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episode 1108 : Little morning spod

「朝活!小学生」

 ここ数年の流行で、語尾に活の字をつけて「~活」と称する団体行動のトレンドをメディア先行で作り上げている。少し前は「婚活」、最近はもっぱら「朝活」だろうか。朝に弱く、夜にも弱い私にとって朝は、記憶力が高い時間でも、何かを能率的にこなせる時間でもなく、目覚めから覚醒への緩やかな移行を行う「静」の時間だ。省電力状態の脳に最小限通電して、ぼんやりと通勤電車の中でひと時を過ごす人々を観察することが多い。

 7月の頭だったか、いつものように最寄り駅から電車に乗ると、ドア付近に小学校高学年位の男の子が立っていて、一生懸命単語帳で何かを暗記している。その年で電車通学だから私立小だろうか。背丈が私の肩より低いので、ちょっと目線を動かすと、単語帳の中身が丸見えだった。どうも、同じ漢字を使った2字熟語を3つずつ暗記しているらしい。小学生の覚える漢字だから、それ程難しいものはない。目には映るが脳には信号が届かない程度の集中力で、めくっていく単語帳を覗き見していて、ふと展開していく3種類の熟語が、どうもおかしい事に気がついた。3つが微妙に起承転結になっており、結語がやけにブラックなのだ。

カードをめくると、漢字の「処」が出てきた。

「処置」うん。「処理」ま、そうだね。「処刑」しょ、処刑…?うーん、絶句。

次に、「党」が出てきた。

「政党」うん。「野党」うんうん。「悪党」あ、悪党?…う、うーん。
野党とくれば与党とか、甘党とか辛党とか色々あるだろう。何で悪党なんだ?

 子供が自分で好きな熟語を3つ選んで覚えているんだろうか。それとも、彼が学校で使用している教科書やドリルに出てくるのがその3つなのか。または教師の趣味か?いずれにしても、あまり健やかでない熟語の展開に、さすがの私も眠気が吹っ飛んだ。子供はもう大分覚えたのかさくさくと単語帳をめくり2巡目に突入、またも「処刑」や「悪党」が飛び出した。他の熟語も気になり、目を皿ににして見ようとしたら終点到着のアナウンスが流れ、子供もきり良く単語帳を鞄にしまってしまった。電車が到着すると、朝活小学生は左右のドアから一斉に降りた大人の海にもみ消され、見失った。

 大人も子供も、一分一秒を無駄にしないよう朝から頑張っている。生産性。効率。結果。その疲れが押し寄せたのが今の日本じゃないのかな、とやっぱり働かない頭で、ちょっとだけ反抗的に考えながら、いつもの通り出勤した。

Aug. 2011