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Born into the waves / And Also The Trees

Born Into the Waves
 
通算13枚目にとなる、2016年3月リリースの新譜です。アルバム完成直前に突如イアン・ジェンキンス(B)が脱退した上、華を添えていたキーボードもこの作品では一切参加しておらず、AATTはこの作品後からサイモン(Vo.)とジャスティン(G)・ジョーンズ兄弟とポール・ヒル(Dr)の3人編成+ゲストミュージシャン(ただし今作のベース部分はイアンが脱退前にほぼ収録)というミニマムな体制になりました。結成時のシンプルなバンド構成に戻りましたが、全くロックバンドの音ではなく、かといって長らく続いたヨーロッパ映画の記憶スケッチみたいな、哀愁の手回しオルガン的展開も数歩後に引いており、この作品は彼らにとって新機軸に至った感があります。ヴォーカルが毎度のことながら圧倒的に不安定で、磐石な表現力の流麗なマンドリンギターと共に有機的な揺らぎの波形を描きます。しかも歌唱力の衰えを逆手にとって、聴く者の注意をそらしません。この揺らぎが心の溝にはまると、はずれなくなるのでご用心。過去、アルバムごとに必ずいい曲はありましたが「通しで聴ける」という意味では、ここ20年の作品中、最高だと思います。長年のキャリアで殆ど他アーティストとのコラボレーションを行ってこなかったAATTですが、今作では昨年8月にポルトガルのゴスフェス、フェイドイン2015で共演したニュージーランドの新人、ア・デッド・フォレスト・インデックスのギター/ヴォーカリスト、アダム・シェリーとデュエットしている'Seasons & The Storms'も聴きどころのひとつです。ちなみに作品中の`Naitō-Shinjuku'とは、新宿1丁目から3丁目界隈が宿場町だった時代の古称・内藤新宿を意味しますが、昨年5月の来日時、2日間の公演はいずれも新宿で行われ、5日に満たない滞在中はほぼ新宿から離れる事なく過ごし、スケジュールの合間には新宿御苑や都庁、新宿ゴールデン街を訪れた事から、内藤新宿の中核であった花園神社の夜を彷彿する幽玄なこのインスト曲は、日本のファンには嬉しい一作です。現在、今作をひっさげ欧州ツアー中。全10曲、CDの他に公式サイト限定アナログ盤もあり、配信未定。(英AATT、AATTCD09、輸入盤)
 
*CD購入先:And Also The Trees Official 
 


And Also The Trees - Your Guess

昨年の来日公演でも披露した、アルバム冒頭の曲。確かにメンバーが3人しか映っていません