「生存確認」
昨日の昼休み、何の気なしにネットニュースを見ていたら小さく「英中西部、60年振りの大洪水」と出ていた。市街地はほぼ水没、国道は広域全面封鎖、スーパーの駐車場に長蛇の列で飲み水を受け取る、疲弊した市民の様子が生々しい。最も被害の大きかったのは35万人が現在も断水中のグロスターシャーだが、隣州で、ソースで有名なウスターシャーも甚大な被害だ。中西部?どこの話?平たく言えばド田舎だ。
ウスターは、5年ほど文通していたバンドのヴォーカルがその当時住んでいて、かつて国内盤も出た人達がこんなド田舎に住んでいるのかと驚いた、思い出の場所だ。就職前に訪ねた時、住所に番地もないような集落にある築400年の実家に招待され、一緒にバンドをやっている弟やご両親に会ったり、古い教会や山登りに行ったりと結構なもてなしを受けたのも懐しい。急に心配になって、10年以上接触はなかったが、公式HPを頼りに陣中見舞のメールを入れてみたら、2時間もしないうちに返信が来た。メンバー、しかも弟から。
今弟はロンドン在住で、文通相手だった兄もジュネーブにおり、ウスター在住のメンバーも家が高台だった為無事。しかし弟がウスターに持っていた練習小屋*が、
「まず確実に流されたよ。15年ぶりに10月ロンドンでやるライブのリハーサルを、今週末から小屋で始める予定だったのに…」と肩を落としていた。小屋といっても多分、弟が勝手に空き地にほったてたか、適当に転がってた廃屋だろう。まずはメンバー、家族、友人に被害が及ばなかった事を喜びたい。だがふと気になったのは、返信が「現地時間、朝8時前」にあったことだ。ミュージシャンにしては随分朝が早い。
多分、結成25年以上経った今もバンドじゃ食えなくて、堅気の仕事に就きながら日程をやりくりし、今週からリハーサルと言うのも、何とか調整した会社の夏休みだったんだろうか。メールは、出勤前に打ったのかな…洪水も大変だけど、弟よ、お前も自分が選んだ道とはいえ、色々大変だな…都会暮らしは辛くないか?と、今度はこっちが肩を落としてしまった。
一番問題なのは何なのか、ちょっとわからなくなってしまった昼下がりだった。
追記 Oct. 2015
”The Klaxon"の紹介時にも触れましたが、イギリスのミュージシャンは、田舎の小屋を入手し、ライヴのリハーサル場にしている人が多いそうですが、彼らの小屋はウスター近郊の保養地ドロイッチにあり、この付近の洪水による被害が甚大で当時現地のまちBBS(のようなもの)では「ドロイッチが明日にも水没するのでは」と騒がれていました。当然小屋なんか地面に乗っかっているだけですので、地盤が緩めば自然と流されてしまい、お天道様に絶叫しても戻ってこないのです。諸行無常。