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Humble Mumble その27:Bohemian Rhapsody (2018 UK/USA)

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初めてのコンサートは高1の時のT.Rexだった。黄色い声は飛び交っていたが、それ以上でもそれ以下でもない。自分の席で堪能した。というか「あんまり巧くないな~、ミッキー・フィン好きだな~」が生意気な小娘の正直な感想だった。一緒に行った子はロックのロの字も知らないのに粋がって付き合ってくれた。某漫画コンクールで努力賞を頂き、賞金で買った初めてのアルバムもT.Rex、’Slider’だった。縁起が悪かったのだろう。受験は「すべった」。

この数年後、同じ武道館で「半殺しの目」に合うなど、誰が予想しただろうか。
当時浪人中だったが音楽業界に就職した同級生のコネで、最前列を確保していた。会場が暗くなる。「ギャーッ!!!!!」メンバーの姿が見える。「ギエエエエーーーーッ!!!!!」地鳴りのような異様な音と共に平たい顔の女の子たちが後ろから雪崩のようにステージめがけて突進してくる。観客に向ってガードしている警備員君(おそらくバイト)たちもろとも、将棋倒しになっていく。生まれて初めて、腹の底から「助けてえええええええっ!!!!」と絶叫した。何人も自分の上に重なって息もできないのに、自分の下にまだ何人もの顔が見える。編み上げブーツの紐もほどけ、死ぬかと思ったが、警備員さんが手を差し伸べてくれ、グイッと引き上げてくれ九死に一生を得た。その間、バンドは何事もなかったように、キレキレッのライブを繰り広げていた。慣れてんだろうね、こんな修羅場。

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Queen.私の人生に多大な影響を与えたバンドだ。それまで「安全圏」内のアイドル歌手などは沢山いたが、ステージめがけて家畜の群れのように女子が殺到する口火をきったのは、Queenが初めてだろう。この現象は次々と他のバンドでも現れ、ついには死者もでるコンサートもあった。しかし、当時QueenにInspireされた人は多く、全国にファンクラブ、漫画研究会(漫研)がうじゃうじゃ誕生し始めた。Queenのメンバーを主人公にして漫画を描くのは厳しい編集の検閲があるにしても、どこかで自分の中に芽生えた情熱を漫画に現したい。メンバーの名前をもじった酔狂なペンネームをつけた漫画家も沢山登場した。当時ネットもないので情報源は音楽雑誌しかなかった。銀座の洋書店にドキドキしながら欧米の音楽雑誌を買いにいったり、その値段の高さにタメイキついたり...

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Bohemian Rhapsodyは誰もが知っているQueen,それもフレディの人生に焦点を合わせつつ、語りたくないザンジバル移民という自出へのコンプレックス、エキゾチックすぎるルックスに「歯」。成功、ゲイへの目覚め、バンド間の衝突、取り巻き、メディアの嫌らしさ、AIDS、伝説のLIVE AIDへと、ブライアンとロジャーの音楽監修のもと、見事な構成で見ぬものを圧倒し、同じ時代に生きていた自分にもあった様々な変化の過程を思い出させ、「あの時の自分」を反芻しながら必ず聞いたことのあるメロディに涙した。
私は本国でもパッとしなかったというファーストとセカンドが大好きでイメージ的にはそこで止まっている。どんどんメジャーになり、スタジアム級のバンドになり、知らないゲイのおじさんになっていくフレディには興味がなかった。しかし、長年検索さえしなかったQueen関係のサイトを映画鑑賞後見てみると、あるわ、あるわ、貴重な映像が。

 

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この映画でメンバーを演じた俳優さん達が、振付師ではなく、「ムーヴメント・コーチ」について、「憑依レベル」まで動きを再現しつつ、しっかり演技しているのが凄い!ずっとフレディを若い時から支えてきた、本来なら「妻」であったメアリーの誠実さも一貫して描かれている。私も10代、20代だった。誰もがQueenと言えば...と何かしら思い出があるだろう。様々な楽しみ方があると思う。私が一番強く感じたのは、フレディの「孤独」。そして、突出した才能は「命」と引き換えだということ...11月24日がご命日。
絶対誰とも観に行きたくない、私にとっては非常にパーソナルな傑作でした。(劇場で3回見ました)

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フレディ・マーキュリー。ハン1、10代の作品

ありがとう。フレディ!Someone still loves you....