できるかも・・・」と思い初めての洋楽コンサートを楽しみにしていた。レコードの音は相当作りこまれた・・・いや、修正されているものだという事には考えが及ばず。 

 当日、会場に入ると席は真ん中より少し後ろ、相当な期待をして待った後メンバー登場。メンバー全員とても地味な装い、ポロシャツにジーンズorジャージ姿、そこら辺を歩いているアンちゃんと変わらない。1曲目は「CONFUSION」知っている曲だ。イントロはシーケンサーとドラムマシンのみ、ここはレコードと変わらない。さて歌とギターが入ってきた・・・ 1オクターブ高いキーで唄い出し、声が出なくてすぐ1オクターブ下げる。下げてもレコード以上に音程が外れている。ギターのリズムも全然合っていない。ベースもやたら音は大きいがヨタヨタした音、そんなストラップ下げて弾く前にちゃんと演奏しろよ。ドラムとキーボードはこの曲ではシーケンサーの操作をするだけで演奏してない・・・おお、ここでまともに聴こえるのはメンバーが演奏してない部分だけだよ・・・・。「え?何?こんなので良いの?」という困惑がレコード以上に襲ってきた。その後の曲からメンバー全員で演奏する曲になったが「キーボードの人立っているだけで演奏してないような?」「キーボードの人たまにギターも弾くけどリズムが怪しい・・というか全部半拍ずれてないか?」「唄はどの曲もまともに歌えていない」「ベースは全くリズム弾かないな、逆にギターはリズムしか弾かないけどカッティングがヘロヘロ」と頭の中に大量の「?」が浮かんで全く解消されないまま1時間少々のライブが終わった。 

 結局、判ったのはまともな演奏はドラムマシンとシーケンサーのみ、ドラマーはまあまあまともだが他のメンバーは高校時代の知り合いコピーバンドにテクニックでは劣るという事実。

 吉野家 冷凍 牛丼の具 30食セット

 今観たものの衝撃も冷めやらないまま、夕食を食べようと入ったのがこれも初体験となる「吉野家」(確か私の出身地に初めて吉野屋が出店したのは90年代半ばだったと思う)当時370円位だったか、「これが有名な牛丼屋か、安いけど美味いのかね?」と大して期待もせずに入ったがこちらは美味しく食べる事が出来た。甘辛い味付けに箸が進みすぐ食べ終わり、さっき観た4000円のコンサートとこの370円の牛丼の満足度の違いを複雑な思いで比較しながら帰路に着いた。

 

パンプド・フル・オブ・ドラッグス/ライヴ・イン・トーキョウ1985 [DVD] 恐ろしい事にこの日の演奏は後にビデオ化され販売された。今はDVDでも出ている。こういうパッケージ作品を出す場合、後から演奏や唄を録り直して出す場合もあるが、観た限りこれは全く修正されていないようだ。今でも観直すとあの時のジワジワした気分が蘇ってくる。その2年後、彼等は再来日し、これも観に行ったが随分まともなものになっていた記憶があるのだが印象が薄い。洋楽コンサート初体験があんなものだった為、その後観たコンサートのリファレンスがNEW ORDER初来日になってしまった…普通に上手い演奏とか観ても何かしっくりこない感じ。  

ロウ・ライフ【コレクターズ・エディション】

初めて食べて満足した吉野屋は今では殆ど行くことが無い。稀に朝早い外出時に朝メニューを食べる位で牛丼はここ数年食べていない。NEW ORDERは今では大御所になってしまい、レコードや最近のライブをチラ聴きした限り随分まともな演奏と歌になっている。曲も悪くない。今でも好きなバンドだ。しかし今でも一番聴くのは発来日公演時に出たアルバム「LOW LIFE」だ。最初の印象がどう転ぶかなんて判らないものだ。(吉野屋は年齢的な部分が大きいですが、でも、今牛丼食べるなら松屋の方が良いかも)